板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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「懲りないくん」2001年11月25日号(43)

今週も、先週同様、元気で週。

11月18日(日曜日)

8時、アルコール漬けの脳みそに、
カフェインと水をぶち込み、目を覚ます。
熱めのシャワーと、冷水シャワーをいつものように繰り返す。
今日は、
楽しみにしていた、初めての「ツインリンクもてぎ」で開催の
「BMW Track Day」。

「日経ビジネスウィナー」の「板倉雄一郎診断室」という
企画で知り合った、
サーバーホスティング事業を営む、鎌倉氏と共に出発。
首都高代々木ICから空いた首都高を2台で飛ばし、
常磐自動車道~水戸IC。
常磐自動車道では、同イベント参加車両の数台と平走。

鎌倉氏と初対面の時、
彼は、僕が昔BMW-M5に乗っていた情報を、
「社長失格」の文章から得て、こう話し掛けてきた。
「僕もBMWがすきなんですよ」。
自身満々に言うものだから、
当然高価でスポーツドライビング用のMシリーズだと思ったが、
彼の所有する車は、BMWの中でも最も廉価な318ti。
彼は、それでも、全くひるまずに、続けてこう言った。
「BMWの本当のよさをわかる人って少ないですよね」
彼のこの言葉は、僕をして、
彼を気に入らせるのに十分だった。
その辺のおばさんでも乗ってる318.
されど、スキモンにとっては、むしろ何もついていない、
シンプルなこの車が、BMWのエッセンスそのものだと、
彼は言っているように、僕には聞こえたのだ。
車に限らず、
所有しているモノが、高価だとか、最新のものだとか、
フラッグシップモデルだとか、そういうことで、
そのブランドに対する自身のエンスー度合いを
表現しようとする人が多い。
悪い例では、見た目を飾って、フラッグシップモデルに、
見せようとする者も居る。
しかし、本当にエンスーであり、
そのブランドが好きな自分に自信があれば、
むしろベーシックモデルの良さに敏感なはずだ。
ベーシックモデルでも、
十分にその「味」を楽しめるというわけだ。
彼は、本当にBMWが好きなんだなぁ~っと思う。
彼の姿勢は、とても気持ちがいい。

10時、「ツインリンクもてぎ」のメインパドックに到着。

スタンダードモデル、M-シリーズ、Alpina、
そして、ナンバーなどついていない完全なサーキット仕様
などなど、BMWばかりおよそ100台。
今日のイベントでは、数ある「もてぎ」のサーキットから、
メインの4.8Kmコースを自由に走れるのだ。

サーキット走行をすることを、誰かに話すと、
よくこういう質問を受ける。
「へぇ~、何キロ出るのぉ~」
「サーキット走行=スピード狂」という図式を
持っている人が多いのだろう。
しかし、我々スポーツ走行が好きな人間は、
トップスピードなどには、あまり興味が無い。
第一レーシングカーには、スピードメーターなど付いていないし、
我々が乗用車でサーキットを走る時も、
一般公道を走る時のように、
スピードメーターに気を配ったりはしない。
その時のスピードとは、
スポーツ走行という楽しみの「結果」に過ぎないからだ。
「加速」だけが好きならば、結果としてスピードばかりが出る。
しかし、我々は、「ブレーキング」も「コーナリング」も、
「加速」同様に、好きなのだ。
つまり、「車をコントロールする事」が好きなのだ。
そして、車をコントロールしていることを、
「体感G」、「ステアリングからのキックバックや振動」、
「腰から感じる車の挙動」を通して感じることが、
これまた好きなのだ。

だから、ゼロからスタートして、
再びゼロに戻った時、すべての車を楽しむ行為が満たされる。
(僕が、ベンチャーのゼロからゼロを経験したのは、
この場合と違って、「図らずしも」なのだが)

男女間に置き換えれば、
お食事や会話が、公道での一般走行で、
その行為でお互いに更なる興味が生まれた時のセックスが、
サーキットでのスポーツ走行ということになろう。
なぜなら、サーキット走行でも、セックスでも、
お互いを、それまで以上に深く知ることができ、
多くの発見があるからだ。
ちなみに、公道でのスポーツ走行(=暴走)は、
自分の倫理観にそぐわない行為、
たとえば、人によっては不倫であったり、
友人の恋人との交渉だったりするのだろう。

以上は、スポーツ走行という話なのだが、
それでは、レースはどうなのかというと、
上記に加え、「勝負」という、楽しみが増えるのだ。
と、書いたところで、僕の起業家としての
半生の反省は、スポーツ走行だったのが、
結果に出たのではないかと、思ったりする。
事業は、勝負で無ければならないのだな。

クラスは三つに分かれる。
クラスAは、サーキット初心者のための体験コース。
BMW3シリーズ~Mシリーズまで、
いわゆるド・ノーマルの車たち。
追い越し禁止で、かつペースカーが入る。
先ほどの例えで言えば、指導員付き初H(?)

