板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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実践バリュエーション 第10回「知識は金なり」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

パートナーの高村です。

みなさんの人生における最も大きな出費は何ですか?

年齢・嗜好・生活環境によって異なると思いますが、
クルマ、マイホーム、生命保険、子供の教育費などでしょうか。

実は税金も人生において、結構大きな出費になっていると思います。


会社員の方は基本的に会社で源泉徴収・年末調整してくれるので、
納税の意識があまりないかもしれません。
しかし、税金の知識ほど「知識は金なり」を実感できるものはないと
思います。

しっかりと知識を活用すると、税金が還付される場合があります。

生命保険料・損害保険料を支払った方はもちろんのこと、
多額の医療費を支払った方や、住宅ローンで家を購入した方、
災害等により住宅・家財などに損害をうけた方、寄付をした方、
退職金を受け取った方などは国税庁のウェブサイトをチェックしたほうが
良いと思います。

税金の支払いが実際より少ないと、税務署から連絡がきます。
しかし、税金の支払いが実際より多かったとしても、税務署から連絡が
来ることはありません。(笑)


やはり納税も自己責任です。しっかり税金を学習して、払いすぎた税金を
取り戻しましょう!

ところで、税金の「フジサン」をご存知でしょうか?

税金のフジサンとは、
フ ・・・・ 不動産所得
ジ ・・・・ 事業所得、譲渡所得
サン ・・・ 山林所得
で、これらの所得は、損益通算ができるのです。

損益通算とは、フジサンの所得で赤字が出た場合、他の黒字の所得と
通算することにより、その分税金を減らすことができます。
企業価値評価で出てくるタックスシールドに似ていますね。


今回は、この損益通算を利用した投資を紹介したいと思います。

私は商品先物のセールスマンに、つきまとわれた経験があり(笑)、
基本的にセールスの電話には、対応しません。
しかし、たまたま会社に電話してきた不動産のセールスマンが、
非常に知識が豊富で、損益通算を利用した不動産投資を紹介したい
ということだったので、好奇心旺盛な私は(笑)、若干警戒心を
抱きながらも、会ってみることにしました。

紹介された商品は、
ワンルームマンション 表面利回り4.5%
フルローン 35年変動金利 3.75%
です。

普通なら見た瞬間に一蹴しそうな物件ですが、損益通算のスキームを
勉強することにしました。

受け取る家賃から、ローンの支払金利、減価償却費、雑費などの経費
を差し引くと、当初10年程度は不動産所得が赤字になります。
それを給与所得と損益通算することにより、給与所得にかかる税金を
安くするというスキームです。

株主(私の月々の持出し・出資)だけではなく、顧客(賃借人からの
家賃)と国(税金の還付)と債権者(銀行からのローン借入金)を
フル活用して、資産形成しようというコンセプトです。

損益通算のスキーム、資産形成のコンセプトは面白いと思ったので、
月々の収入・費用、損益通算の節税効果などを全て考慮して、
評価モデルを作成しました。また借入金利や家賃の変動、空室リスク
などのシナリオを20個近く用意して感応度分析も行いました。

さすが、マンション2部屋で数千万円(ほとんど他人のお金ですが)の
投資案件となると気合いが入ります。(笑)

結局、WACC(調達金利)と比較して、ROIC(運用利回り)が低く
(=物件価格が高く)、損益通算による節税効果を考慮しても、
収益率が非常に悪い結果となりました。
また損益通算のインパクトは想像していたほどではありませんでした。

不動産投資は、節税を目的とするべきではなく、あくまで
投資案件としての収益性を評価する必要がありますね。
空室や金利上昇などで費用負担が増え、赤字になったときの
バッファとして損益通算を使うべきだという結論になりました。

不動産投資に限らず、企業や個人においても、経費や節税になるからと
いって、お金を使うのではなく、無駄なく有効に使いたいものですね。


本エッセイは、高村ひいては板倉雄一郎事務所による売買の推奨
ではありません。投資は自己責任でよろしくお願いします!!


参考エッセイ:Deep KISS第25号「所有と賃貸(収益不動産)」


2007年3月15日  Takamura
ご意見ご感想、お待ちしています。

次回パートナーエッセイは、3月17日(土)に、Ohashi氏が
担当します。

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