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企業と法律 第15回「2008年の展望」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

みなさん、あけましておめでとうございます。
板倉雄一郎事務所パートナーのMoriです。

今回のテーマは、「2008年の展望」です。

みなさん、新年いかがお過ごしでしょうか。

当事務所は新年からサーバーダウン等で大変でしたが、株式市場はそれ以上に大荒れであり、特にサブプライムローン関連の話題は、毎日のように新聞をにぎわせています。

2008年の展望というテーマでお話しようと思います。法律関連では、2007年から引続きのテーマとして、「コンプライアンス」と「M&A」が中心になるかと思います。

「コンプライアンス」関連で言えば、早速、日本製紙の古紙パルプ配合率偽装問題が浮上しました。郵便はがきについては1992年の暑中見舞い用から不正を続けていたということであり、人々のリサイクル等の環境保護に対する気持ちを一瞬にして失わせる酷いものであります。

食品の場合は、食中毒等を防ぐという目的が達成されれば、偽装した点に非難があるとしても、実際の被害がなくてよかった(未然に防げた)ということがいえるかもしれませんが、リサイクルに関するものに偽装があっても、そもそも「実際の被害」のためのものではなく、将来の環境や社会のために行うものですから、実際の被害がなくてよかったなんてことはありえないのです。それだけに、この古紙パルプ配合率偽装問題は、新たな問題を提起したように思います。

一方、「M&A」関連では、サッポロホールディングスがスティール・パートナーズによる買収提案について特別委員会に諮問したという敵対的買収関連のニュースも気になるところですが、今回は、サブプライムとM&Aがちょっとずつ絡んでいるシティーグループと日興コーディアルの「三角株式交換」についてみたいと思います。

三角株式交換は三角合併の親戚のようなものです。

【三角合併】
三角合併とは、合併のうち、消滅する会社の株主が、消滅する会社の株式のかわりに合併の対価として、「親会社株式」をもらうタイプの合併です。

「消滅会社の株主が取得するもの」
存続会社の株式等---------→ 合併
金銭のみ-------------→ 交付金合併
存続会社の親会社株式-------→ 三角合併
となります。

【三角株式交換】
三角株式交換とは、株式交換のうち、完全子会社となる会社の株主が、完全子会社となる会社の株式のかわりに株式交換の対価として、「親会社株式」をもらうタイプの合併です。

「完全子会社となる会社の株主が取得するもの」
完全親会社となる会社の株式等---→ 株式交換
金銭のみ-------------→ 交付金株式交換
存続会社の親会社株式-------→ 三角株式交換
となります。

今回のケースは、

米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)
|100%
日本法人シティーグループ・・・三角株式交換・・・日興コーディアル

となります。今回は、三角株式交換ですので、完全子会社となる会社である日興コーディアルは、米国法人シティーグループの株式を取得することになります。

最終形は、

元米国シティーの株主     元日興コーディアルの株主
|○%                |△%
米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)
|100%
日本法人シティーグループ(CJI)
|100%
日興コーディアル

という形ですね。


ところで、15日の新聞で、三角合併の比率が問題となっていました。

Citigroup Inc. (NYSE:C)の株価が下落したことが「三角株式交換に影響するか?!」というお話です。

プレスリリースによると、日興コーディアルの株主は、日興コーディアルの1株あたり、「1700円÷平成20年1月15日から17日までの間におけるCitigroup Inc.1株あたりの平均株価(円換算後)」を計算して出てきた数のCitigroup Incの普通株式を受けとることになっています。そして、Citigroup Inc.1株あたりの平均株価が22.00ドルを下回った場合には、別途の合意をしない限り、株式交換が失効します。

さて、シティーグループの株価、そして、三角株式交換の行方は、どのようになるのでしょうか。


最後に、「もしも今回の日本法人シティーグループ(CJI)と日興のスキームが○○だったら・・・」として、合併と株式交換を整理してみたいと思います。

(1)もしも合併だったら・・・

最終形は、

米国シティー(Citigroup Inc.)    元日興コーディアルの株主
|○%                   |△%
日本法人シティーグループ(CJI)+日興コーディアル

※ 米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)は、日本の子会社を100%支配できなくなってしまいます。

(2)もしも交付金合併だったら・・・

最終形は、

米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)
|100%
日本法人シティーグループ(CJI)+日興コーディアル

※ 元日興コーディアルの株主に現金が入ってきます。逆を言えば、米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)が日興コーディアルの時価総額相当の現金を用意して、元日興コーディアルの株主に交付しなければならないということです。あまり現実的ではありません。

(3)もしも三角合併だったら・・・

元米国シティーの株主   元日興コーディアルの株主
|○%             |△%
米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)
|100%
日本法人シティーグループ(CJI)+日興コーディアル

※日本法人シティーグループ(CJI)は、実は、シティグループ・ジャパン・ホールディングス株式会社という名称であり、持株会社として参加にシティーバンク銀行等ともっており、経済実態のある日興コーディアルと直接合併するのではなく、
シティグループ・ジャパン・ホールディングス株式会社(CJI)
|                         |
シティーバンク銀行        日興コーディアル
という形にしたかったと思われる。

(4)もしも株式交換だったら・・・

Citigroup Inc.   元日興コーディアルの株主
     |○%             |△%
  日本法人シティーグループ(CJI)
         |100%
  日興コーディアル

※ 米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)は、日本の子会社を100%支配できなくなってしまいます。

(5)もしも交付金株式交換だったら・・・

米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)
          |100%
日本法人シティーグループ(CJI)
          |100%
日興コーディアル

※ 交付金合併と同じく、元日興コーディアルの株主に現金が入ってきます。逆を言えば、米国法人シティーグループ(Citigroup Inc.)が日興コーディアルの時価総額相当の現金を用意して、元日興コーディアルの株主に交付しなければならないということです。あまり現実的ではありません。


新年に起きた話題を中心に2008年の展望+三角株式交換という話題でお伝えいたしました。

今年も、さまざまな出来事が起こると思いますが、じっくりと腰をすえて、皆さんとともに取り組んで生きたいと思います。

今年もよろしくお願いします。

(注) 本エッセイは、具体的な案件についてのアドバイスではありませんので、現実の具体的案件については法律や会計の専門家にご相談下さい。


2008年1月17日  M.Mori
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