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「懲りないくん」2001年4月22日号

読者からのご意見をたくさん頂き、
ちょっくら、方針を変更していくのだ。
はじまりはじまり。

4月15日(日曜日)

朝から「懲りないくん」執筆。
後に読者から指摘されることだが、
このところマンネリ化している「懲りないくん」。
「わかってるっつーの」
僕って、結構行動がマンネリ化しやすいかもね。
逆に言うと、まだこのパターンを僕自身が消化できて無い証拠。
得る事(ってなんだかわからないけど)を得てないってことかな。

4月16日(月曜日)

午後、
あまりの天気の良さに、首都高をドライブ。
小松川線~箱崎~銀座~浜崎橋~レインボーブリッジ
~P~深川線~銀座~レインボーブリッジ~台場で降りる。
途中フェラーリ360モデナとランデブー。
しっかし、イタ車はエエ音するんだよね。
自分で運転してるより、外で聞くほうがエエ音。
桜の花びらだって、手に入れたら綺麗じゃなくなる。
女性だって、眺めて、勝手に想像してるほうが、
楽しめる場合が多い。
そんなことわかってるのに、つい「分解」したくなるのは、
他の何かが潜んでいると思うからかな。
必死(うそ)に分解しながら、「こっちをむかないでくれぇ~」って
叫んでる自分も居たりする。

16時、TA嬢改め高世明美女史とプールでデートのため、
いつもの「スパ然」。(本人実名許諾)
彼女、プールでもパーティーでも
ただ居るだけで「オーラ」を感じちゃうのは
僕だけじゃない見たい。
モデルと言う仕事は「見られる仕事」。
「見られる習慣」が、彼女たちを美しくするのだろう。
日本経済バブル期、設楽りさこ女史と並んでJJを飾った彼女。
でもなぜか「性欲」は沸いて来ない。
なんで?
「恐れ多い」なぁ~んて僕が思うわけ無いし。
できすぎなのだろうな。
「完璧さの中に、ずっこけた部分」を見つける「かわいらしさ」を
見つけられないからかな。
とすると、ずっこけが無いわけ無いから、いつか惚れちゃうんだろうか?
僕の恋愛志向(思考?)に「板倉さん、『彼氏失格』!」だって。

19時、第三春美。
「初鰹」、「真子鰈」に春を感じる。
この店、ほんとうまいってば!
西麻布あたりのホーガイな値段じゃないところがまた良いの。

21時、首都高でマニュアルトランスミッションを満喫。
それにしても高世明美女史、鮨でも運転でも
うまい下手が良くわかる女性。
わからない人は男女と問わず、興味なしの僕。
だってさぁ、せっかく自分が積み上げてきたものを
理解してくれないとすれば、
僕のある部分を理解してもらえないのと
一緒でしょ。
「がんばってる」つもりは無いけれど、無駄にはしたくない
というセコサなのこれって?
いや「がんばった成果」ではないから、
つまり、僕自身だから、理解して欲しいのかな。
あまえんぼーだ。へへ。

23時、「社長失格」の編集でお世話になった
日経BP社柳瀬博一氏と西麻布は「イピゼリ」で合流。
3人で楽しくおしゃべり。
「私がモデルになったわけ」なんつう本が出たら
是非読みたい。

彼が居たから、今の僕がある。
「社長失格」は確かに僕が原稿を書いたから、
彼がゴーストライターではないが、
彼の指導がなければ、あそこまで書けなかっただろう。
プライベート(女性、車、生活)を盛り込むように指摘したのも彼。
下手くそ文章に手を加えてくれたのも彼。
一方で自信があるのは、「エピローグ」と「プロローグ」で
締めくくるあたり、およびLA~ラスベガス、フェラーリドライブの
風景描写には自己満足してるの。
あれっ? 「社長失格」はビジネス書だった。

26時、お行儀良く明美女史を自宅に送り、原宿で就寝。

4月17日(火曜日)

