板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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「懲りないくん」2001年11月11日号(41)

地方講演は大変で週。

11月5日(月曜日)

10時、このところの体調不良について、
医者でもない僕は、勝手に「肝臓疾患」と予想をつけ、
大嫌いな病院に行く。
「船橋医療センター」は、僕の実家から車で5分ほどの距離にある、
市が運営する総合病院。
看護婦である母親の指導の元、
「内科」、「皮膚科」、「耳鼻科」の受付。
総合病院で診察を待たされないコツは、
複数の科を受ける事だったりする。
複数の科の予定があると、
それはコンピュータで管理された「カルテ」に記載され、
医師も他の科との連携のために、早めに診察してくれるのだ。

「内科」~喉も痛くない、咳も出ない、熱も無い。
よって、風邪では無いという。
PCに向かう先生は、血液検査の検査項目を次々に
チェックしていく。
主に「肝臓」、「腎臓」、その他の消化器系のチェック。
それを見ているだけで、益々、具合悪くなる。

「耳鼻科」~鼻腔にできた傷をやたらと心配していたが、
単なる「鼻をほじくりすぎ」ということで、
塗り薬のみ~少しほっとした。

「皮膚科」~足の付け根にできたオデキが気になり、
診察を受けるが、単なる外傷ということで、これも薬のみ。
素っ裸で睡眠中に、蚊に刺され、引っかき過ぎた模様。

最後に、採血と採尿~結果は来週。
しばらく、精神疾患になりそうだ。
トホホ。

11月6日(火曜日)

朝、熱めのシャワーと冷シャワーの繰り返しで、
昨日の酒による顔のむくみを取る。
サムソナイトの出張用バッグに、
シャツと下着、グルーミング用具、それにVAIO-C1を詰め込み、
カジュアルな服装に着替え愛車に乗り込む。
表参道から国道246号(通称青山通り)に入り、
渋滞と時間を気にしながら、東京駅に向かう。

航空機で、自分が機内に入った瞬間に、
「乗務員はドアモードを・・(ここの台詞は航空会社によって違う)に
変更してください」
なんてアナウンスが入り、周囲の乗客から冷たい視線を浴びたり、
息せき切らして新幹線に飛び込んだりするのは、
結構嫌いなのだ。
そもそも、僕の仕事の中で、
唯一「時間と場所」が指定されている講演活動は、
指定時間に指定場所にたどり着けなければ、
全く責務を果たせない。
航空機の移動であれば、天候が、
新幹線での移動の場合は、ローカルへの乗り継ぎに
極めて神経を使う。
幸いなことに、倒産後の3年間で200回ほどの講演活動では
一度も問題を起こしていない。
合コンやお食事会には、ほぼ100%遅れていくが、
デートと講演に遅れたことは無い自分~結構まじめなのだ。

東京駅周辺の地下駐車場に車を止め、
ビジネスマンでごった返す「八重洲地下街」を抜け、
新幹線ホーム。
出発の15分前にホームにたどり着くようにしているのは、
新幹線より多く利用する羽田からの航空移動に慣れたせいだ。

ホームの売店で、ベントーを買う。
海老、蟹アレルギーの僕は、その素材に気を使う。
さらにKIOSKで、週刊誌とチョコレート。
週刊誌はもちろん暇つぶし、チョコレートは、
講演が始まるおよそ1時間前に大量に食べる。
即座に体内のブドウ糖値を上昇させることができる。
ブドウ糖を一番多く消費する「脳」の活性を促し、
アドリブ専門の僕のスピーチをこなすためだ。

新幹線では「禁煙グリーン車」を利用する。
ヘビースモーカーの僕が「禁煙」を指定するのは、
車内の換気が満足にできていない新幹線で、
他人の吐いた煙が充満した密閉空間に居たくないからだ。
吸いたくなったら、喫煙グリーンに一時的に移動して一服。

車内が空いていれば、車掌にわがままを言って、
車輪から一番離れた車両中央の席に移動する。
航空機の場合は、水平尾翼と垂直尾翼近くの
後方席ではなく、パイロットに近い前方の席を取る。
いずれの場合も力学的に、揺れが小さいからだ。

席についたらまずベントー。
僕は食事の時間が短いという特技を持っているので、
数分であっさりたいらげる。
お茶を飲み、しばし外を眺めながら、ボーっとする。

すると様々な思いが頭をよぎる。
女性のこと、健康のこと、TV番組のインチキなこと、
来週の予定のこと、今週の反省のこと。
けれど、目の前の講演のことについては、全く考えない。
講演では、その場の「空気」を読み、
ポケットにある話を、数分で組み立てることにしているからだ。
予め用意したシーケンスと聴衆の印象のギャップに
話が受け入れられない事態を回避するため、
その場で決める。

僕の講演は、場所と主催者組織によって、
その聴衆のフェイスは、全く異なる。
年配の中小企業経営者の場合もあれば、
理工系学生の場合もある。
一番やりやすいのは、要約した共通言語を
話しに取り入れることができるビジネススクール。
「イクイティーファイナンス」と言うだけで、
なんの話か通用するわけだ。
しかし、経営者がこの程度の言葉を知らない現状には、
いつも驚くのだけど。

