板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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「懲りないくん」2001年5月27日号(17)

今週は、デートとパーティー復帰号。

5月20日(日曜日)

終日、犬の散歩と家事手伝い。

5月21日(月曜日)

16時、元ハイパーネットの営業No1、前野欽也氏来社。
彼の新たな会社、YD社のコンサルティング。
この会社、特殊な国内旅行に焦点を絞ったビジネスモデル。
なかなか良い。
ボトムアップ的ビジネスプランをトップダウンに変更の指摘。
この指摘は、主に資金調達や提携先募集のための
プレゼンテーションに的を絞ったもの。

そもそも、この国のビジネスマンはプレゼンテーションが下手。
その主な理由は、二つある。
一つ、ビジネスプランを積み上げ式(ボトムアップ式)にしている。
二つ、相手に何をもたらすかを中心にしている。

一つ目について、
学校の授業なり、上司から部下への説明なら、
相手に話しを聞くモチベーションがあるから、
順序だてて話せば良い。
しかし、投資家への資金調達や営業上での売り込みの場合、
相手は、その話を聞くモチベーションも義務も最初は無い。
これは、女性を口説くときも同じである。
この場合、最初に持ってこなくてはならないのが、
「相手が興味を示すポイント」である。
事業の全てを話そうと、一から十まで話す前に、
事業のポイントとして、
相手が興味を示す部分を最初に伝えることによって、
「相手の脳みそに、記憶の領域を確保」しなければならない。
そして、相手の興味の部分だけを詳細に説明する。
いつしか相手は、事業全体について、
詳細な知識を得る事ができる。

女性を口説く場合だって、
相手に興味と疑問を沸かせるような、
自分自身のポイントを話す事からはじめよう。
つまり最初のワンフレーズで、
彼女が「えっ、それじゃ、あなたは・・・・なんですか?」
っと質問が出るようにね。
「興味」とは、「記憶の準備」に他ならない。

二つ目について、
これは、多くの人が勘違いしている事で、
相手に何をもたらすかというプレゼンテーションは、
主に、TVCFなどの大衆に対する告知活動に向いている。
しかし、投資家への資金調達のためのプレゼントなると、
話は全く逆で、
「自分は何者で、いつ頃までに、どうなって居たい~
そのために、これこれは持っているが、金が足りない~
あなたのお金を投資して欲しい」
とした方が僕の経験から言うと効果的である。
投資家は、自己責任において投資活動をしているから、
投資対象が、どんな人間で、どこへ行こうとしているのかに
興味があるわけ。
そして、投資家自身のリスクとリターンは、
彼らが勝手に計算するわけ。

女性に対しても、同様ではないかと思う。
つまり、「相手に何を提供できるか」を伝えると同時に、
相手が、「それなら、私は、~を提供できるわ」っと
思わせる事が大切だと思う。
それを同時にこなすプレゼンテーションは、
すなわち、自分が何者かをディスクローズする事に
他ならない。

18時、「スパ然」

21時、実家の船橋へ戻り、PCワーク

5月22日(火曜日)

13時、「スパ然」に到着するも、ケータイが無い!
ケータイが無いと、デートのアポが取れない。
なので、仕方なくお台場から船橋まで、
わずか数十グラムの小さな無線機を取りに戻る。
1時間のロス。

不思議な事がある。
そもそもケータイは「居場所の自由度」を、
ネットは「コミュニケーション時間の自主的選択権」を
提供している。
どちらも、かなり普及している。
しかし、なぜ「交通渋滞」や「通勤ラッシュ」は
減る傾向にないのだろう?
新たに生まれた時間や自由度を、
さらなる金儲けに使うからか?
だとしたら、個人の幸せって、いつになったら来るの?

