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企業と法律 第18回「サッポロHD」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセイにお付き合いください。)

みなさん、こんにちは。板倉雄一郎事務所パートナーのMoriです。

昨日(2月27日)の日経新聞は、興味深い記事があったと思います。

そのうち、米国スタフグレーション(9面)、デカップリング論(5面)、ヤフー株主の取締役会を相手方とする提訴(9面)、ヤマダ電機の財務オペレーション(19面)、太陽電池パネルのベンチャー(17面)については、昨日の板倉さんのエッセイを是非参照してください。

今日は、「英エコノミスト誌が特集記事」(8面)と、「サッポロHDスティールの買収提案許否」(13面)を取り上げたいと思います。

2月23日付の「The Economist」のアジア版の表紙(アジア版以外は、Castro’s legacyが表紙でした)は、「JAPAN」という赤文字に、墨でAとNの間に、小文字のiを書き加えた造語でした。「JAPAiN」、すなわちJapan’s painという意味です。副題は、

Why you should be worried about the world’s second-biggest economy

The world’s second-biggest economy is still in a funk – and politics is the problem

Why Japan keeps failing

How the politicians are to blame for the failure of Japan’s recovery

というものでした。

こういった記事は、外国人投資家の日本に対する見方を占う上で参考になるものではあります。未だに日本は世界第2位の経済大国として認知されていること、今の日本は失敗の産物であると考えられていること、政治に依存する理由で経済も不調であると認識されていること等という点では、示唆に富んでいるともいえます。

さらに、1週間前の2月16日付の「The Economist」では、日本についての記事は、「Heavy hitters  Scandal rocks the national sport」という時津風部屋の事件に関する記事と、「Samurai v shareholders  Japan’s establishment continues to rebuff foreign activist investors」という北畑隆生経済産業事務次官のスピーチの記事になっています。いずれも日本社会の閉鎖性を匂わせるニュアンスになっており、上記のJAPAiNの記事と相俟って、欧米から日本へのイメージの方向性が窺えるような内容となっています。

ここでは、そういった記事の是非や適否をお伝えしたいのではなく、少なくともそういった記事が存在するということを知っていただければ幸いです。現状において、海外の投資家から日本を見た現状を反映している可能性という側面で捕らえていただければ幸いです。


それでは、本題ですが、いよいよサッポロHD vs スティールの対決が佳境にさしかかってきました。

現状をおさらいしてみます。

1.スティールがサッポロHDの大株主になる。
2.スティールがサッポロHDに対し、買収提案
3.スティールとサッポロHDの間で、質問状のやりとり
4.サッポロHDが買収防衛策に基づき、特別委員会への諮問
5.特別委員会がスティールの提案は「企業価値が毀損される恐れが大きい」との意見書及び追加意見書
6.サッポロHDの取締役会がスティールの買収提案に反対 但し、具体的な大規模買付行為は開始されていないため、例外的対応もしくは対抗措置の発動を具体的に予定しているわけではない。

このような時系列で今にいたっています。

今後予測されるシナリオを考えてみたいと思います。

① スティールの買収強行

② スティールとサッポロHDの間での和解

③ スティールの撤退

が今のところ考えられる大まかなシナリオです。さらに細分化すると、

①-1 スティールの買収強行 → 敵対的TOB → 買収防衛策発動 → 法廷闘争

①-2 スティールの買収強行 → 敵対的TOB → ホワイトナイト等(MBO、同業or外資)

①-3 スティールの買収強行 → 敵対的TOB → 企業改革(リストラや切り売りの強行?)

② スティールとサッポロHDの間で、買収についての提案内容を修正し、スティールの提案に合意する → スティール又はスティールから株式を譲りうけた第三者が企業改革

③-1 スティールがサッポロHDの株式をホワイトナイト等に売却

③-2 スティールがあっさりと敗退を認め、市場内で売却する

となるでしょう。

上のような選択を考えると、ホワイトナイトや買いたいという飲料メーカーが現れない限り、法廷闘争にいたる買収防衛策の発動か、リストラor切り売りの強行ということになりそうです。ただ、?の和解の可能性もあるかもしれません。スティールにしてみれば、?-2の市場内での売却は最も避けたい(考えがたい)シナリオでしょう。しかし、避けるとすれば、ホワイトナイト等が出てくるのを待つか、探してこないと、自ら企業改革をして、企業価値の向上に努めなければならないでしょう・・・

今後、サッポロHDとスティールの攻防は法廷闘争になる可能性もあり目が離せないと思います。


2008年2月27日  M.Mori
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