クラスBは、サーキット走行経験者向けの
スポーツ走行。
これまた先ほどの例えで言えば、
いつも連れそう伴侶と、久々のホテルというところか。

クラスCは、今日のメインイベント「シリンダートロフィー」。
レースではないが、計測器をつけ、
任意の周回のラップタイム計測をする。
このデータは、クリスマスパーティーでの表彰に使われる。
タイヤは、サーキット用「Sタイヤ」もしくは「スリック」。
動力性能~BMWとあって、あまりいじっていない人が多い。
ブレーキ~殆ど、すべてチューン。
重量~まあ、助手席と室内カーペットが
付いている車のほうが少数。
ボディー~室内にロールゲージが無いほうが少数。
といった具合の、かなり行っちゃってる人たち。
うぅ~ん、なんだろう・・・・AVの撮影でしょうか。
いやいや、ドレスから、バッグ、アクセサリーに至るまで、
これでもかぁ~っと、
新車価格の数倍もの大枚つぎ込んだ愛人と、
様々な設備そろう専用ラブホテルプレーってところか。

この方々、一体普段は何をしているのか興味を持って、
数人の方々に職業など聞いてみたが、
ブルジョア組み(歯医者、飲食店経営など)と、
一点豪華組み(平凡なサラリーマン)に大別される模様。
特に後者は、他に金をつぎ込むことも無く、
ひたすら、車と向き合う性格らしい。
休みの日には、チューニングショップに入り浸り、
寝ても覚めても、車が頭を占める生活。
彼らと話をした時の、車に賭ける情熱は、
僕をして「ああ、僕は、なんちゃって車好きなんだなぁ~」っと
思わせるのに十分。

ドラミ(ドライバーズ・ミーティング)では、
さすがに初心者も参加とあって、
「他の人を信用しないで走ってください」という言葉が印象的。
そういえば、数々の失敗を経験して、
歳と共に、経験と共に、人を信用するのに、
多くの時間を必要とするようになった。
残念なことなのか、幸いなのか、まだわからない。
しかし、人を信用するということは、
「裏切られるリスクを買う」という
人生のダイナミズムだと思う。
僕は、人を信用する時に、裏切られた場合のリスクを、
自己の中で解決できるようになったのが幸いだ。
つまり、信用する対価を求めなくなったのだ。

それにしても、サーキットやレースというのは、
人間活動の縮図が、そこにあるように思う。

クラスBにエントリーした、ナンパモノの僕も、
サーキットは久しぶりとあって、
ピットレーンでスタートを待っている時、多少緊張する。
そして、孤独を感じる。
誰とも話しができない。
誰もアドバイスをくれない。
誰も助けてはくれない。
スタートの合図と共に、全車ゆっくりと(レースではないので)、
走り出す。
この瞬間、他のドライバーとの
コミュニケーションがスタートする。
自分は一人だが、同じ境遇の人間が、
同じ環境でそこに居る。
自分が一人ではないことを知る。
人は、周囲に人が居ようが、居なかろうが、
基本的に、孤独な存在だ。
そして、その孤独を開放してくれるのは、
自分と同じような境遇の人が居ることを確認するのみ。
まさに、サーキットは、人生そのものだ。

数十分ほどのスポーツ走行は、
数台の車をパスし、次第にブレーキの限界が見え、
残り1周ぐらいで、僕はピットに戻った。
久々の、伴侶とのホテルでHは、
再び、この伴侶に対して、新たな発見があった。
楽しかった。

17時、鎌倉氏と共に、道に迷いながら、
東北道で、帰途につく。

11月19日(月曜日)

13時、「早稲田大学理工学部」にて去年に引き続き、
2度目の講演のため、通称「大久保理科大学」。
去年もそうだったが、今年も学生に元気は無し。
「社長失格」のテレビ番組での、テリー伊藤氏の
「若いやつらは、いつの時代でも保守的なんだよ」
という言葉を思い出す。
確かに、彼らはスタートが保守的で、
社会に入り、現実を体現する中で、
イノベーションを意識するようになるのだろう。
僕の「リスクヘッジの継続は、潜在的なリスク蓄積」という
言葉が、彼らにも、いつか理解されるだろう。

15時、オフィスに戻り、いくつかのビジネスミーティング。

21時、「TVタックル」鑑賞。

番組最後の議論は、
「日本は米国の属国であっていいのか?」という内容。
僕には、このような議論は不毛に思える。
なぜなら、その議論の前提に、
「世界平和が、永遠にありえない」という仮定があり、
その仮定の元、個々の集団のエゴに聞こえ、
結局、テロも国家も同じレベルになってしまうと思うからだ。

それにしても、「自衛隊を送る送らない」、もしくは
「米国にどこまで支援をするのか」という議論がまとまらないのは、
その議論の本質が、
「風が吹けば、桶谷が儲かる」という拡大解釈
(つまり、自衛隊が直接守るのは、日本国民ではないが、
テロを放置することにより、間接的に日本国民の益を失うという
事象のリンクの間接度合いの違い)を、
どこまで認めるかという、議論の仕方の議論にあるからだ。
そんな議論では、実効的な解決策など
見つかるわけが無い。
まあ、そんなゴールを目指して
番組を作っているわけではないだろうけど。

