板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ファイナンス基礎理論 第2回「会計とファイナンスの違い」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

皆さんこんにちは、パートナーの石野雄一です。

前回は、「ファイナンスとは何か」について、お話しました。
今回は、会計とファイナンスとの違いについて、
考えてみたいと思います。

一番の違いは、会計は「利益」を扱い、
ファイナンスは「キャッシュフロー」を扱うということです。

簡単に言えば、
「利益」は、売上から費用を引いたものです。

売上や費用は、実際のお金の入り払いにかかわらず、
商品を販売した時点、商品を仕入れた時点で、
会計上認識されます。

実は、このことが、
会計上の「利益」とキャッシュの残高が
違う原因となっています。

黒字倒産という言葉は、聞いたことがあるでしょう。
利益は出ているのに、
キャッシュがなくて倒産するという、笑うに笑えないことです。

売上をあげても、お金を回収しなければ、
資金繰りに困るのはあたりまえです。

一方、キャッシュフローは、会計上の利益とは異なり、
実際にキャッシュが入金されたり、
支払いが行なわれた時点で認識されることになります。
実際に、預金のキャッシュ残高に反映されるわけです。

さらに、「利益」は会計基準や経営者の判断によって、
ある程度調整することができます。

一方で、キャッシュの残高は調整ができません。
どこの国の会計基準だろうが、
経営者がどう考えようがキャッシュの残高は変わりません。
「キャッシュは嘘つかない」と言われる所以です。

第二に、会計とファイナンスとでは、「時間軸」が違います。
会計が扱うのは、あくまでも企業の「過去」の業績です。
バランスシートや損益計算書、キャッシュフロー計算書の数字は、
あくまでもの過去の数字です。

一方で、ファイナンスは「未来」の数字を扱います。
将来、企業がうみだすキャッシュフローがどうなるか、
ということが大切です。
ファイナンスが近年、
重要だと考えられるようになったことには、理由があります。
実は、経営者自身が、
常に「現在」と「未来」の二つの時間を考える必要があるからです。

言いかえれば、経営者は、
常に「現在の投資」と「未来のリターン」の
バランスをとる必要があります。

投資なくして、将来のリターンがないのはあたりまえです。
そうかと言って、
企業の将来のためだと言って、
過大な設備投資をすることは避けなくてはなりません。

一方で、目先のキャッシュフローの増加を重視して、
将来の企業の存続を犠牲にしてもいけません。
このように、経営者は、現在と未来のバランスをとること
が必要になるわけです。

「利益」を扱うか、「キャッシュフロー」を扱うか、
そして、「時間軸」が「過去」を向いているか、
「未来」を向いているか、
これが、会計とファイナンスの大きな違いと言えるでしょう。

2006年10月31日 石野 雄一
ご意見ご感想、お待ちしています。

次回パートナーエッセイは、11月2日(木)に、Yoshihara氏が担当します。