板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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「懲りないくん」2002年1月18日号(50)

遅ればせながら、仕事始めで週。

1月11日(金曜日)

11時、当社投資先NA社定例取締役会。
今年度の決算内容がほぼ見える。
「仕込み」時期にもかかわらず利益が出る予定。
が、それ自体は、
プロジェクトの進行が遅れているので、
喜ぶようなことではない。

企業の強さは、足元の利益ではない。
足元の利益は、将来のための活動をやめれば、
自然と出るものだ。
企業の強さは、あらゆる角度から考えて、
市場占有率にある。
たとえば、マイクロソフトが強いのは、
彼らが全世界のPCマーケットの最大シェアを
持っていることによって、
彼らのビジョンが市場に受け入れられ、
結果として利益に結びつく。
それも、継続的にである。

14時、IT関連、現実的なビジネスモデルのSC社。
彼らのプレゼンテーションを受ける。
当社投資先としての可能性大。

16時、これまたIT関連発明家のプレゼンを受ける。
これも、応用次第で金になりそう。

最近IT関連のプレゼンを受ける機会が多い。
理由は簡単、ITバブル崩壊と共に、
内容に関係なく、多くの投資家は、
ITに対する投資を渋っているからだ。

当社のような、
ブティック型小規模ベンチャーキャピタルにとっては、
むしろ都合が良い。
大手VCに断られた優良案件がどんどん回ってくる。

投資は、現時点でのファンダメンタルズが
悪ければ悪いほど、都合が良い。
なぜなら、投資のリターンは、
将来のキャピタルゲインにあるから、
現時点の経済状況が悪ければ悪いほど、
良い条件で投資できるというわけだ。

とはいっても、将来の話だから、
リスクは常に付きまとうが、
それは、僕をはじめとする当社のコンサルによって、
多くのリスクを排除できる。
これぞ、ハンズオンのベンチャーキャピタルね。

21時、このところちょくちょく会ってる、
32歳、OL、ちょっと最近肥えてきてしまった、
NK嬢とデートのため、彼女の自宅付近でピックアップ。

ジャンクフードをたらふく食べたくなる。
ジャンクフードといえば広島。
広島といえば「お好み焼き」。
ということで、下北沢は広島風お好み焼き「おたふく」。

19歳から通い始め、すでに20年近くなるこのお店。
お世辞にも綺麗な店内とはいえないが、
それがまた、広島風なのだ。
キャベツ半分ほどが溶け込んだ「本体」に、
豚肉、にんにく、イカ、しそ、チーズなど、
とにかく「全部入りー(マイナス)海老」、
それに、そばを半分。
最後に、生地状に伸ばした卵ではさんで出来上がり。
「おたふく」ソースで頂くそれは、
特別贅沢な素材を使ったわけでも、
秘伝の調理法があるわけでもないのに、
(つまり、素材のうまみを引き出すから)
とっても、おいしいのです。

もう一つ、この店のポイントは、
冷蔵庫でギンギンに冷やしたジョッキで頂く
生ビール。
暑い夏にはサイコー!
っと言いたいところだが、夏は料理の調味料として、
大将と客のスウェットが入るので、ちょっとねえ。

二人でたらふく食べて、5000円以内だから、
是非お試しあれ。

23時、原宿の自宅へ戻り、映画鑑賞は、
久々の「タイタニック」。
この映画、誰と一緒に見ても、
(内容を誰もが知っているので)
真剣に見る必要がなく、BGVとしてうってつけ。
どの瞬間で画面に気がついても、
「あっ、このシーンね」で話が弾む。

この映画における「おばあさん」の存在が
この映画を好きになった理由。
思えば、僕の会社が倒産して迎えた初めての夏。
「社長失格」という本を書き上げ、
膨大な時間だけが残された僕は、
ある種暇つぶしとして、
当時話題になっていたこの映画を
「船橋ららぽーと」に、
ジャージ、短パン、ちゃりんこ、という
他人を全く無視した格好で見に行ったのだ。
映画鑑賞後、僕は思った。
「あのおばあさんのような老後を迎えたい」と。

