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「懲りないくん」2001年5月6日号(14)

今週は「幻滅」多い号。
はじまりはじまり。

4月29日(日曜日)

13時、お食事会担当役員(?)カンクロウクンが、
やっと事業に目覚めた。
会社名は「ドリームキャリア」。
とりあえずビジネスプラン作りの指導。
なんとHH嬢までがこの会社の役員に就任。

僕は、彼ら起業志望者の「肩を押す」行為を一切しない。
その気があっても、動かない(動けない)人を黙って放置し、
その時が来るのをじっと待つ。
なぜなら、起業に一番大切なタレントは、
「リーダーシップ」であり、
「リーダーシップ」を作るエネルギーは、
「オルタネート精神」に他ならないからだ。
サラリーマンとアントレプレナーの最大の違いである
「オルタネート精神」のある無しが、起業の最低条件。
カンクロウクンには、このエネルギーがあるのを承知していたが、
やっとそのエネルギーが「お食事会」から「事業」に転じたところ。
そうなれば、僕ができる指導を真剣にしよう。

船橋へ移動。

4月30日(月曜日)

朝から「懲りないくん」13号。
書いては直しを繰り返す。
「新・日記文学(?)」の試行錯誤は、
ホテル日航東京の「スパ然」でも続く。
GW中「二泊で一泊料金」キャンペーン実施の
ホテル日航東京は、スパもめちゃ混み。
まさにデフレ効果のおかげで「お台場どっと混む」

16時、やっとこさ原稿完成。
が、僕自身、納得行かず。

19時、高世明美女史とデートのため、
彼女を天王洲でピックアップ。
連休でお休みのお店が多く、
久しぶりの白金は「ブルーポイント」。
お互い、この店に知人多し。

シャンパーニュからボーヌロマネ村のワイン
(DRCではありません)に飲み変えた頃、
明美女史からの相談事。
「私、XXXさんに、メールを一度送っただけなのに、
私がXXXさんにしつこくしてるって言いふらされて困ってるの」
なぬぅ~!
なんだってぇ~?
ああ、幻滅第一段。
著名な人物をネタに、自分が求められている事を吹聴する
モチベーションを全く理解できないわけではない。
しかし、たった一度メールの相手に対して、
いくら相手(この場合明美女史)が著名であっても、
作り話を吹聴するのは、イタダケナイ。
僕が幻滅する最大の理由は、このXXX君が僕の知人であり、
本人さえも著名な人物だということ。

一体いつから、日本人は自己のバリューの追求、
すなわち「自分というブランド」の確立から逃れ、
何か他のブランドによる
間接的な自己顕示をするようにになってしまったのだろう。

10代の女性がシャネルやヴィトンを無理して身につけるのも、
フェラーリでモテようとする男性も、
夜中のクラブで「XX商事の○○です」なんて自己紹介するのも、
性交渉の無い相手をネタに「やった」とか言うのも、
皆、「ブランド煩悩」に支配された愚かな行為だよ。
他人の価値感にどうこう言うつもりは無いが、
おかげで「フェラーリという車本来の楽しみ」を
買ったはずの僕も、
「フェラーリ」というブランドから安易にイメージされる、
「金」、「女」、「遊び」が先行し、
ブランド煩悩者から、
冷たい視線を浴びる事になるんだよ。
かといって、「えーと僕がフェラーリ買ったのはですねぇ・・・」
などど、いちいちイイワケする気にもならないけどね。
(ハイパーネット時代の話であって、今フェラーリありましぇん)

この日記でも、
「ディティールなきノンフィクションに意味は無し」という
主義に基づいて、単に事実を綴った言葉が、
ブランド煩悩者だと思われることにもつながってしまう。

そして、XXX君のような、
良くも悪くも「自分のブランド」を既に持っている人物でさえも
ブランド煩悩者的行為に走る始末。

日本人の本質は違ったのではないか?
経済合理主義からいえば、まったく馬鹿馬鹿しい行為だが、
戦国時代、合戦のとき、
「我わぁ~、どこそこの、だれだれなるぞぉ~」とか言い合ってから
命を掛けて剣をさばいていたんじゃなかったの?
そして、自己ブランドを轟かせる為に、
日夜剣術や精神力を、
つまり自己のバリューを磨く努力をしていたのではなかったのか。
刀を抜いて「俺は、モデルのだれだれちゃんとHしたんだぞぉ」と
言ったところで、何の意味もないってば。
「あんたがなにものか」が大切なんだよ。

