板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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実践バリュエーション 第7回「Give and Given」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

パートナーの高村です。
前回お正月のエッセイを書いたと思ったら、もう2月です。
時間が経つのはあっという間ですね。
貴重な人生の時間ですから、大事に使いたいものですね。
参考エッセイ:KISS第60号「人生資源」


今回は、このウェブサイトでも良く使われている言葉「Give and Given」を
ビジネスモデルにした会社をご紹介したいと思います。

昨年末にヤフーニュースを見ていたら、無線LANの新しいサービスが
日本でも立ち上がると紹介されていました。
その後、日経新聞でも何度か取り上げられていたので、
ご存知の方も多いと思います。

スペインで創業された無料公衆無線LAN会社、FON(フォン)です。
会員になって専用の無線LANルーターを購入し、自分が契約している
プロバイダーを利用して、無線LANを開放すれば(=Give)、同様に
世界中の会員から無線LANを解放されて(=Given)
インターネットに無料で接続できるというコンセプトです。


フォンの会員種別には3種類あります。
1.自分の無線LANを開放し、世界の無線LAN網を使う会員
2.自分の無線LANを開放しないが、1日3ドル支払って
他人の無線LAN網を使う会員
3. 自分の無線LANを開放し、他人が使った自分の無線LANの
使用料金の50%をもらえる会員(他人の無線LAN網は使えず。)

日本では、現在のところ会員種別1しかないようです。


この会社を企業価値評価の観点から見てみましょう。
非上場会社ということもあり、財務諸表などは公表されていません。

日本法人の社長のインタビュー記事によると、収益の源泉は、
専用ルーターの売上、将来的には、無線LANの使用料、アフィリエイト、
広告等だそうです。

この収益構造を見ると、会員数の増加がポイントになりそうですね。

無線LANというシステムインフラ会社でありながら、会員が契約している
プロバイダーを利用した無線LAN網を使用するため、自前で大規模な
設備投資をする必要がないのが面白いですね。


よって、会員数が臨界点 (クリティカルマス)を超えると、マーケティング
費用などのコストが抑えられ、安定した収益を上げることができそうです。

クリティカルマスに達するまで、様々な困難があると思います。例えば、
会員のプロバイダー契約における2次利用の問題や、アクセスポイントが
一部地域に偏ってしまうことなどが考えられます。


日経によると、現在の会員数は世界で20万人、
2010年には、100万人の加入を目指しているとのこと。
今後が楽しみですね。

フォンは非上場会社ですが、既に、グーグル、スカイプ、イーベイ等が、
このコンセプトに共感し、出資(約25億円)しているそうです。

Give and Givenのコンセプトに共感し、私も早速申し込んでみました。

専用のルーターをセットアップすると、セキュリティーのかかった
アクセスポイントと、セキュリティーのかかっていないアクセスポイントの
2つが見えます。

セキュリティーのかかっていないアクセスポイントにアクセスすると、
グーグルの検索機能は使用できるのですが、検索された個別のページを
クリックするとフォンの画面となり、会員番号などの入力が必要になり、
会員しか使えない設定となっています。

セキュリティーのかかったアクセスポイントを使うと、各自が設定した
パスワードを入力するだけで、問題なくインターネットが使えます。

外に出て、インターネットをする機会が少なく、他人の無線LAN網を
使ったことはまだありませんが、少なくとも家の中の無線LAN環境は
大いに活用できています。

今までは、有線LANのため固定された場所でしか使えませんでしたが、
無線LANとなり、どこでも使えて快適になりました。

また、うちには、予備含めて2台のノートパソコンがあります。
以前は、夫婦で有線のインターネットケーブルを取り合っていた、いや、
お互い譲り合っていた(笑)のに、いまでは2人同時に快適に
インターネットに接続できるようになりました。

まだまだ発展途上のサービスですので、今後、色々な問題・不具合等
あるかもしれません。そのリスクが取れる人であれば、試してみるのも
面白いかもしれません。(自己責任でお願いします。)

ちなみにフォンに関する費用は、専用ルーター(1,980円)と
送料(千円弱)のみで、月々の費用はかかりません。
(ただし、どこかのプロバイダーとの契約が必要です。)


2007年2月1日  Takamura
ご意見ご感想、お待ちしています。

次回パートナーエッセイは、2月3日(土)に、Ohashi氏が
担当します。

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