で、まずは恋愛がないと始まらない。
そんなこんなで、再び魅力的な女性を!
などと活動しているうちに、
現在のようなことになってしまったわけだ。
「おばあさん」のような老後には程遠い。

「映画鑑賞」後、僕の大好きな宇宙の話。
で、知的生命の存在について語る。
我々以外の知的生命の居る可能性について、
という話は、学者に任せるとして、
知的生命とはなんだ? となる。
人間と他の生命との違いは? と、さらに発展する。
で、映画の好きな僕の答えは、
映画「ライトスタッフ」での会話を取り上げる。

米マーキュリー計画の有人飛行の実験で、
「サル」が使われ、無事に帰還したことを受け、
ある軍人が、マーキュリー計画のパイロットを
馬鹿にする意味を込めて「サルでもできる仕事だ」
と言ったのを、空軍のテストパイロットが
受けて言う。
「サルは、ロケットが爆発するかもしれない
ということを知らない。
パイロットは、それを承知して挑んでいる。
それが同じわけないだろう」と。

人生でも事業でも、
そのリスクを承知して、
それにチャレンジするかどうか?
その判断と行動に影響を及ぼす要素だと思う。
我々日本人は、身近に潜んでいるリスクに対して
鈍感すぎるのではないだろうか?
テロは対岸の火事、
最大の社会的問題は、失業。
そして、個人の最大の関心はダイエットだったりする。
まあ、僕の場合も、行動だけ見たら、
リスクに対して鈍感に見えるかもしれないが。

1月12日(土曜日)~14日(月曜日)成人の日

この期間、船橋の実家にて、
ワンワンサービス以外、トピックなし。

<物思い編>

土日になると、基本的に仕事の予定が無いので、
船橋の実家へ帰る。
表面的には、犬と過ごしたいとか、
もう60を過ぎる両親の様子を見たいということがある。
しかし潜在的には、
自分の自然な居場所を探した結果として、船橋に帰る。

物心ついたころから、
僕は、自分の自然な居場所探しをしてきたと、
半生を振り返って思う。

自分の居場所を作る方法として、
一つには、自分を曲げたり、我慢したりして、
既存の何らかの組織の一員になりきる。
もう一つは、自分の世界を、自分ひとりから広げ、
それを居場所とする。
のどちらかなのだが、
そもそも起業家などというものは、
後者の人間が多いものだ。

思い出す限りでは、パーソナルコンピュータの創世記、
彼らの中心人物はヒッピーだった。
彼らは、仲間を持っていたが、
社会の中で居場所が無かった。
彼らが居場所の確保のために取った方法は、
パーソナルコンピュータというわかりやすい
ツールを利用しながら、
彼らの価値観で、社会を染めることだった。

たとえば、スティーブン・ボズニアックや
スティーブン・ジョブス
(アップルコンピュータの創業者の二人)であったり、
社会の中に十分な居場所を確保するほど、
家庭環境も学力も能力もあったが、
その方法を取らなかった
ウィリアム・H・ゲイツ氏などがそうだ。
もちろん、日本の起業家の友人も、
大まかな分類で言えば、これに当たる。

起業家に限らず、自分の居場所を広げるためには、
経験の機会に恵まれていて、
経験から何かを感じ取る感性が鋭くて、
感じたことを論理的に処理する能力を持っていて、
表現する「力」を持っていることが、
必要なのです。

僕は最近、その活動を積極的にしていないせいか、
自分の居場所がどんどん狭くなる思いがする。

と、しっとりするのだが、
一方で、パーティー、合コン、デートとなると、
体が自然に動いてしまうのですよ。
本来好きだからなのか、それとも、
居場所が無い事を忘れるためなのか。
いやいや、居場所を探すために、
出かけていくのだろう。

以上。

1月15日(火曜日)

12時、ホテル日航東京「スパ然」

16時、先週に引き続き、
またまたベンチャー企業のプレゼンを受ける。
音楽関係なのだが、これまたいけてるビジネスモデル。
正直、僕自身がやりたいと思ったりする。
早速、投資先として社内の審査を進行させる。