明美女史には、
「本人に直接クレームをつけるべし」とアドバイス。

自分に直接利害の無い事で幻滅する事ほど、
解決不能の落胆は無い。

5月1日(火曜日)

11時、予定が無いので、船橋へ。
昼食後、なぜか疲れて寝る。

20時、僕自身納得の行かない「懲りないくん」13号を改稿。

途中、明美女史から電話。
XXX君から謝罪のメールが届いたと言う~幻滅少し解消。

やっと「懲りないくん」の方針を見つけ、13号原稿終了。
12号までは、かなり遠慮してたのです。
13号以降に書くようになった、「僕の思い」を書き始めたら、
きっと、それ以前までの「一行感想付きスケジュール帳」
(この表現は「懲りないくん」の読者から頂きました)
に戻る事ができなくなって、書く事の負担がふえるかなぁ~っと
逃げていました。
ごめんなさい。
でもね、書いて見ると、このスタイルの方が「楽しい」。

就寝。

5月2日(水曜日)

朝からスパ。

12時、「東京大学工学部」で講演のため、
本郷は東大キャンパス。
中尾政之工学部教授と「うな重」で昼食。

13時、150名の最高学府学生の前で楽しく講演。
工学部とあって、経営基礎の話し。
「経営手法(ベンチャーかオーディナリーか)と
 経営リソース(人、金、モノ、情報、時間)の
 性格一致が成否を分ける」であるとか。

学生相手の講演は、その学校によって色がある。
これまでの講演で学生の反応が良かったのは、
「慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)」
「一ツ橋大学商学部」
そして今回の「東京大学工学部」。
特にSFCでは、250名程の聴衆の中で、
「既起業者」が10名以上というのには、恐れ入った。
ワーストはなぜか同大学の経済、商学部~つまり三田。
「エリート・オーディナリー」が活躍する時代は終わりだと言うのに、
彼(彼女)らは、時代錯誤なのか。
三田での講演後の学生諸氏からの僕の評判は最悪。
「あの人は、学生を馬鹿にしている」だってさ。
僕はこびずに、ダイレクトに話しているだけなのにねぇ。
質疑応答で彼らの質問に対して僕は、
「あなたは起業なんてしないほうが良い」とか
はっきり言うものですから。

今日の講演には、なぜか、
僕の友人とホテル日航東京でデート中の筈のHH嬢、
それにカンクロウクンの姿。
そういえば、カンクロウクン、ここの学生だったね。
講演後は、中尾教授のリクエスト(カンクロウとはどんな奴だ)に
答えて、僕、カンクロウ、HH嬢、中尾教授で楽しくトーク。
中尾教授、良い意味で東京大学教授のイメージを壊す存在。
HH嬢の「この授業、また聞きに来て良いですか?」という質問に、
即答で「いいですよ」と。
なんとも頼もしい!

16時、カンクロウ、HH嬢と共に、原宿はカフェ632。
今後の事業展開の打ち合わせ。

18時、デート途中で抜け出してきたHH嬢を、
ホテル日航東京へ送る。
そもそもどーして、僕がタクシーするの?
スパにも行かず、高速湾岸線で船橋。

5月3日(木曜日)

午前2時過ぎ、熟睡中の僕にHH嬢から救助電話。
理由は知らないが、とにかく迎えに来てくれと言う。
深夜の首都高でホテル日航東京~原宿の自宅。
朝まで、HH嬢とトーク。
彼女の救助理由にまたも「幻滅」第二段。

昼から、カンクロウクン、HH嬢と共に、
昨深夜来たばかりのホテル日航東京「スパ然」。
3人で楽しくプール!
それにしてもカンクロウの泳ぎには、他人の振りをしたくなる。
一方HH嬢のクロール、平泳ぎはこなれている。
泳ぎに限らず、20歳前後の男女では、
圧倒的に女性に軍配が上がる。
主に付き合った異性によるものか。

18時、彼らと別れ、船橋。

5月4日(金曜日)