17時、グローバルNPO組織ビジネスの先駆けで、
ニューヨークに本社のある、アースセクター社
CEO金野策一氏と、「2年後」ミーティング。
資料となる本を4冊も頂く。
「本は書くもの」、
「TVは出るもの」
「講演は話すもの」のはずの僕が、
難しい本を4冊も読む事に。
トホホ。

18時、現在モデルのアルバイトをしながら転職活動中の
池尻在住、MG嬢とデートのため、
彼女を原宿でピックアップ。

お決まりの「第三春美」。
このところ、僕の紹介客が増えていると聞く。
嬉しい。
皆さん満足されたのか否か、是非教えて欲しい。

「鰹のハラスの炙り」そして、
ようやく出てきた「黒鮑の煮+塩」はサイコー!
この日の黒鮑は1.8Kg。
外房産の「黒鮑」は10月の初旬まで楽しめる。
是非お試しあれ!
予算が心配の方には、「つまみ」を飛ばして
「握り」からのスタートをオススメする。
「こしひかり」を上手に炊いたご飯もサイコーです。

20時、腹ごなしのため、MG嬢と本日2回目の「スパ然」。

22時、西麻布は「イピゼリ」。
彼女は、僕が2回も受験に失敗した、
最高学府を超える偏差値のICU卒。
しかし彼女の言動に、そんな気負いは全く無い。
無いどころか、拍子抜けするほど、おっとりしている。
おっとりしている印象があるが、実はせっかち。
一を言えば、十を理解できる彼女と僕は、リズムが合う。
僕の悪い口癖である「意味わかる?」が、
必要無いから出てこない。

23時、リズムが合うので、原宿の自宅へ。
「スタンドバイミー」を二人で鑑賞。

5月23日(水曜日)

昼、「ピザーラお届け」。
再び映画鑑賞。

15時、彼女を自宅に送り、昼間から寝る。

22時、「ニュースステーション」
「ハンセン病」の特集。
様々な忌々しい過去が、どんどん解けていく。
取り返せない事はたくさんあるだろう。
しかし、百%できないから何もしないのではなく、
できる事をする政府の姿勢を嬉しく思う。
なぜか一人で泣く。

人が生き、活動する根底的モチベーションは、
幼少期~青年期にかけて受けた、
様々な「トラウマの封印を解く」ということなのだろう。
誤解を恐れずにいえば、孫正義氏もハンセン病患者も
この視点から言えば、同一かもしれない。

ちょっと前「インナーチャイルド」という部厚い本を読んだ。
「自己の内なる旅」がすなわち人生への理解。
興味のある方にはオススメ。

人は、皆、「愛されたい」と思っている。
「愛されたいと思うことが、愛である」by John Lennon.
と言う事で、今週は「オマケ」として
米で連載中の「彼氏失格」2章を最後につけときます。

5月24日(木曜日)

13時、あるコンサル先の顧問弁護士とミーティング。
この人弁護士のくせに、議論が盛り上がると、
「おい、おまえ!」とか言い出す始末。
その暴言を指摘すると、理由は僕の暴言にあると言う。
僕は、僕のどの言葉が暴言なのかと問いただすと、
「そこまで覚えて居ない」という。
自分の過失を相手の責に帰する以上、責任を持ってもらいたい。
ホントに弁護士?っと疑いたくなる。
とっても気分が悪くなる。

僕は、顧問先に絶対にこびたりしない。
違うと思えば、それが原因で首になる可能性があっても、
「違う」とはっきり言う。
それが、本当のコンサルティングってもんです。

16時、某大手商社HD氏来社。
「プロジェクトML」とでもしておきます。

18時、「ほぼ日」の都合で掲載がストップされたおかげで、
「懲りないくん」をサボっていたが、いいかげん期限。
なので、書く。
でも、楽しい。
でも、15号よりパワーダウン。
ごめんなさい。

20時、カンクロウクンとドリームキャリア社のミーティング。

21時、YD社のコンサルミーティング。

5月25日(金曜日)

11時、「プロジェクトSS」のミーティングのため、
数年ぶりの築地は電通聖路加タワー。
NB氏のオフィスに出向き、数名に挨拶。
ランチミーティングのため、エレベーターを利用すが、
ぎゅうぎゅう詰のエレベーターに
電通恒産からの出向女性多数。
ラッシュに慣れていない僕は、ドキドキ。
隣接の阪急ホテル内で昼食。
「プロジェクトSS」は順調。

16時、「成蹊大学」で講演のため、吉祥寺キャンパス。
吉祥寺に位置するせいか、
なぜか学生の女の子があか抜けている印象。
「ベンチャー学」を振舞う。

19時、食通の宍戸教授に大学近くでお鮨をご馳走になる。
ついでに「第三春美」の紹介。
後日、レポートいただけるとの事。

20時、週末のお決まり「お食事会」
とあるベンチャー企業のOL、NS嬢をピックアップ。
深夜の首都高をドライブ。
お決まりの「イピゼリ」。

上智大学法学部卒の彼女は、「懲りないくん」の読者。
オマケに、三分の一は、サンマテオのオフィスに居ると言う。
サンノゼに宿のある僕には、とっても好都合。
スタイル抜群!
僕の好みの、ロリータ顔、かつ大人の香。