18時、連載原稿などの執筆。

20時、新年会と称したお食事会のため、
青山は、昔僕も会員だった「House Of 1999」。
古い3階建ての洋館
(確か、何とか男爵だか公爵だかの家)を
フレンチレストランを中心に改造したこのお店、
B1Fは、ビリヤードテーブルが中央に鎮座したバー。
1Fは、パティオを囲むようにテーブルが並ぶ
フレンチレストラン。
2Fは、それぞれのソファー席が
シースルーのカーテンで仕切られた、ラウンジ。
それに、いくつかの個室。
3Fは、屋根裏個室(カラオケ付)

今日は、GMO社代表取締役の熊谷正寿氏の
セッティングで、2Fの個室。
同社グループ企業の社長など、
お食事会といっても、男4人。

いくつかのビジネス情報交換をしながら、
舌鼓を打つわけだが、
熊谷氏との会食は、なんといっても「ワイン」。
彼は、今日のために、最近仕入れた
アンリ・ジャイア(Henri Jayer)の手になる
「Vosne-Romanee」(1994)を持込。
このワイン、
「手に入るのであれば、値段を聞いてはいけない」
と言われるほど、希少価値と味と風味と色と・・・、
まあ、とにかく逸品なのだ。

合わせる料理で、気に入ったのは、
「煮あわび」のスライスを、
中華ソースのようなとろみと甘みの効いたソースに、
トリュフを贅沢につかった一皿。
トリュフの香りと、あわびの磯の香りの調和だけで、
もう十分なのだが、さらに口の中で、
ピノ・ノアールと混ぜ合わせる。
ビジネスの会話など、どーでもよくなる。
うん、これって「贅沢」とかではなく「快感」。

メインは、定番で、僕の大好きな「子羊」の
いわゆる香草焼き。
合わせるワイン
(今度は、デッシュにワインを合わせる)は、
Robert Mondaviの手になる、
カリフォルニアワインの逸品「Opus One」1996.
おなかいっぱい。

食後、
熊谷氏、それに僕は、
それぞれ持参したハバナ産の葉巻を取り出し、
自慢話とマナーの話。

1時間ほどのスモーキングと会話の跡は、
ご覧の写真の通りでございます。
熊谷氏、金も(かなりの量を)持っているが、
知識とマナーにも口うるさい。
一方僕は、最低限を吸収するが、
それ以上を望まない。
さて、どちらの灰皿が、どちらの仕業でしょう?

23時、たっぷり「快感」を満喫した男4人は、
感動をお土産に、1999を後にする。

1月16日(水曜日)

13時、年末の「スピード違反」の
反則金納付を忘れたおかげで、
池袋は「通告センター」までお金を払いに行く。
ところが、行って見たら、
期限が更新された「振込用紙」を頂くだけ。
「?」これ、つまり、
違反者は、(普通)仕事の時間を割いて、
交通費をかけて、出向く。
そして、「通告センター」の職員は、
事務処理に時間を割き、紙を消費し・・・・
何か意味あるの?
国民の生産性に対して、マイナスでは?
まあ、期限を忘れた自分がいけないし、
元はといえば、違反をした僕が悪いのだけどさ。

14時、ヘアーカットのため、
代官山は「リッツ」。
髪の毛どんどん短いのが好きになる。
10年以内に、ボーズだな。

その後、原稿など。

ということで、今週は、女性関係少なく、
多分来週も、女性関係少ない予定。
ビジネスが面白くなってきちゃったのでした。

<写真の答え>

マナーどおり、綺麗に吸った右側が僕の跡。
エチケットまで燃えんばかりに、
ラッパーもはがれ、ぐちゃぐちゃに詰め込んだ、
これぞ「灰皿」という跡が熊谷氏。

僕は、言動から想像するよりキヨウで、キヨウ貧乏。
熊谷氏は、仕事振りなどから想像するより、
人間らしく、快楽主義。
人は見かけによりません。


板倉 雄一郎
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