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企業と法律 第7回「夏休み明けの余談(あまり知られていない弁護士の世界)」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

みなさん、こんにちは。板倉雄一郎事務所パートナーのMoriです。

皆さん、今年の夏は、どのように過ごされましたか。
私は、某Iさんほどいろいろな場所に出かけたわけではありませんが、週末は、「あまり日焼けしない程度に」夏らしいことをしました。

特に、セミナー卒業生の皆さん、板倉さん、パートナーの皆さん、板倉雄一郎事務所業界関係者のみなさん、そしてこれらの方々の大切な人達(友人・恋人・家族等)と共に過ごした一泊二日のキャンプ2007は、楽しいことこの上ありませんでした。

私はバスでの参加組みでしたが、バスの中は、修学旅行やサークルの合宿の雰囲気満載でした。こういう旅行の「行き」のバスは、いつも皆テンションが異様に高いのは何故でしょうか。ちなみに、「帰り」のバスは、遊び疲れて、皆爆睡していることも多いですよね。私は卒業生やパートナーの中では、板倉さんと知り合って日が浅い方ですので、ほとんどの方が私と「初対面」か「見たことはあっても話すのは初めて」でしたが、何故か、ほぼ最初から気心しれた仲間として参加させていただくことができました。

到着してからは、ビール、焼肉BBQ、甕出し紹興酒、カレー作り、水遊び+川へのいざない(私も川の真ん中で完全に「浸かりました」)、西瓜割り、テント設営、花火、カレー、ちょっと真面目な話、風呂、模擬(?)合コン、睡眠、豚汁準備、釣り&焼魚、豚汁・・・と、怒濤のように飲、食、遊、飲、食、遊と過ぎていきました。本当に楽しかったです。私は、普段ほとんど自炊しませんが、影響されやすい性格からか、キャンプ後1週間たった先週末の夕食は、全て自炊しました(しかも、メニューは豚しゃぶとカレー。(笑))。

悔しかったのは、二日目午前中に、皆さんと一緒にキャンプ場内の「釣れる釣堀」に行ったのですが、なかなか釣れなかったことです(「釣れない釣堀」については、こちらを参照)。板倉さんは流石にものの数分で見事にフィッシュしていきました。後から来た達人は、餌もつけずに岩魚のみを必要なだけ釣っていました。釣りについて修行が全く足りていないことを自覚した次第ではありますが、それとは別に、自分も日々自分の能力を研鑽して、誰からも認められる職人になること(自ら「プロ中のプロ」と言わなくても、「資格」を披露しなくても、行動や結果のみで、信頼してもらえて、そのことに自ら誇りをもてるプロフェッショナルになること)が重要だと思った次第であります。

さて、今日は、夏休み明けということもあり、法律の話ではなく、あまり知られていない弁護士の世界について、お伝えしたいと思います。

日々の業務
最近は、裁判のニュースや、企業法務に関するニュースが取り上げられない日は全くないと言っていいほどです。そして、そのほとんどに弁護士が関係しています。

弁護士は、企業との関係だけでも、契約書のチェックに始まり、交渉、債権回収、労使紛争、株主総会対応、登記申請、ファイナンスやM&Aスキームの検討、対象企業のデューディリジェンス(精査)、株主としての権利行使、知的財産権戦略等様々な業務を行っています。

こういった業務では、弁護士は、法律に基づいたアドバイスを行ったり、自ら交渉したりするのですが、いずれもミスがないように入念に準備したり、事前にクライアントと打合せを行ったりします。特に、企業法務では、一つの契約書のミスが何億円という金額の損得に響いてくることがありますので、慎重を要します。

「甲は、乙に対し、対価として、平成○年○月○日までに、金○円を支払う。」という契約書の規定の「甲」と「乙」が逆になると、大変なことです。

それでいて、緊急性を要請されることも少なくありません。つい先日も、体調が悪く、早めに帰宅していると、帰りの電車の中で、事務所から「クライアントの○○さんから、「明日契約書に調印する予定の相手方に○○という事実が発覚し、明日の調印に大きな影響がでそうなので、調査してもらえませんか」という依頼があるのですが、どのように対応しましょうか」という連絡がありました。このような場合、事情によっては事務所に戻ってリサーチし、その時点での回答をクライアントにお伝えすることになります。この日は、人のいない場所を選んで、クライアントに電話し、事務所に戻って対応することになりました。

