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企業と法律 第21回「弁護士との付き合い方」

(毎週火・木曜日は、パートナーエッセーにお付き合いください。)

みなさん、こんにちは。板倉雄一郎事務所パートナーのMoriです。

東京では、満開だった桜がほとんど散ってしまいました。
染井吉野以外の桜も綺麗な桜が多いですね。
私の職場の近くにある国立劇場には、いくつかの種類の桜が咲いており、普段あまり見ない種類の桜もありますので、とても楽しめます。

今日は、弁護士との付き合い方をお伝えしてみたいと思います。私は、キャリアとしては、まだまだではありますが、その中でも感じたことをお話させていただきたいと思います。

弁護士は、職業柄、実にいろんなタイプの人と会います。

私は、比較的企業経営者と会うことが多いですが、その他にもいろいろなタイプの人に会います。

私は、ある機関で、シード、アーリー段階の中小零細企業の経営者からの電話や面会での法律相談も受けていているのですが、先日、初めての方からのある電話相談で、「私は、凄いビジネスを思いついた。いろんな人が評価してくれている。」という方からの相談を受けました。この方は、「私が今考えているビジネスが進めば、私の会社はグーグルのような凄い成長を遂げる」とか、「友達が始めた会社のうち何社かは、もう上場している」とか、「いろんなベンチャーキャピタルが出資したいと言い出している」とか、「先日、中小企業診断士に相談したところ、『そんなにいろいろなことをやろうとなさっているんですか』と驚かれるくらい、普通の人には思いつかないようなアイディアが山ほどある」とか、そのような話ばかりで、何のビジネスなのか、何が凄いのか、説明が全くないまま、ひたすら「凄いビジネスなんです」と連発されておられました。私のほうも、そんなにも凄いビジネスだという認識をお持ちなのだから、ビジネスの内容を秘密にしたいのかな等と思いながら、お話を聞いていました。

ここまでだけだと、良かったのですが、「そこで、あるスキームについて先生にお願いしたいんだけど、」とある相談を受けました。私がそのスキームを行いたい理由を聞いたところ、「新聞である有名企業がそのスキームにしていると読んだ」「正直に言うと、大金持ちになりたいんですよ。そのためのスキームです」という答えが返ってきました。

私は、実現可能かどうかアドバイスをしつつ、「実行に移すためにお手伝いするとなると、○円くらいのお金がどうしてもかかりますよ」と普通に見積りをお伝えしたところ、びっくりすることに、「いや、そこは先生、最初はこちらもなかなかお金がないので、私の事業を見込んで、先生の利益を抑えてもらえないか」といわれてしまいました。

なんだか、「私が大金持ちになるために、ボランティアで私に尽くしてくれ」といわれているようで、あきれ果てて、何の反論もしませんでした。

このような例は本当に稀ですが、一緒に仕事をしていて、弁護士を使うのが上手だなと思う人と、そうでない人というのは、やはり感じてしまいます。

①勉強熱心な方
②お話しをしていて、周りと気持ちよく仕事ができる方
③プロフェッショナルのプロ意識を理解してくださる方

①勉強熱心な方は、聞くべきポイントもはっきりしていますので、ミーティングの時間も短く、答えの飲み込みも早いです。
勿論、クライアントの理解を助けるのは、プロとして重要な仕事ではあります。ただ、勉強熱心な方とそうでない方では、おのずからお手伝いするための要する時間も異なるのもまた現実ではあります。

②お話しをしていて、周りと気持ちよく仕事ができる方は、予めご持参いただく資料も充実していることが多いですので、仕事がスムーズに進みます。弁護士も人間ですので、やはり人と人とのお付き合いをしていただけると、とても嬉しく思います。また、そういう方のお役に立てると、より嬉しいと思うのも正直なところです。

③どの世界でも同じだと思いますが、プロは、プロとしての仕事を評価されることは嬉しいものです。仕事に対しては、プロ意識をもって取り組んでいます。金銭的評価のみが評価ではありませんが、プロとしての仕事をプロに頼むときに、「無償で」とお願いされると、少なくとも責任をもって仕事に取り組もうとは思えなくなります。

勿論、友人や大切な人から、相談を受けると、親身になって答えようと思いますし、プロとして、プロボノ活動に取り組むことは重要だと思っています。ただ、「無償」や「格安で」仕事をすることを当然のように望まれると、責任をもって答えようという気にはならなくなります。

先ほどの相談者の方は、上の①から③までの全てを欠いていました。その方は、自分の会社が譲渡制限会社であるか否かもご存知ありませんでしたし、相談事項について会社法の本を読んだこともありませんでした。また、電話での相談で、時間制限にかかわらず、延々と一方的に自社のことを話しておられ、また、「先生の方は利益を抑えてくれ」と理由なく、初対面なのに値下げをお願いされてしまいました。なんだか、私がエゴイスティックなように聞こえるかもしれませんが、ミュージシャンでも、プロ野球選手のような、いわゆる「プロ」といわれる職業のみならず、皆様が顧客や取引先と接する場合でも、同じではないでしょうか。

クライアントから敬意をもって接していただいた時は、私自身、プロとして、恥ずかしくないように、きっちりと成果を出そうと思いますし、普段から鍛錬を怠らないようにしようと思います。また、案件が終わったときに、感謝してもらえると、この仕事をやっていて良かったなと思えます。

皆様がもし弁護士に相談に行かれる時は、このことを少し思い出していただけると嬉しいです。


2008年4月10日  M.Mori

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