板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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「懲りないくん」2002年2月22日号(55)

仕事は順調、しかし、プライベートは、
何をしていても、悪い結果になるで週。

2月15日(金曜日)

11時、当社(ベンチャーマトリックス)投資先
NA社定例取締役会のため、
東京糸井事務所の目と鼻の先は、NA社。

当初予定していた目標より、
売上も、利益も、上方修正。
この段階(スタートアップ)では、
売上や利益より「仕込み」が大切なのだが、
まあ、利益が出ることは良いことだ。
今時のベンチャーが、税務対策をすること自体、
大変稀なケースである。

17時、ホテル日航東京「スパ然」

20時、「アナウンサーの卵嬢」のBDパーティーのため、
いつものようにクラブ「TwoFace」。
なぜだか、スポーツクラブの話で盛り上がり、
何人かの女性から「スパ然」デートの申し込みを受ける。

2月16日(土曜日)

11時、犬に会いたくなり、
いつもとちょっと違うルートで船橋へ向かう。
途中、六本木のトンネルを通過する際、
(歩行者の出現が考えられないので)ちょっとだけ、
ちょっとだけですよ~スピード出したのね。
そしたら「トンネルを抜けたら『とまれ』だった」のよ。
トホホ。
もう確実に30日免停ですわい。
免停なんて、10年ぶり~(自分の行いによる不幸①)

14時、ほとんどフテ寝状態から目覚めTV鑑賞。
「ソルトレイクオリンピック」のサマリーが流れるが、
日本選手団の結果は、期待以下ということだろう。
はじめからわかっていたことだが、
日本選手団が良い結果を出せない原因は、
「4年前と顔ぶれが変わらない」からだろう。
長野の成功体験が、失敗を招いたとも言えるだろうか。
この国は、五輪選手に限らず、
経済、政治、メディアとあらゆる分野で、
「御年配の、御ノサバリ」が目に付く。
政治でも、経済でも、「改革」とはつまり、
人の、新・旧、素人・玄人の入れ替えを意味する。
大きな声で言う人は少ないけれど、それ以外に
改革する方策はマクロ的にありえない。

経済活動が恒久的に右肩上がりであれば、
玄人、つまり業界や組織に精通した人が利益を生み出す。
しかし、その継続は、アンフェアーな癒着や汚職を生み、
さらには、時代の変化に合わせたリスクテイクなど、
玄人のポジショニングを乱す行為はすべて排除される。
しかし、時代は常に変化する。
そして、それまでの手法が利益を生まなくなる。
そのギャップに気が付いたときには、手当てのしようがない。
そんな日本を象徴しているような五輪。

足元のリスクテイク(たとえば人の入れ替え)は、
長期的なリスクヘッジとなり、
足元のリスクヘッジばかりに気を取られれば、
大きなリスクが蓄積し、いずれそれが顕在化する。

常に新たな空気を、組織にも社会にも政治にも
循環させることが、長期的なリスクヘッジとなりうる。
つまり、成功を掴んだ人間は、さっさと引退すべし。
成功体験は、後の大きな失敗を生むからだ。
一方失敗体験は、後の大きな成功の糧となる。

話はちょっと発展するが、
たとえば企業において、
組織運営のシステムとして「権限委任」を
高らかに叫ぶ企業やその代表者が居る。
彼らは、形式上権限委任をするが、
権限を委任された者が、失敗をしそうな行為に走ると、
権限を委任したはずの者が、それを食い止めてしまう。
これでは、事実上、権限委任になっていないばかりではなく、
新たな権限者に「失敗」という経験を与えることができない。
よって、人は育たない。
人が育たないから、いつまで経っても、
ご年配がノサバル。
この循環を断ち切らなければ、何も改革できない。

以上のことは、年配者に対するリスペクトを
無視した内容に聞こえるかもしれないが、
彼らに対するリスペクトとは、
それまでの彼らの努力に対するリスペクトが必要であって、
彼らを同じポジションにいつまでも置いておくことをもって、
リスペクトとすることでは、絶対にありえない。

17時、再び東京に引き返し、「スパ然」

21時、企業家赤石太郎氏のBDパーティーを兼ねた
月例パーティーに出席のため、芝浦は赤石太郎邸。

いつものように食と歓談に明け暮れていると、
ふと僕自身の悪い噂を耳にする。
どうやら、僕の昔の弟子である東大生カンクロウ君主催
「一期一会パーティー」が、
僕への献金パーティー化しているという噂。
「板倉は、学生に働かせて、ピンハネしている」
と言うことらしい。
かなりのショック。
元々、月5万円で、原宿という一等地にて、
彼の居住スペースとパーティー開催場所を
善意で提供していただけなのに・・・
もちろん現在は、何の関係もありません。
(自分の行いによる不幸②)