13時、
明美女史のアドバイスで、彼女がスーパーバイザーを
勤める船堀は「ノエル・さくら医療美容総合センター」。
センターで明美女史と合流。
この施設、どう見ても病院ではなくエステティックサロン。
家具は「カッシーナ」、内装のテーマは「クリスマス」。
一年中、クリスマス。
オーナーで理事長の桜宗佐氏と軽く挨拶を交わし、
明美女史の「板倉さん見学してみてよ」の言葉に乗せられ、
美人女医、片桐衣理院長の問診を受ける。
明美女史、片桐院長それにピンクのユニフォームの
看護婦さんに囲まれ、男一人で問診。
医療と美容の両局面から薦められた処方は、
「プラセンタ(人のであって、牛のではない)」の注射
それになななぁ~んと、「腸内洗浄」。
経験大好き人間の僕は迷わず(うそ、ちょっと迷った)
腸内洗浄を了解。
まずは、「プラセンタ」の注射。
この皮下注射、とんでもなくイタァ~ッ!
「先生痛い」
「大丈夫、ゆっくり時間をかけてやるからね」
「いっ、イタァ~ッ」
「じゃあもうちょっとゆっくり入れるね」
という会話が妙に刺激的だったりする。
続いて腸内洗浄。
「腸内洗浄室」は、アロマにヒーリングミュージックが流れる、
豪華内装の個室。
まるで、タイの高級ホテルのマッサージルーム。
違うのは「腸内洗浄機」が鎮座するのみ。
紙でできた「男物パンツ」のようなのを、通常と前後逆にはき、
ベッドに寝かせられ、横向きになる。
するとピンクの看護婦さん「失礼しまぁ~す」っと、
僕の肛門にローション。
不思議と恥ずかしさは無い。
きっと「ここは病院」という意識がそうさせるのだろう。
先の院長先生との「会話」が、
「ここは病院なのに」という意識から非常さを感じるのと対極。
次にピンクの看護婦さんが手に持ったのは、
お庭に水を撒くような、さきっちょに金属製の器具の付いた、
透明のホース。
彼女はそれをゆっくり僕の肛門に押し込む。
この「無防備さ」は、20代に初めて行った「性感マッサージ」
と同じかな。
早速最初の「殺菌されたお湯」が僕の体内に注入される。
下腹部があったかくなる~痛みは無い。
しかし、次第に注入量が多くなるにつれ「下痢の痛み」。
「もうがまんできまちぇ~ん」というと、
「もうちょっと我慢しましょう」と他人ごとの看護婦さん。
確かに僕だって人の痛みは100年でも我慢できる。
「ほんとに、もうだめぇ~」と言った次の瞬間、
「ゴロゴロぴぃ~」っと、爽快気分。
透明なガラス管には「ガス」と「宿便」が
「みてくださぁ~い、さようならぁ~」って感じで流れる。
彼女が腸内洗浄機をバキュームモードに切り替えたわけね。
幼児がウンコやオシッコを我慢できるようになるのは、
「溜めてから出す事の快感」を覚えるからだと言う説を、
あるお医者さんから聞いた事がある。
納得。
その後、入れては出すを繰り返すこと1時間。
個室に設置されたフツーのトイレで残りを押し出し終了。

っと、書いたものの、「ほぼ日」編集より
「あのぉ~、それって昔特集しました」ってメール。
てやんでぇい、そんなの知るか!
僕の日記であって「腸内洗浄リポート」じゃないんだい!
載せてくれぇ~。
と思いつつ、僕って「ほぼ日」に限らず、
ニュースも見ないし、読書もしないのね。
積極的に見ないの。
ええと、「見る読むと言う行為を積極的にしないの」
あのだからさ「見ないようにしているの」
ごめんなさい。
影響されやすいから。

「一山超えたぜ」って気分でロビーに戻ると、
医局に案内され、何人かの医師、学者と名刺交換。
嬉しい事に「社長失格」は彼らご存知。

ホルマリンの匂いと、白一辺倒のフツーの
病院から比べる事ができないこの施設。
スタッフの接し方も「接客業」を心得ている。
おまけに料金が安い!
聞くと「良かろう高かろう」を回避するために、
場所(船堀)などに気を使ったということ。
フツーのOLが、フツーに払える金額。
心から満足。
読者にも是非オススメしたい。
が、基本的に「女性専用」なので、殿方はご遠慮ください。
情報は、高世明美女史のWEB
http://www.takase-akemi.com
より。
ちなみに、僕はこの病院と、
何の経済的関係も無いのであしからず。

4月18日(水曜日)

朝、下痢。
でも痛みのある下痢ではなく、気持ちの良い下痢。
数日間、腸の働きが良くなると言われた事を思い出す。
下腹部がすっきり。

14時、来日中のMK氏に会うため、帝国ホテル。
「彼氏失格」の第2号が載った雑誌を数十部頂く。
めんどくせぇ~、「彼氏失格」の第1号「だけ」
この号の最後におまけでつけてやるぅ~。
たいした文章じゃないのに、欲しがる読者が居るから、
どんどん自分が「ほんとたいしたこと無いのよ」っていう
プレッシャーが溜まっちゃうのね。
このままじゃ、何も持ってないのに持ってる振りみたいだからね。

