板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ファイナンス基礎理論 第11回「割引率ってなに?」

皆さんこんにちは、パートナーの石野雄一です。

3回にわたって、番外編が続きました。
今回から、基礎理論にもどりたいと思います。

まずは、こちらのエッセイを再読してください。

ファイナンス基礎理論 第7回「現在価値とは」

現在価値を将来の価値に換算するときに、
使う金利(=利率)は、収益率(=利回り)といいました。
一方、将来価値を現在価値に換算するときに使う利率を、
割引率(=ディスカウントレート)といいました。

今のお金が将来いくらになるかを計算するときは、
収益率といって、
反対に将来のお金をいまのお金(=現在価値)にするときは、
割引率という呼び方に変わるわけです。

現時点からすれば、
将来の価値(=キャッシュフロー)は不確実です。
この不確実の度合いを割引率に反映させることになります。

つまり、
将来の価値(=キャッシュフロー)が、
不確実であればあるほど、割引率は高くなり、
将来の価値が確実であればあるほど、
割引率は低くなるのです。

言い換えれば、
割引率は、
投資対象に対するあなたの「リスク認識」を
表しているともいえます。
ちょっと、難しいかも知れません。
こんなときは、具体的に考えてみましょう。

たとえば、
あなたの親友からこんな依頼が、
あったとします。

「1年後に110万円返すから、100万円を貸して欲しい」

親友の申し出を快諾したとしましょう。
あなたは、
この友人に100万円を年率10%で貸してあげること
になります。
このとき、あなたの期待収益率は、10%と表現します。
このときの割引率は、いくらになるでしょうか。
そうです。10%です。
1年後の110万円の現在価値は、割引率10%をつかって、
次のように計算できます。

それでは、
単なる知り合いから同じ申し出があったとしたら、
どうでしょう。
あなたは、断るはずです。

なぜなら、
1年後に110万円返済してもらえるかどうか、
わからないからです。

それでは、「1年後に150万円返済します。」といわれたら、
どうでしょう。
それでも、イヤだという人も多いとは思いますが、
あなたは、渋々ながらも申し出を受けたとしましょう。

そのとき、あなたにとって、
今の100万円と一年後の150万円が、
経済的に同じ価値だということです。

あなたは、100万円を貸すことにリスクを感じ、
年率50%の収益率を期待(=要求)したわけです。
単なる知り合いに100万円を貸すのは、
リスクがあるから、最低限50%の収益率は欲しいと
考えたわけです。

期待収益率と割引率は表裏一体ですから、
このときの割引率は、50%といえます。

あたりまえですが、
1年後の150万円を50%で割り引きすると
100万円になります。

いままでの議論をまとめてみましょう。

ポイントは、同じ100万円貸すのであっても、
信頼できる友人の場合は、10%の収益率を期待(=要求)し、
単なる知り合いの場合は、
50%の収益率を期待しているということです。

実は、
ここにファイナンスの重要な原則
「ハイリスク・ハイリターン」があるわけです。

リスクが高いものに投資する(=貸す)からには、
高いリターンを期待(=要求)するということです。

これって、あたりまえのことですよね。

いずれにしても、割引率は、
あなたの投資対象に対するリスク認識によって、
決定されるということです。
したがって、正解はありません。

実務では、
割引率をレンジ(=範囲)でとらえ、
その変化によって、
どのように現在価値が変化するかをみる、
つまり、感度分析を行なったりするのです。

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

2007年3月20日 石野 雄一
ご意見ご感想、お待ちしています。
次回パートナーエッセイは、3月22日(木)に、Yoshihara氏が担当します。