悪い事は、見えないところで熟成し、
あるとき目の前に現れる。
一方、良いことは、突然目の前に現れる。
そんな感じだろうか。
残念ながら、後者はこのところまったくない。

2月17日(日曜日)

10時、お決まりの「サンデープロジェクト」
このところ、政治に経済はつき物となる。
しかし、司会者の経済知識は非常に低い。
突っ込みもインタビューもできていない。
司会者がわからないのでは、視聴者もわからない。
そして、番組のバリューは下がる一方ではないか?
テレビ東京ワールドビジネスサテライトは、
その部分をコメンテーターに頼って、
一応の品質を保っているが、
「サンデープロジェクト」、
「ニュースステーション」の経済関連の取り扱いは、
ひどいものだと思う。
制作会社(実は、昨年僕もお世話になった)さん、
時代の潮流に合わせていかないとね。

2月18日(月曜日)

朝起きたら38度5分の熱がある。(不幸③)
早速母上より薬をいただき、
予定がないことを幸いに、寝る。

2月19日(火曜日)

12時、GMO社定例ランチミーティングのため、
渋谷はセルリアンタワー。

食後、GMO社代表熊谷正寿氏と僕は、
シガーが欲しくなり、ロビー内カフェへ移動。
カフェ入り口で、
「シガーを吸いたいのですが」と、
カフェのマネージャらしき人物にリクエストすると、
別のウェイトレス(A)の誘導でテーブルに着く。
早速シガーに火をともし、二人で薀蓄言いつつ、
シガーを楽しんでいると・・・・
先ほどとは別のウェイトレス(B)がやってきて、
「この席でのシガーはご遠慮いただいております。
シガーの場合は、あちらの席でとなっております」
とのたまう。
熊谷氏と僕は、二人で顔を見合わせ、
ウェイトレスの言うところの、
シガー喫煙席を見ると、そこには別の客。
再び二人で顔を見合わせ、最初に切り出したのは、
このビル最大のテナント(計3フロア、月の家賃で数千万円)
である熊谷氏。
「あの、僕たちは、入り口でシガーを吸うことを
断った上で、この席に案内されたんだけど」と
極めてまっとうなクレーム。
するとこのウェイトレス(B)
「この席でのシガーは、ご遠慮いただいています」
と同じ台詞をのたまう。
会話になっていない。
どうやら、このウェイトレス、
言葉が理解できないようなので、
僕がしっかり優しく説明する。
すると明らかにふて腐れた顔で、
「そうですか、わかりました」とか何とか言って、
立ち去るではないか!
ヒジョーに気分が悪くなったが、
そこはお互い30代も後半になるビジネスマン。
ホテルのオペレーションのまずさについて、
理論的に話しながら、再びシガーと会話を楽しむ。
すると、これまた別のウェイター(C)がやってきて、
ウェイトレス(B)と同じ事を言う。
さすがにぶっちぎれた我々、客である僕の手前もあって、
熊谷氏がついに言い出す。
「僕は、クレーマーではなく、
このビル最大のテナントであって、
あなたたちの指示に従って、シガーを吸っているんですよ」と。
するとこのウェイター(C)、
火に油を注ぐかのごとく、
「どのお客様にも、ご遠慮いただいています」だと。
そもそも、我々がホテルにとって、
どれほどの客であるかなど、関係ないことだから、
熊谷氏の発言には、あまり意味は感じられなかったが、
客に喧嘩を売るようなサービスの姿勢には、
正直、驚きを隠せない。
事の発端は、ホテルのサービス上の不手際なのに、
彼らの姿勢によって、
我々の方が、「言うこと聞かない品の悪い客」に
させられてしまっているわけだ。
その上、ふて腐れた顔を見せられ、
気分を悪くさせられ、肩身の狭い思いをさせられる。

出来立てのホテルだから、
完璧なオペレーションを期待するのはかわいそうだが、
客に対して、それもホテル側の不手際に起因することで、
ふて腐れた顔をするのは、オペレーションより
マインドの問題だからね。

はっきり言おう、このホテルのオペレーションは、
僕の経験上、最悪。
これでも数十%ほどの「サービス料」を取るとは、
はっきり言おう、「詐欺」である。
もしこの文章が問題で、
営業妨害でも、名誉毀損でも、
必要なら訴えていただきたい。
しっかり、対応しようじゃないか。
仮に、シガー喫煙席が空いていたら、
僕たちは仕方なく移動しただろう。
ただし、そのときはコーヒー代に
サービス料を追加して支払うのではなく、
コーヒー代から、
こちらからホテルへの「サービス料」を
引かせていただくけどね。

何度も言っているが、ホテルに対する高額の支払は、
そのサービスのためにある。
このようなホテルが営業を続けられると言うことは、
客にも原因があると思うのだ。
渋谷の高層客室に入り、
「キャ~、夜景がきれいでお部屋もきれい~」と
ハードウェアのみに喜びと満足を感じる客が、
チェックアウトのとき支払う明細に、
「サービス料XX%」の文字を見て何も感じないのだろうか?