16時、韓国の某ベンチャー企業のコンサルティング。
IT関連ビジネスだが、極めて独創的なアイデア。
日本での独占交渉権を得、早速JV先探しを開始。
このところ、持ち込まれるビジネスメソッドは、
少なくとも僕の目から見て、有望株が多い。

18時、某有名私立大学法学部4年、HH嬢とデートのため、
彼女の学校の正門でピックアップ。
麻布十番はステーキハウス「一位」。
この店、実はハイパーネット倒産時の債権者。
絶対金額は微小だが、経済的に損失を与えた先。
されど、僕はこの店に債務を残したままで通う。
この店の債務を払ってしまうことは可能。
しかし、特定の債権者にその債務を支払うことは、
法律的にも、道義的にもできない。
いつか、40億にもなる、いまや法律的には
返済義務の無い債務を完済するまで、辛抱。
この店のオーナー松原氏、そんな背景がありながら、
僕を暖かく迎えてくれる。
ありがとう~死ぬまで通うぜ。

HH嬢と自宅に戻り、「アイズワイドシャッド」を鑑賞。
HH嬢は現在就職活動中。
彼女21歳でありながら、人の本質を見抜く目を持つ
特殊な存在。
僕は彼女から「女性から見る男性の評価」を得ている。
さらに、就職活動における
「求職者の能力が求人者の能力を上回る悲劇」を知る。
一方で、あっけらかぁ~んと、僕を求めるところが好き。

25時、彼女を自宅に送り、原宿に戻り就寝。

4月19日(木曜日)

17時、スパ。
体重が2Kgも減っていてびっくり。
されど体調に異変無し。
「腸内洗浄」はダイエットに効果絶大。

20時、読売広告社のKO氏セットによる第2回お食事会のため
麻布十番は「グランマレー海華月」。
日本航空国際線キャビンアテンダントのTE嬢に一目惚れ。
しかし、僕自身が人選した男性陣に競合多し。
今後のチェイスが楽しみ。

4月20日(金曜日)

11時、NA社コンサルミーティング。

13時、スパ。

17時、リクルート「ワークス」の取材。
この雑誌、企業の人事担当者向けの非売品。
季節柄、この手の話が多いが、残念ながら、
僕は求職側になった事が無いので、
パーフェクトな意見は言えず。

20時、西麻布「RING」にて牛島氏主催パーティー。
途中、六本木通りで偶然出くわした高世明美女史と共に、
本日オープニングパーティーの「MAGIC」。
再びRINGに戻り、HH嬢にこれまた偶然会う。

23時、HH嬢と原宿にもどり朝まで映画。

4月21日(金曜日)

朝、「ほぼ日」スタッフより、読者感想をまとめて頂く。
あまりにも面白いので、遅刻しそうになるが、
11時、「博報堂ベンチャーインキュベーシンスクール」
で講演のため、横浜市は「オンワード研究所」。
博報堂の社内ベンチャー支援制度。
10名ほどの起業志望者に加え、
松本元博副社長を含む同社幹部。
講演テーマは一番得意の「What‘s Venture」
「リスクとは、取るリスクと、
リスクを回避し続けることによる、
潜在的リスクの増大の二つである」とか
「ベンチャーは会社の前に、事業がある。
よって、経営資源の全てを一つのビジネスメソッドに
集中投下する経営スタイルである」とか
「よって、事業の失敗は会社の倒産と同義である」とか
「シリコンバレーでは、ベンチャー設立から3年後に
生き残っている企業の割合は10%以下なのに、
イクイティーファイナンスベースなので、
投資家も儲かる」とか
「成功する人と、失敗する人の違いは、
人生デザインの具体性に依存する」とか
「実質的債務超過前にGO NGを決定すべきである、
よって、ベンチャーに民事再生法は不適合」とか
あ~あ、コンテンツを書いちゃった。

17時、彼氏とデートというHH嬢と別れ、
大手メーカー受付のHA嬢を渋谷でピックアップ、
食事も取らずに自宅で「タイタニック」を鑑賞。
彼女、性交渉の無い男性に、性交渉を吹聴される悩みもち。
それって、多くの女性の悩みだったりする。
少なくとも僕の周囲では。
セックスがどれほどの勲章だい?

