板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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ファイナンス基礎理論 第4回「キャッシュフロー計算書とは」

(毎週火・木・土曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

皆さんこんにちは、パートナーの石野雄一です。

前回は、「貸借対照表と損益計算書」について、
お話しました。

今回は、キャッシュフロー計算書について、
お話したいと思います。

キャッシュフローとは、日本語でいえば、「現金収支」です。
すなわち、現金の収入と支出のことをいいます。

そして、キャッシュフロー計算書とは、
企業活動のお金の流れをあらわしたものです。
つまり、お金をどれだけ、稼ぎだしたか、
どれだけ投資したか、お金が足りなければ、
いくら調達したのかがわかるようになっています。

貸借対照表が、
ある時点(決算時点)のスナップショットであるのに対して、
このキャッシュフロー計算書は、
会計期間中のお金の流れをすべて映しだしている
ビデオカメラのような役割ともいえるかもしれません。

このキャッシュフロー計算書が、
重要だといわれるようになったのは、
各国の会計ルールや企業の会計処理の方法によって、
変わってしまう会計上の利益と異なり、
キャッシュの残高を変えることは、難しいからです。
このことが、
よく「キャッシュはウソつかない」といわれたりする所以です。

キャッシュフロー計算書は次の3つに分けられています。

① 営業活動に関するキャッシュフロー
② 投資活動に関するキャッシュフロー
③ 財務活動に関するキャッシュフロー

それぞれのキャッシュフローについて、
詳しく見ていきましょう。

営業活動に関するキャッシュフロー(営業CF)

企業がどれだけキャッシュを生み出す能力があるか、
をみることができます。
この「営業活動に関するキャッシュフロー」がプラスであれば、
本業が儲かっているといえます。
反対に、このキャッシュフローがマイナスの場合は、
注意が必要です。
本業が儲かっておらず、
経営上の問題を抱えている恐れがあるからです。
実際に、増収増益(=売上増加、利益増加)の会社でも、
この「営業活動に関するキャッシュフロー」が、
マイナスの上場企業はあります。
ただし、企業のスタートアップ時や、
企業の事業リスクが大きい事業であれば、
一時的にマイナスになることもあり得ます。

投資活動に関するキャッシュフロー(投資CF)

このキャッシュフローからは、
企業が「何に投資しているか」、
「いくら投資しているか」を見ることができます。
事業活動においては、
いくら稼ぐと同様にどう使うかも重要です。
なぜなら、現在の投資がなければ、
将来のリターンはありえないからです。

「営業活動に関するキャッシュフロー」の中にある
「減価償却費」と「設備投資額」を比較してみましょう。
同程度あれば、
企業は機械設備の維持程度しか、
設備投資をしていないといえます。
一方で、「減価償却費<設備投資額」の場合は、
設備投資に積極的であることがうかがえます。
同業他社と比較して、
設備投資の割合や額が大きい場合は、
競争力を高めるためのなんからの戦略があることが想像できます。
創業したばかりの新興企業などは、
この「投資活動に関するキャッシュフロー」が、
「営業活動に関するキャッシュフロー」を
上回っていることもあり得ますが、
そうでない場合は、過剰な設備投資かどうかを
チェックする必要があるでしょう。

財務活動に関するキャッシュフロ(財務CF)

この「財務活動に関するキャッシュフロー」をみることによって、
キャッシュの過不足の状況や資金の調達方法、
財務政策をおおまかに把握することができます。
まずは、財務活動によるキャッシュフローがプラスか、
マイナスかが重要です。

プラスの場合は、必要な資金が不足したことから、
新たに調達したことを表しています。
反対にマイナスの場合は、
営業活動に十分なキャッシュを稼ぎ出しており、
さらに、配当や自社株買いなどによる株主への還元や、
有利子負債の返済が行われたことがわかります。
また、資金調達の方法が銀行からの借り入れなのか、
社債発行なのか、それとも株式発行なのかを見ることもできます。

営業、投資、財務それぞれに関するキャッシュフローの
一般的な考え方を説明してきました。
最後に、企業の事業サイクルとキャッシュフローとの関係について、
考えてみたいと思います。

一般的に、
企業は、導入期、成長期、成熟期、衰退期という事業サイクル
たどることになります。
それぞれの時期のキャッシュフローの動きには特徴があります。

ishino1128.gif

企業のスタートアップ時(=導入期)には、
投資が先行しますから、投資CFはマイナスです。
一方で、営業CFもマイナスであることが多いわけです。

言ってみれば、将来の営業CFの増大のために投資するわけですから、あたりまえです。

そのマイナス分を補うだけの資金調達が必要ですから、財務CFは反対にプラスになるわけです。このように、企業の事業サイクルとキャッシュフローの関係をとらえるのが大切です。企業がどのステージにいるかで、キャッシュパターンが異なるわけです。

このキャッシュパターンをみれば、
導入期から成長期にある企業が、
配当を行うというのは、
およそ合理的ではないことがわかるはずです。
そのわけについては、ご自分で考えてみてください。

2006年11月28日 石野 雄一
ご意見ご感想、お待ちしています。

次回パートナーエッセイは、11月30日(木)に、Yoshihara氏が担当します。

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   皆様の参加を心よりお待ちしております。