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「懲りないくん」2002年2月8日号(53)

犬の世話と称して、実家生活で週。

2月3日(日曜日)

久々に「懲りないくん」掲載日に「ほぼ日」を覗く。
糸井重里氏のコメントは、
「読まれるほどに、世間を狭くするのに、
あえて書き続ける意図とは、どのへんにあるのだろうか?」
とある。

僕が答えるべきことではなく、
読者それぞれが、それぞれの価値観に照らし合わせて、
それぞれの意味を感じていただければ、
筆者としては、それで満足なのだが、
「懲りないくん」を書く訳について、
折角の機会なので、今回は、少し書いてみようと思う。
(糸井さんは、人を誘導するのが上手ね)

理由1~書きたいから。
大きく構えた理念があるわけでも、
ビジネスとしての直接的な理由があるわけでも、
僕の将来の活動に直接関係する理由があるわけでもない。
単に、自身の過去の行動、思考などを書き留めること、
それ自体が、楽しいのだ。
「こんな、楽しいこと、むかついたこと、発見したこと、
が、あったんだよ」と、誰かに
「聞いてもらいたい」というより
「分けてあげたい」と
(余計なおせっかいかもしれないが)思う。

理由②~そのままの自分を曝したいから。
「世間を狭くするから」という理由で、
「まんまの自分」で生きていけないのなら、
自分の存在意義なんて、無いに等しいと、僕は思う。
別の言い方をすれば、
「まんまの自分に、何らかの価値を見出してくれる人が居れば、
それで十分、僕は満足を感じる。」
ということになろうか。

「マス」を意識する人にとっては、
もしくは「経済価値」だけを意識する人にっとては、
「板倉は、彼自身にとって、馬鹿なことをしている。
言わなくてもいい事を、言うことによって、
彼自身を不利な状況に置いている」
となるだろう。
しかし僕にとって、だれかれかまわず、
僕を「良い人、役に立つ人、貴重な人」と
思ってもらいたいとは、全く、思わないのだ。
「数」によって、幸せを感じる性分ではないということだ。

さらに言えば、その瞬間に、大多数の賞賛を得ることなど、
あっという間に消費され、
明日には、価値がなくなるとも思っている。
どのような作品でも、
ビジネスであれば(つまり金儲けであれば)、
その瞬間のツボを捉えることが大切だが、
僕自身は、僕自身のビジネスの商材である以前に、
僕自身の人生の主役を楽しみたいということなのだ。

理由3~「フェアー」と「ナイストライ」の表現。
どちらも、僕が知っている限り、
そのワードの意味を慎重に正確に伝えている日本語は無い。
だから、それを言動によって表現したいと思う。
結果より、その過程における
「ルール」や「精神」が尊重されるべきと、
思うところが僕の「理念」。
それが、誰かに伝われば、幸いである。

と、まあ以上のような理由で書いているわけでございます。

僕は、日本の文化が好きだ。
ただ、ここ50年ほどで出来上がった文化は、
好きではない。
戦後の日本は「ベンチャー精神」に溢れていた。
チャレンジをする人を賞賛する文化が、
この国にもあったのだと思うのだ。
その環境から生まれたのが、
「ソニー」や「本田技研」のような、
当時のベンチャー企業だった。
その後、国民全体の努力があって、
右肩上がりの経済成長を成し遂げた。
ところが、いつの間にか、
「経済は、恒久的に右肩上がりになる」という
錯覚が生まれ。
いつも書いていることだが「所有の追及」におぼれ、
いつしか日本人は「生き方」や「理念」に対する思考を
忘れてしまったのではないかと思うのだ。
(所有は、経済が恒久的に右肩上がりである場合に限って、
多くの経済価値を生み出す)
その結果、経済価値と所有が
第一義の国民が増えてしまったように思う。
ところが、経済が右肩上がりであり続けることなど、
ありえない。
それが今、現象として現れ、
経済の右肩上がりの前提に基いた行為が、
消滅しつつある。
日本のあらゆるところで。

たとえば、(現在の)日本文化の下では、
金を作った人間が、その金を消費する行為に対して、
否定的な風潮がある。
「あいつは、(たとえば)株で儲けて、
フェラーリ載って、高級住宅地に住んで、
一流レストランで食事しているらしいぜ!
とんでもない人ね」っと。
はっきり言ってしまえば、このようなことを言う人は、
「(自分にとっての)正しい生き方」に対する
理念を持っているわけでも、
自分と違った価値観を尊重するという
フェアーな姿勢を持っているわけでもない。
単に、嫉妬や妬みだ。
(たとえば、株で儲けるということは、
大切なお金を企業の活動に提供したリターンであって、
それ自体、明らかに社会貢献になっているのだ)
そんな文化が蔓延った結果、金を作った人間は、
おおっぴらにその消費を見せなくなった。
見せれば、世間を狭くするからだ。
このような意識が、結果的に金を眠らせる。
そして、持てる者は、(消費を抑制するので)
さらに持てる者になり、
そうでない者は、嫉妬や妬みに苦しむ。
結果、1400兆円の眠れる金が、経済を低迷させる。

金を作った人間が、金を消費する瞬間は、
確かに他人事、他人の喜びであり、楽しみである。
しかし、彼らが消費した金は、回りまわって、
もてない者にも「必ずとは言い切れない」が、
金と、それをつかむ機会が回ってくる。
一方、彼らが消費を抑制すれば、
「必ず」お金とその機会は回ってこない。

そう考えれば、持てる者の努力に対する「賞賛」だけでなく、
自らのためにも、彼らの「贅沢」を受け入れる姿勢を
取れるのではないだろうか?