「君のこと大好きだけど、君だけじゃないよ」という僕に
「あなたって、ほんと変なひとぉ~」と
むじゃきに笑う彼女がかわいい。

20時、家族と食事予定のHA嬢を青山まで送る。

21時、
船橋に戻り、「懲りないくん」読者感想文を熟読。

糸井さんの「懲りないくん」へのコメント
(「このページへの、いいでも悪いでも、
読後の感想を送ってください。方向を考えてみたいので。」)
のおかげで、たくさんの感想文。
きゃぁ~うれしぃ~。
さっすが、日本一のプロデューサー糸井重里氏の
呼びかけである。

講演でも僕からのブロードキャストより、
質疑応答時間を増やしてしまう僕にとっては、
意見がポジかネガかの前に、まずは数が多くて嬉しい。
だって、講演時に、質問が無かったら寂しいもん。

まずは、総論。
「糸井重里氏の感性と、ネーミングの鋭さにあらためて驚く」
以上。
編集に首にされるまで、やりますよ。

と言う事で、「おまけ」のコーナー。
ちなみに、著作権は僕のもんだからね。
よろしく。

「彼氏失格」第1号
「ディスクロージャー ミーンズ フェアネス(Disclosure means Fairness)」

Oという娘とつきあっていた時の事である。
彼女と出会ったのは、あるTV番組の出演者として、互いに時間的に隣接した生番組に出演していた事がきっかけ
だった。
彼女の仕事は、雑誌や広告のモデル、TV番組のキャスター、そしてちょい役の女優。
本人は女優として業を伸ばしたいようだった。

最初にデートをしたのは、僕にしては珍しく、出会ってから4ヵ月も後の事。
それまでデートに誘わなかったのは、彼女に魅力を感じなかったわけでも、失敗を恐れて臆病に成っていたからで
もない。
電子メールによる、彼女との接触を、少しだけ長く楽しみたかったからだ。
彼女宛てのたった数行のメールを書くのに数時間を費やす。
彼女からの返信をチェックするために、日に何度もメールボックスを確認する。
美味しいモノを後に残して置くように、他のメールにうずもれる彼女のメールを最後に開封する。
そんな自分を発見し、そんな自分をもう少し楽しみたかったのかもしれない。
二人のメールは、日々の行動や履歴書に書くようなプロファイルではなく、幼少期の印象深い出来事や二人の共
通する趣味である音楽についての内容が多かった。
そんなメールになったのは、彼女が僕の著書「社長失格」を読んで、僕にいくつかの質問をすることがきっかけだっ
たからだ。
30通程のメール交換は、確かに二人の距離を縮めてくれた。

最初にセックスしたのも、これまた僕にしては珍しく、初デートから4ヶ月も後の事だった。
それまでセックスしなかったのは、彼女とのプラトニックラブを楽しみたかったわけでも、口説くのを怖がったからで
もない。
単に、彼女がそれを拒んだからだった。
ホテルに宿泊しても、一泊旅行に出かけても、彼女はそれをひたすら拒んだ。

僕にとって、会社倒産後、初めての恋愛だった。
「結婚」という、この国では文化背景の薄い行為でさえ、彼女が望むなら受け入れようと思った。
何度デートしても、簡単に体を許さない彼女に、男が勝手に作り上げる、多分実在しない理想的な女性像を、僕は
抱いていた。
それは、セックスという行為を、男の気を引き続けるための「切り札」として捕らえるような愚かな姿勢ではなく、男
女間の一つのコミュニケーション手段という認識をもって、セックスをするにふさわしい二人の適切な距離を測って
いるようにも思えた。

そして、半ば強引に迎えた初セックスの時、彼女が体を許さない理由が明らかになった。
その理由は、貞操観念がしっかりしているわけでも、僕に男性としての魅力を感じて居ないわけでも、他に恋愛対
象の男性が居たわけでもなかった。
彼女は一児の母であり、同い年の夫が居る。
そして、それを僕に知られることによって、それまでの関係が壊れるのを恐れていたからだった。

モデルという仕事柄、生活感をひたすら打ち消していたからだろう。
モデルという職業柄、外泊や深夜までのデートも、ロケや打ち合わせと言って、家族に繕うことができたからだろ
う。
彼女を家に送るとき、彼女の指定場所は、彼女が実際に暮すマンションから遠く離れた彼女の実家だったからだろ
う。
はたまた、僕が鈍感だったこともあろう。
彼女の体を見るまで、僕は彼女の事実に気がつかなかった。