11月20日(火曜日)

「滋賀大学経済学部ゼミナール」でのキーノートスピーチのため、
先々週に引き続き、11月中なぜか3回目の滋賀県は滋賀大学。
(41号で詳しく書いた旅程なので、省略)

同大学経済学部学生による主催とあって、
講演の旅程、日程や当日の打ち合わせにぎこちなさもあったが、
彼ら、僕に対する敬意と真剣さに圧倒される。
これまでの学生主催のスピーチの中で最も楽しかった。

講演は、およそ600人の同大学経済学部学生諸君。
学部長の挨拶に続き、
最近講演というと、こればっかりだが、
「リステイクとリスクヘッジ」について1時間話す。
講演後の質疑応答では、珍しく質問が絶えなかった。
楽しかった。

18時、復路につく。

米原~名古屋まで新幹線「こだま」。
名古屋~東京を新幹線「のぞみ」88号。
僕の席は、10号車3―D。
自分の席を探し、上着をかけ、席につこうとすると、
僕の真後ろ「2-D」には、見たことのある顔。
「キムタク」だ。
なんだか、想像より、ちょっと顔がでかい。(失礼)
キムタクには申し訳ないが、ヒジョーニ眠い僕は、
シートを思いっきり倒して、熟睡。

21時、東京駅に到着。
すると、ホームには、キムタクシートの場所をつかんでいる、
「追っかけ」の女子たち。
彼女たちの情報網には、圧倒される。

デッキに出ると、またもや見たことある顔。
元JJ専属モデルで、現在はモデル業と平行して、
「ノエル・クリニック」のパートナーも勤める高世明美女史。
彼女とは、数ヶ月ぶり。
お互い「ひさしぶりぃ~! 偶然だねぇ~!」
という挨拶を交わし、
彼女を自宅に送り、さようなら。

僕は、実家の船橋へ首都高を飛ばす。

11月21日(水曜日)

久々の実家での休養。
原稿、家族との食事、そしてワンワンサービスで、
一日が終わる。

11月22日(木曜日)

朝から「スパ然」

11時、当社(ベンチャーマトリックス株式会社)投資先
NA社の月例取締役会。
永遠、15時まで続く。
あぁ~あ、疲れた。
それでも、4年程前までは、こんな会議ばっかりしていたっけ。
今は、当該企業にどっぷり漬かることなく、
常に客観的な意見が言えるので、効果的。

講演、社外取締役、執筆など現在の活動は、
僕自身が「人の役に立っているな」っと実感できる。
倒産後、僕は自然とそんな道を選んできた。
それまでの人生が、人の役に立つことや、
周囲から望まれることよりも、
自らがやりたいことを実行してきたのとは、
まったく対照的だ。

周囲には、僕に、ベンチャー起業家としてのリトライを
期待する声が多い。
そんなことを言われた僕は、いつもこう答えている
「しばらくやるつもりありません」。
しばらくなのか、永遠なのか、そしてその理由はどこにあるのか?
僕本人も良くわからなかった。
ただ、やりたい気持ちにならないだけだと思っていたのだ。

今日、ベンチャー企業の取締役として、
彼らに対するアドバイスをしている時、気がついた。
僕自身の目標達成が、今あるとしたら、
過去のように、自らの欲望のために、
周囲にいる人に迷惑ばかりかけるのではなく、
彼らの「役に立っている」という実感が得られる事を
続けることなのだ。

18時、雑誌「Yahoo! Internet Guide」の取材。

大人しく過ごす。

11月23日(金曜日)

実家にて、原稿、犬の散歩など。

19時、毎月恒例の「クラブEXE」パーティーに出席のため、
西麻布は「PLANET BLUE」。

今月は、珍しく数百名の大規模大会。
きっと、クリスマス前ということで、
皆さん、パートナー探しに躍起なのだろう。

VIP席にて、フジテレビの某アナウンサーと挨拶後、
僕の大好き顔(九州方面に多い熊顔)の女性を発見。
現在無職30歳のMY嬢をその場で食事に誘い、
同じく西麻布は「イ・ピゼリ」。

フォアグラ、チーズ、などのおつまみを、
「Gevrey-Chambertin‘98」で頂きながら、口説きトーク。

23時、再びお腹が減って、
MY嬢と共に、自宅近くの「じゃんがらラーメン」。

24時、次の予定があるというMY嬢を恵比寿に送る。
とにかく大好き顔に出会えてラッキー!

25時、電通NB氏と合流~麻布十番の某中華レストラン。
数年前の元ワンギャル、某新人女優らと歓談。

11月24日(土曜日)

母上が「USJ」にお出かけのため、
実家にて、静かにワンワンサービス。

ということで、今週も忙しかったです。
来週は、少しペースを落として、
その後のパーティー嵐の師走のための、
エネルギー蓄積期間とする予定。
 
板倉 雄一郎
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