朝から実家の家事手伝い。

昼、「スパ然」
せっかくのGW、お食事相手を求め、
10名ほどの女性に電話するも、全て反応無し。
あれれぇ~。
まあ要するに僕は彼女たちにとって「都合の良い男」。
僕の思想に理解を示すも、
いざGWだの、週末だのというと、
しっかり「彼氏」というカテゴリーの相手と過ごすらしい。
トホホ。
それでも「都合の良い男」を貫く理由は、
「『彼女』の『彼氏』になって、
『本当の彼女』から遠ざかる」のが嫌だから。
人は、人との関係を、出会いから早い時期に、
つまり互いに良く知らないうちにカテゴライズし、
その関係を維持するために、嘘を付く。
だから、どのカテゴリーにも相手を当てはめたくないし、
こちらも当てはめられたくない。
っと思うのです。

23時、数年前に仕事で知り合った、
某有名モデルコンパニオン事務所所属のMS嬢から電話。
話し込むうちに、なぜか僕自身「幻滅状態」を抜け出すべく、
彼女を自宅に招く。
彼女のニーズと僕のニーズが一致したというわけ。
「太陽がいっぱい」を二人で鑑賞。

5月5日(土曜日)

深夜、タクシーで帰るMS嬢を見送ると、
またも僕の知人宅でお食事会の筈のHH嬢が来宅。
あのね、ここはあなたのおうちじゃないんだよ。

11時、ドリームキャリア社のコンサルティング。

16時、「スパ然」。

20時、「J-WAVE」生出演のため、西麻布スタジオ。
ナビゲーターは、ベンチャーキャピタリストとして同業の
ショーン・K氏。
オンエア中より、CM中の方が、
ビジネス共通語があるせいか、話しが弾む。
後半、数週間前のこの番組のゲストが糸井重里氏だったせいか
DJ卓のPCの画面には「懲りないくん」13号。
「懲りないくん」の話しに移行。
おまけにJ-WAVEのこの番組紹介のコーナーには、
僕のプロファイルと共に「ほぼ日」へのリンク。
ラジオは楽しい。
できれば、AMの深夜長時間トーク番組やりたいな。

23時、船橋へ戻り、就寝、のはずが、またもHH嬢から電話。
彼女の彼氏の態度に対する相談。
彼女はその彼と別れようとしている。
彼女の姿勢に、その彼曰く
「俺を敵に回さないほうが良いぞ」だとさ。
ああ「幻滅」第3段。
「おまえはチンピラか」と言いたい。

自分の彼女が、自分から離れていくときに「脅し」を使う男。

誰か遊んでる風な男(たとえば僕)が交際のある女性と聞くと
すぐに「やれる」と思い、誠実さの無い行動をする男。

彼女に対するプレゼントを「援助交際じゃない」という
一見まっとうな理由で断る、実はただのケチ男。

愛しても居ない女性をネタに、自分を誇示しようとする男。

性交渉の無い女性と性交渉したと吹聴する男。

ああナサケナイ。
いったいどうしたんだこの国の男たちは。
僕が「女性のメシア」をやらなきゃいけないのかい?

っとかっこつけてみたものの、
ナサケナイと彼らを評する本当の理由は、
僕自身のナサケナイ「過去」そのものだからなのだろう。
彼らの失敗を「ナサケナイ」と感じるのは、
僕が過去に同様の失敗をし、自分自身に対して、
「ナサケナイ」「恥ずかしい」を感じたことがあるからに他ならない。
ただ、自己の過去を評価すれば、その失敗を自ら認め、
失敗による「ナサケナイ」「恥ずかしい」から逃げ出すための
「自己を自己の中で正当化」する事を止め、
失敗を思い起こし、真剣に向き合って来たことだろう。
あまりの恥ずかしさに、布団を頭からかぶるような思いを
たくさん経験してきたわけで、
その結果、失敗を克服することができたと思う。

失敗を認め、誠実に向き合うことさえできれば、
失敗が人を育てる事につながろう。
フェアーでチャレンジングな姿勢が、
人を人として最大価値に招くと信じて止まないが、
その前提として、「失敗をしゃぶり尽くす」行為は不可欠。

失敗を本人も周囲も認める文化があれば、人は成長する。
と言う事で、僕自身も幻滅ばかりしていないで、
彼らの恋愛での失敗も見守ろう。

板倉 雄一郎
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