企業法務以外にも、家事事件(相続、離婚等)、交通事故、債務整理(破産・民事再生等)、保険金請求、建物収去土地明け渡し、土地境界確定、成年後見、建築紛争、犯罪被害者保護等と言い出したら切りがないくらい様々なジャンルの事件があり、日々、様々な弁護士がこれらの事件に取り組んでいます。

専門的知識
「六法全書の条文を全て暗記しているのですか」と聞かれることがあります。これは弁護士がスラスラと暗記しているかのように、「民法○条では、こうなっていて、この件では、このような結論になります」等と回答するので、条文を暗記しているのだと思われるかもしれません。

しかし、弁護士は、条文を「丸暗記」しているわけではありません。司法試験の論文式試験でも「司法試験用六法」の持ち込みは許されていました。弁護士は、法律の条文の意図するところ(「立法趣旨」といいます。)や内容をよく理解し、具体的な事例にあてはめる訓練を受けています。特殊な法律については、条文を見たこともない場合すらありますが、事例に応じて、事前に関係しそうな法律を入念に調べておくので、上のような回答ができるのです。

勿論、民法や刑法等の基本的な条文については、有名な判例を含めて、十分な理解があるので、他の法律についても、理解が早いのです。

ただ、法律の条文も日々変わります。最近では、会社法が大改正されましたし、今月(2007年9月)は、証券取引法が「金融商品取引法」に変わり、内容も改正されます。弁護士は、こういった変化について、日々勉強するしかないのです。

職業倫理
弁護士の特殊性は、守秘義務を始めとする職業倫理にあるといっても過言ではありません。極度にプライベートな事柄を取り扱う一方、社会正義の実現や基本的人権の擁護を求められるという側面を持つため、誤解されることも多いものでもあります。
弁護士にとって、職責の基本は、依頼者の利益を最大限に擁護していくことにあります。

守秘義務は、依頼者の利益を擁護する弁護士の職業倫理のなかでも極めて重要な義務です。守秘義務を守ることによって、「一見すると」社会正義に反する場合があります。あえて具体例を出すならば、依頼者から「実は当社の商品の製造過程には違法な添加物Aを使用している。」という言を得た場合です。確かに、この事実を公表することが社会全体の利益にかなうかもしれません。しかし、弁護士がそのような事実の公表をすることは決して許されません。弁護士の守秘義務は、依頼者との信頼関係の根幹であり、国民の裁判を受ける権利や弁護人選任権の実質的価値を保障するものだからです。

弁護士が違法な手段や不当な目的を有する手段を講じてまで、依頼者の利益を図ってはならないのは当然ですが、弁護士は、時には日常的に考えられる倫理とは一見すると矛盾するような職業倫理を負っているのです。実は、弁護士倫理の問題では簡単に答えの出ない問題も少なくありません。

最近、弁護士の弁護活動を批判するケースが見られますが、(1)弁護人は依頼人の利益を最大限擁護する職業倫理を負っている、(2)そのような職業倫理の範囲内では、社会的正義の実現や基本的人権の擁護を求められている、(3)「常に」真実は100%明らかではない(少なくともメディアの報道は必ずしも真実ではない、裁判では証拠に基づかない事実は事実として認定されない等)といったことを考えると、「そのような批判を弁護士に向けられても、批判された弁護士としては非常に困るのではないか」と思われるケースもないわけではありません。

他にも、弁護士の世界についてお話ししたいことはいろいろとありますが、それは、合宿(東京/大阪)でのお楽しみということで、お許しいただければ幸いです。皆様がご参加されることを心より楽しみにしております。

2007年9月4日  M.Mori
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