航空機の移動は、せわしない。
「離陸しますよぉ~」の次は「ピンポン!トイレに行け」、
さらに押し付けがましい「ドリンクサービス」。
少しの間を置いて、また「ピンポン!今の内にトイレに行け」
そして着陸。
だから、何もしない。
けれど新幹線の移動は、平らで何も起こらない。
ドアが閉まる音も聞こえなければ、
走り出したことも気が付かないことがある。
そして、永遠数時間、同じような揺れと音。
この環境は、僕をして瞑想状態に導く。
ひらめきがあれば、PCにメモを取る。
PCを閉じるが、すぐにひらめきが起こる。
再びPCを開きメモを取る。
新幹線の移動は、なぜか脳が活性化する。
きっと、電位を帯びた物体(体)が、
同様に電位を帯びた物体(地上)の直近を、
高速(時速200Km~300Km)で移動することによって
発生する「磁場」が脳に影響を与えるのではないか・・・
なんてことも、ついでに考える。

新幹線のグリーン席や航空機のプレミアムシートは、
講演のための体力温存ということ以外にも、
いくつかの恩恵を与えてくれる。
まずは、著名人の素顔を見れることだ。
この日は、柔道の「やわらちゃん」に車内ではないが遭遇。
さらに、人物を断定できないが、SPに囲まれた多分有力政治家。
それに、芸能人や作家などなど、その素顔を見ることができる。
サインを求めたり、話し掛けたりはしない。
僕でさえ、ごく稀に名刺交換を迫られたりするが、
それは非常に気分が悪いことなのだ。
国際線の隣の席に、話し好きな人間が居たり、
その人が僕を知っていたりしたら、もう地獄。
だから、ある程度著名な人間は、
移動中のお互いに干渉しない。
それもまた、都合が良いのだ。

連載のいくつかを執筆する。
時間つぶしに都合が良い。

気が付くと目的地に到着。
周囲を片付け、早めにデッキへ。

13時、京都駅からローカル特急に乗り換え、一路舞鶴へ。

僕は講演の営業活動を一切していない。
講演依頼は、主催者が何らかの方法(殆ど「社長失格」)で、
僕の情報を入手し、ネットで検索するのだろう。
年に50回~80回の講演依頼の殆どは、
「板倉雄一郎事務所」のWEBからの申し込みである。
この日は、舞鶴市長の江守氏主催の勉強会
「江守政治経済研究会」で講演。
講演時間の関係で、一泊旅行となる。

講演で宿泊するのは極力避けている。
東京が好きだからだ。
しかし、場所によっては、とんぼ返りもきつくなる。
日本は狭いというけれど、
たとえば、紀伊半島の南端だとか、
今回の舞鶴あたりになると、時間距離が非常に遠い。
仕方なく宿泊するのだが、
その地の観光などしたことが無い。
点から点への移動は、単に時間の違いでしかない。

18時、講演開始。
いつもの「ベンチャー学」を振舞う。

講演後は、質疑応答に時間を割く。
主催者が、質疑応答を省略することがあるが、
それでは、ライブ講演の意味が全く無い。
ただブロードキャストするだけなら、
ビデオテープでも見てくれればよい。
ライブの価値は、聴衆とのインタラクティブにある。
だから、積極的に質疑を受ける。

20時、懇親会のため、懇親会場へ。
この日は、「松葉蟹」に解禁日ということで、
主催者は「先生のために、たくさん蟹を用意しましたから」と。
その笑顔に、僕はそむかなければならないのだ。
仕事の会食でも、懇親会でも、
このときの断り台詞には気を使う。
が、いくら気を使ったところで、僕はこういう以外に選択肢は無い。
「ありがとうございます。
でも僕はアレルギーで食べられないのです。」
僕は、この言葉に反応する相手の顔を見ないようにするのが、
精一杯だったりするのだ。

22時、部屋に戻り、メール処理をして寝る。

11月7日(水曜日)

復路につく。

東京駅に到着し、愛車に乗り込むんだ時、
僕の講演は終わる。
一番なれている愛車のドライビングシートは、
自宅のベッド以上に、リラックスできる。
予定が無く車に居る時、最高の開放感に満たされる。
どこにでもいける。
誰とでも連絡が取れる。
大声で叫ぶことも、大音響で好きな音楽を聴ける。
そして車を楽しむことができる。
僕は、ほんとに車が大好きだ。

11月8日(木曜日)

ホテル日航東京の「スパ然」で、
講演の疲れと、余分な脂肪を取る。

20時、最近知人に紹介されたNK嬢とデート。
久々に、麻布十番は、業界人ご用達居酒屋「はじめ」。
カワハギの刺身を肝タレで頂く。

22時、自宅にて映画鑑賞ではなく、ダベリング。

11月9日(金曜日)

いくつかのビジネスミーティング。

11月10日(土曜日)

「滋賀銀行」での講演のため、
数日前と殆ど同じ旅程で滋賀県は草津。
そして日帰り。

ということで、懲りないくんはまじめに仕事しています。
来週(これを書いている時点では、今週だが)は、
懲りないくんの「大復活!」になると思うよ。
ここ数ヶ月の体調不良による、内省的で、活動抑制の期間は、
今週で、終わぁ~り!

板倉 雄一郎
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