経済は、循環してこそ経済なのだ。

こんな僕でさえ、人によっては「贅沢」に写るかもしれない。
しかし、この程度の贅沢は、目を見開いて周囲を観察すれば、
たっくさん存在する。
僕より(経済価値において)数百倍の贅沢をしている人だって、
たっくさん存在する。
すべては、程度の問題だ。
そんな、現実を知る必要もあると思う。
が、一方で、彼らの贅沢ごときに、いちいち目を奪われ、
「経済価値」の追求に専念することは、
それ以外のダイナミックな人生の楽しみという機会を、
他人の贅沢に翻弄されているといえるのではないか。
自らの価値観における、自らの幸せを追求する。
それが、僕のスタイル。

以上。

2月4日(月曜日)

「施政方針演説」。
小泉純一郎氏の批判が相次いでいる。
その辺は、多くの識者や評論家に任せるとして、
僕は、彼の評価すべき点として、
「国民の政治に対する関心を高めた」を挙げたいと思う。
民主主義の大原則は、
有権者など民の積極的な参加にあるわけだ。
その底上げが、少なくとも以前より、できたのではないかな?
のんきかもしれないが、とても大切なことだと思う。

2月5日(火曜日)

実家ひきこもりで、トピックなし。

2月6日(水曜日)

12時、ホテル日航東京「スパ然」。
実家引きこもり、かつ、
犬の散歩を(抜糸前なので)長距離できないため、
体重変わらずだが、体脂肪率増える。
なので、泳ぐ。

16時、当社(ベンチャーマトリックス㈱)の
社内ミーティング。

17時、IT関連ベンチャーのプレゼンを受ける。
悪くないが、過去のしがらみと、
ビジネスモデルの成否における
「因数」が多すぎることが、気になる。
成功しやすいビジネスモデルとは、
成否に関する「因数」が如何に少ないかである。

20時、中目黒激安イタリアン
「タントタベタリーナ」のオーナーの紹介で、
ある日本文化系協会の
顧問就任依頼を受けるため同店。

店は、年初から、フレンチベースのシェフに変わり、
(もちろん現在もイタリアン)
やっとこの頃、メニューとお味が定着しつつある。
1月にお邪魔したころより、格段の進歩。

お目にかかったのは、、
僕が普段接することの無い方々。
僕個人としても、勉強になる、
さらに、僕が提供できることもある。
ということで、顧問就任を承諾。
何が起こるか楽しみ。

同店オーナーの「向学のため」というリクエストに答え、
僕より、僕の母上に歳の近い彼女と、
彼女のご子息と共に、
西麻布はイタリアンリストランテ「イ・ピゼッリ」。
ご子息(21歳)の「ラーメン屋を始めたい」という
人生相談に乗る。
このようなとき、僕の答えはいつも決まっている。
「やりたい『こと』やりなさい。」
(この「こと」は、「事」でもいいし「子と」でもいい)

2月7日(木曜日)

10時、
「和歌山ベンチャー大学」(学校法人ではなく、
和歌山市の主催する継続イベント)で講演のため、
羽田よりNH143で空路関西国際空港。
客室乗務員の一人に、一目ぼれ。
ところが、彼女の印象が強すぎたのか、
名刺交換はおろか、目も合わせられなかった。
残念。
僕にも、こういうときはあるのです。

今日の聴衆はおよそ300名。
その名のごとく「ベンチャーしたい人、してる人」
いつものベンチャー学を振舞う。
(なお、ベンチャー学は、5月にも単行本として発売予定、
現在、最終調整中です)

このイベントは、今回で4回目。
これまでは、和歌山出身の竹中大臣。
ドリームインキュベータ代表、(元BCG)堀氏などが
スピーチされたそうだが、
僕の講演には、県外からの申し込みも多数と聞く。
確かに、久しぶりの「オープン講演」。
で、一番前には「ほぼ日手帳」にメモを取る人も
居たりする。
きっと彼には「ベンチャー学」と「映画鑑賞」が、
ダブって見えたに違いない。

質問も多く、皆さん真剣。
なんといっても、和歌山市長自ら出席され、
彼自身が「企業誘致」より「起業促進」を市政に謳う人。
とっても合理的で、健全だと思う。

楽しいひと時を過ごし、関空よりNH148にて復路。
777のドアで出迎える客室乗務員に知った顔。
実家近所は、
雄太君の彼女「ベティー(ゴールデン雌6歳)」のお宅の
お嬢様(?)。
全日本空輸だけでも客室乗務員は数千名。
だから、かなり低い確率。

そんな驚いている場合ではない。
往路で、なぜか声をかけられなかった客室乗務員の
偵察(?)を頼まなくては!
ということで、往路のチケット半券を彼女に渡し、
用件を伝える。
僕の席は1-A、1-B(つまり隣)で、
サービスされる弁当を、勢いよくほうばっていた
タレント野々村真氏は、
「スッチーをナンパする、助平なおじさん」ぐらいに、
思っていただろうなぁ。

20時、羽田から台場に直行し「スパ然」。

明日も、講演のため羽田より移動。
「映画鑑賞」もしばらくしていないけれど、
おとなしく就寝。

ということで、今週も女性関係「特に」なし。
来週も、多分、「特に」なし。
ああ、もっと仕事したい。って感じでしょうか。


板倉 雄一郎
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