事実を知ったとき、僕は、彼女を攻め立てた。
彼女に僕の気持ちの責任を取ってもらいたかったからではない。
慰謝料を請求したかったからでもない。
ましてや、彼女の家族を、彼女に捨ててもらいたかったからでもない。
僕の彼女に向かっていたエネルギーが行き場所を失ったからに過ぎなかった。

彼女は、動揺している僕をあざ笑うかのようにこう言った。
「あなたって子供ね」。
その言葉に、僕は強がるすべも無くこう答えた。
「そうだよ、子供だよ」
僕のこの言葉に、一度は大人ぶった台詞を吐いた彼女も泣き崩れた。
(30分の外出)

二人の関係は、それからも続いた。
セックスの相性のすこぶる良い相手として、温存したかったわけでもない。
簡単に気持ちを切り替えることができたわけでもない。
他に恋愛とセックスの対象が居なかったからでもない。
お互いに引き合う気持ちが、彼女の事実を持ってしても打ち消すことができなかったに過ぎない。

毎週、2泊ほど、東京近郊のホテルで過ごした。
グルメの二人は、いろんな店で食事を楽しんだ。
海外旅行にも何度か出かけた。
タイ、シンガポール、ロサンゼルス、サンフランシスコ。
彼女は僕と会うために、無理をしていた。
そして、僕は、自分の気持ちの何かを押し殺していた。

そんな関係が1年ほど続いた頃、彼女とのメールは700通を超えた。
そして、僕は、彼女との別れを決心した。
他に恋愛対象ができたからではない。
彼女に夫や子供が居るからではない。
彼女の現実を受け入れつづける事から逃げたかったわけでもない。
彼女が僕と会うために、彼女は誰かに嘘つき続けなければならないと悟ったからだった。
彼女の夫に対して、両親に対して、そして彼女の娘に対してまでも。
まるで最初の頃、彼女が僕に嘘を言うことによって、僕との関係を維持していた時のように。

彼女の嘘や積極的な隠し事は、日常的だった。
いつしか彼女は、本当の自分と虚像の自分の区別ができなくなって居るようにも見えた。
そして、彼女が何かに答えるとき、何が真実であるかより、どんな答えがその関係上適切であるかを考えて居るよ
うに見えた。
そんな彼女がかわいそうに思えた。
そして僕自身が、その原因の大きな要素である事がいやになった。

彼女と別れてから、僕は、人との関係をカテゴライズする事を止めた。
彼女が僕に、あらゆる事を話すために、彼女と僕の関係のカテゴライズは邪魔になると悟った。
女性を口説くとき、僕は彼女にとって、何でも話せる関係になりたいと伝えるようになった。
そして、相手に魅力を感じれば感じるほど、ゆるやかな関係を望むようになった。
その魅力的な彼女の彼氏になって、本当の彼女からどんどん遠ざかるより、どんな関係の定義も当てはまらない、
何でも話せる関係を求めるようになった。

人は、人との関係をカテゴライズしたがる。
夫婦、恋人、友達、セックスフレンド、仕事仲間。
それも出会いから割合早い時期に、このカテゴライズをしてしまう。
そして、その関係を基に、自身の気持ちを投入する。
そして、その関係に自身の気持ちが依存をはじめる。
しかしながら、相手を深く知っていくうちに、初期にカテゴライズした関係が最も自然であるとは限らないと気がつ
く。
言い方を変えれば、どの関係が最も自然であるかは、あらゆる関係を試して見なければ、はっきりとしたことは言
えないことに気付く。
さらに言えば、どんな関係も将来に渡り安定しているとは限らない。
多くの場合、初期にカテゴライズした関係を維持するために、人は嘘をつく。
そして、虚像と虚像の関係が益々増える。

本当の自分をディスクローズする。
それは、簡単ではない。
多くの関係が壊れる可能性があるからだ。
では、少なくとも、これから出会う人に対して、そうできないものだろうか?
本当の自分をディスクローズして、その上でできる関係ほどフェアな関係は無いだろうと思う。
そして、そのフェアな関係は、自分と相手を嘘つきの苦しみから救ってくれるのではないか。

板倉 雄一郎
(C)Copyrights2001 Yuichiro ITAKURA





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