それとも、西洋文化に対する日本人の劣等感が、
主張を言う自信を奪い、
ホテルの言いなりになっているのだろうか?
「バナナをナイフで上手に食べる作法」などという
馬鹿馬鹿しい「マナー」が流行したのは、
もう、過去のことだと思っていたのだが。

ある(チップ制度のある国の)外国人が言った言葉を思い出す。
「何もサービスされていないのに、
なぜサービス料がチャージされているんだ」と。

以上(自分の行動に依存しない不幸④)

19時、広島のボークンK氏と久々の食事会のため赤坂。
熊谷氏とも面識のあるK氏に、先ほどの顛末の話。
月に10日前後、日本はもとより、
世界各国のホテルに宿泊するK氏も、
この話には、唖然。
そして、世間話。

体調が悪く、一次会でお暇。

2月20日(水曜日)

13時、元JJ専属モデル、
現モデル兼美容アドバイザーの高世明美女史
http://www.akemi-takase.com)の紹介で、
以前「腸内洗浄」でお邪魔した「ノエル・クリニック」
http://www.noel-clinic.com)に、再び訪問。
この病院、船堀についで、
銀座は並木通りルイヴィトン前のビル
(Mカルロのビル)3Fに進出。

クリスマスムード(「ノエル」はフレンチでクリスマスの意)
たっぷりの内装は、船堀と変わらず。
白で統一されたロココ調のレセプションでは、
「マツモトキヨシ」のTVCFでおなじみの
望月知子女史
http://www01.vaio.ne.jp/tomoko-m/
が訪問者を出迎えてくれる。
この日は居なかったが、元オールナイターズ司会者、
吉田美江女史をはじめ、
綺麗どころのレセプションガールは、総勢6名!
で、ここ銀座ノエルは、船堀と違って、
女性専用ではないのでぇ~す!
また、このノエル、最近好調で、
新宿パークハイアット、広尾有栖川公園前、
外苑前にも続々展開予定だそうだ。

早速、美容外科の保志名勝先生に挨拶。
彼は、銀座の名門「十仁病院」に21年在籍し、
執刀経験はおよそ7万件!というベテラン。
(高州クリニックの院長でさえ3万件という)
早速「疲れると、一重になって、困るんです」と
相談すると、その場でなにやら針のようなものを持って、
ちょこっと僕のお目目をいじくる。
すると、自分で言うのもなんだが、ちょっといい男。
今話題の「プチ整形」ということになるが、
さすがに僕が整形とはねぇ・・・やめとこ。
でも、この程度の「プチ整形」なら、
自分に自信を持てるという意味で、
特に女性には、お勧めです。

15時、大阪での講演
(主催者の意向により情報開示できません)のため、
東京駅より「のぞみ」で新大阪。
タクシーで今日の宿泊先「ザ・リッツ・カールトン大阪」。
ビジネススクールのケーススタディーに使われるほどの
ホテルオペレーションを徹底しているこのグループ。
期待が高まる。

車寄せでは、予想通り、ベルボーイが走り寄り、
荷物をさっさと持って、名前を聞く。
「板倉 雄一郎です」と答えると、
その情報は、いつの間にかフロントへ。
さすがです。

早速、フロントでちょいと意地悪。
チェックインが終わって、部屋への案内を待っている隙に、
フーラフラと、ロビー周辺を探索。
2,3分経ったころ、フロントに戻ると、
ベルボーイとフロントマネージャらしき人が、
僕のカバンを持ち、慌てふためいて僕を探している。
さすがです。
いんちきホテルなら、姿をくらましたこちらのほうが、
文句を言われるところ。

19時、欧米基準で作られた天井の高い廊下を抜け、
まずは得意の「フィットネス・クラブ」。
「スパ然」とは比較にならないが、
一般的ホテルのフィットネスとしては、○。
しかし、外の景色(ビルだらけ)と、
サウナおよびジャクージの狭さには「?」
1000Mほど泳ぐ。

