(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)
皆さんこんにちは、パートナーの石野雄一です。
今回は、名目金利と実質金利について、お話します。
名目金利は、簡単にいえば、
日頃私たちが使っている金利のことをいいます。
「銀行の定期預金金利が5%だ」なんて言う時の金利が、名目金利です。
まあ、見かけの金利と言ってもいいかも知れません。
一方、実質金利とは、
物価の上昇率(インフレ率)を加味した金利です。
実質金利の概算は、
名目金利からインフレ率を差し引けば計算できます。
例えば、今の銀行の定期預金金利が5%のとき、
インフレ率が2%なら、
定期預金の実質金利は5%-2%=3%というわけです。
反対に、デフレの状況であれば、
実質金利は高くなります。
たとえば、
仮に今の日本の物価上昇率を▲2%としましょう。
どんどんモノが安くなっている状況です。
こんな状況では、
さきほどの定期預金の実質金利は、
5%-(-2%)=7%となるわけです。
このように、時には、
名目上の金利ではなく、
実質金利ベースで考えてみる姿勢が大切です。
ついでに、
実質金利と名目金利の正確な関係式も
覚えておきましょう。
この式をみて、やばいと思ったのは、
あなただけではありません(笑)
確かに、さっきの関係式の方が、
私たちの直感にうったえるものがあります。
でも、正確さが重視する(?)私たちは、
こちらの方を使いましょう。
実は、名目と実質があるのは、金利だけではありません。
キャッシュフローにも、名目と実質があるんです。
ちょっと難しそうですが、
今回のメッセージはいたって単純です。
結論から先に言ってしまいましょう。
実質キャッシュフローは、
実質ベース割引率(=金利)で割り引き、
名目キャッシュフローは、
名目ベース割引率(=金利)で割り引くこと。
それでは、実質キャッシュフローとは、
何かについてお話します。
今だったら、100万円出せば、1万円の指輪を
100個購入することができます。
ただし、
あなたが100万円のキャッシュを受け取るのが、
1年後だとします。
1年後に100万円受け取ったあなたは、
指輪を100個購入することができるでしょうか?
それは1年後の指輪の値段次第ですよね。
物価が年率3%上昇すると、
10,000円だった指輪は10,300円になっているはずです。
その結果、
指輪は97個(100万円/10,300円)しか購入できないわけです。
物価が3%上昇することによって、
現在購入できる数量よりも、
3%少ない97個の指輪しか購入できなくなりました。
物価が上昇することによってお金の価値が下がったからです。
あなたが1年後に受け取る100万円は名目上、
100万円のキャッシュフローでも、
今の価値で考えれば、97万円にしかならないわけです。
このとき、97万円を実質キャッシュフローといいます。
『インフレでお金が紙くずになってしまった』
というフレーズを聞いたことがあるでしょう。
このように物価が上昇すれば、
お金の価値って自然に下がってしまうのです。
t年後における名目キャッシュフローを
実質キャッシュフローに直す一般式は
となります。
上の例では、
1年後の名目キャッシュフロー100万円を
実質キャッシュフローに直すわけですから、
インフレ率3%だとすれば、
97(小数点以下切捨)=100/(1.03)^1となるわけです。
ちょっと、難しいですねぇ。
でも、この式は覚える必要はありません。
大切なことは、あくまでも、
実質キャッシュフローは、
実質ベース割引率(=金利)で割り引き、
名目キャッシュフローは、
名目ベース割引率(=金利)で割り引くことです。
それでは、最後に、
「WACCはインフレ調整する必要があるか?」
について、考えてみましょう。
結論から言えば、
「インフレ調整の必要はない」と言えます。
通常、私たちが、
将来のキャッシュフローを予測するときは名目ベースです。
5年後のキャッシュフローを50百万円と予測するときに、
その50百万円で何を買うことができるのか、
という購買力まで考慮していません。
買えるものが現在と同じなのか、
違うのかを考えていないとすれば、
あなたが、予測しているキャッシュフローは、
名目ベースであるということです。
したがって、
そのキャッシュフローを割り引くWACCも、
名目ベースである必要があります。
ところが、WACC そのものは、
通常の場合、名目ベースです。
なぜなら、WACCを計算する過程で使用する金利はすべて、
名目金利だからです。
すなわち、WACCは調整する必要はないのです。
もちろん、
キャッシュフローを実質ベースで予測する場合は、
WACCを次の式で実質ベースに変更する必要があります。
しかし、そんな面倒なことをやる人もいないでしょう。
今回のメッセージは、あくまでも、
実質キャッシュフローは、
実質ベース割引率(=金利)で割り引き、
名目キャッシュフローは、
名目ベース割引率(=金利)で割り引くことです。
この整合性をとることが大事なのです。
通常は、
キャッシュフローを名目ベースで予測していることから、
割引率も名目ベース考えてしまって構わないということです。
2006年12月26日 石野 雄一
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次回パートナーエッセイは、12月28日(木)に、Yoshihara氏が担当します。