20時、いったん部屋に戻り、次はバー。
入り口で「シガーを吸いたいのですが」と、
「念のため」伝え、テーブルに案内される。
すると勝手にシガーリストとメニューリストが
出てくる。
「モンテクリストNo2」と「コニャック」を
オーダーし、明日の講演内容を作成する。

店内は満席。
4名ほどのウェイトレスは、
作業がなくとも、突っ立って店内を眺めることなど、
一瞬もない。
常に、ぐるぐると店内を歩き、客のリクエストを
拾うように勤めている。

1時間ほど経ったころ、僕のコニャックが底をついた。
すると、数十秒でウェイトレスが現れ、
「いかがいたしましょうか?」と尋ねる。
もっと飲みたかったが、またちょっと試してみた。
「いいえ、結構です」と答え、タイピングを止め、
あたりを観察する。
すると、入れ替わり立ち代り、
先ほどとは別のウェイトレスが
僕のテーブルの前を通過するが、
空になったグラスに目を留めても、
オカワリの催促は無い。
そのまま、30分ほどで、
チョコレートのサービスを受けるが、
コニャックについての勧めは無い。
さすがである。
どうやって情報共有をしているかは定かではないが、
非常に満足する。
もしホテルのオペレーションに興味が無ければ、
彼らの努力などまったく気が付かないだろう。
これぞサービスである。

セルリアンでは、クレームのオカワリ、
リッツでは、客の望まないものは、催促もしない。
大きな違いだが、サービス料は変わらない。
この差を、客が評価し、客が選別することによって、
初めて良いサービスが実現し、
結果として、我々利用者の得となる。

良いサービスとは、サービサーが客に合わせることであり、
悪いサービスとは、客がサービサーに合わせることを強いる。

23時、部屋に戻り、再び明日の準備。

2月21日(木曜日)

10時、リーガグランドホテルにて講演。
事前図書として「社長失格」と「敗者復活の経営学」が
選定されていて、
聴衆すべての方の感想文を頂く。
「リスクテイクとリスクヘッジ」を振舞う。
聴衆が真剣なら、こちらも真剣。
聴衆と僕の勝負といったところか。

14時、復路。

16時、2月7日の和歌山講演の移動中、
NH機内にて一目ぼれした客室乗務員の
調査完了との連絡が、クルー友達から入る。
うれぴぃ~!
早速、僕の名刺を渡し、先方のメルアドなり、
ケータイ番号なりを入手するべく、再度指示。
結果が楽しみでございます。

17時、「スパ然」
結局今日一日で、東京と大阪のホテルプールとなる。

19時、スパ然のマネージャに捕まり、世間話。
ちょうどいい、リッツの印象を細かく伝える。
ホテルのオペレーションについて話が盛り上がり、
1時間ほどの会話。
何かの足しにしてくれれば幸いである。

21時、いつものお食事会パイレーツとお食事会のため、
西麻布は「カサ・デル・ハポン」の個室。
出張と泳ぎすぎの僕は、いつものような押しが無く、
いつもとは逆に皆さんにいじめられる(?)事となる。
たまにはいいね、こういうのも。

ホテルオペと、度重なる不幸(?)と、
講演の疲れのせいか、いつものメンツの顔を見て、
ほっとしたのかもしれない。

基点になる場所、帰る場所、
そんなところがあるから、人は活躍できるんだね。
めずらしくそんな思いをさせられるお食事会でした。

と言うことで、今週は長くなりましたが、
読者の皆さんが潜在的に思っていることに対する、
少しでも刺激となれば幸いでございます。

そして最後の不幸⑤
この号の期間ではないが、2月22日金曜日
(つまり、これを書いている日)
僕の愛犬雄太君が、庭で遊んでいる最中、
今まで聞いたことの無い悲鳴を上げる。
駆け寄って見ると、右足を引きずり、
悲鳴を続ける。
あわてって車に乗せ、病院に連れて行き、
レントゲンを撮った結果、右ひざの靭帯損傷。
僕自身、スキーで靭帯を損傷までは行かないが、
伸ばしてしまったことがある。
それはそれは、激痛だった。
あの1分間ほど続いた悲鳴、わかる。
さぞ、痛かったのだろう。
代わってあげられない辛さ・・そんなことをはじめて知る。

1週間以内の手術が必要ということだが、
先月、腫瘍の切除のために手術したばかりなのに、
また同じ右足の手術。
かわいそうで仕方ないが、仕方ない。

仕事は順調、しかしプライベートで不運が続く。
なにか御祓いが必要なのではないだろうか、
ここ最近。

板倉 雄一郎
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