26時、NS嬢を青山の自宅に、お行儀よく送る。

5月26日(土曜日)

一日中、原稿とPCワーク。

18時、PCワークでなまった体を「スパ然」で修復。

22時、原宿に戻り、就寝。

と言う事で、今週は、仕事と遊びのバランスが良い週。
来週も、バランス重視で行きたいと思います。

~~~オマケのコーナー~~~

「彼氏失格」第2号
「愛とは愛されたいと思うこと(Love is to be loved)」

Aという女性と付き合っていたときの事である。
彼女に出会ったのは、六本木のクラブだった。
そのクラブでご指名ナンバーワンの彼女は、
中肉中背だが、ピンクや黄色の明るい色のスーツが良く似合う女性だった。
顔立ちは、僕の好みの目鼻立ちがはっきりしたタイプで、色白。
出会ってから1年程は、互いに引き合う気持ちがあっても、プライベートの時間を共にする事は無
かった。
互いに別の恋人がいたからだ。
先に恋人と別れたのは、彼女の方だった。
それを聞いた僕は、既に気持ちが終わっていた当時の彼女と別れた。
そして、二人はそれまで溜まっていた気持ちを行動に移した。
毎日のように会い、毎日のようにセックスをする。
出会ってからの1年間を取り戻すかのように、互いに会うための時間を最優先で作っていた。

そんな付き合いが始まって1週間後、僕たちは青山にあるペットショップに犬を見に行った。
そして、僕はゴールデンレトリーバーを衝動買いした。
以前から犬を飼いたいと思っていたわけでも、ショップに押し売りされたわけでもなかった。
犬をかわいがる彼女の姿を、ずっと見ていることができる、最も現実的な方法だったからだ。
犬がきっかけで、二人は白金の一軒家に暮すことになった。
「雄一郎」の「雄」の字を取って、雄太と名づけた。

同棲をはじめて1年目、僕は、彼女と雄太そして順調に成長する会社とその社員に囲まれて、幸
せな日々を送っていた。

同棲をはじめて2年目、僕たちは、2匹目の犬を飼い始めた。
お尻のかわいい、スタンダードダックスフント。
彼女の名前から「あきら」と名づけた彼は、二人のベッドに潜り込んでくるのが好きだった。

同棲をはじめて2年目の秋、僕の会社は、度重なる僕の経営判断ミスが原因で、急成長から一転、
倒産に向かってまっしぐらに転げ落ちていた。
日に15時間以上の労働、毎日やってくる金融機関の資金回収、相次ぐトラブル。
ロイヤルティーを示していた社員たちが、次々と経営者である僕に見切りをつけ会社を後にする。
経営支援を依頼した企業も、次々と事実上のNOを伝えてくる。
業界に当社と僕個人の悪い噂が流れる。
役員報酬も数ヶ月間ゼロが続いたから、私生活も苦しくなっていた。
家事専業の彼女も、同様に苦しい生活を余儀なくされていた。
そして僕には頼る相手が居なかった。
なにより、誰のためにこの苦境を乗り越えなければならないのかさえわからないで居た。

疲れ果てて家に帰ったある日。
僕はスーツを脱ぎ捨て、先にベッドに居た彼女の隣に滑り込んだ。
頭の中では、不安と恐怖がドロドロの血の海の中で混ざり合っていた。
それでも僕は、ほんのわずかな可能性を積極的に見つける事によって、
その海と一人戦っていた。

「お帰りなさい」彼女は僕に目を合わせずに言った。
「ただいま」僕は自分の辛さを悟られないように平然を装った。
僕は企業のトップなんだというプライドから平然を装ったのではない。
苦境で混乱しているときほど、感情を捨て、客観的に物事を進めなければならないという、
長年の経営者としての経験が染み付いていたからに過ぎない。
平然を装うことによって「慰めや励ましが経営危機から開放してくれるわけではない」と自分に言
い聞かせていたのかもしれない。

しばらく悶々としていると、突然彼女が動いた。
こちらを見ている。
2年近く同棲している彼女が僕を見る事は何百回とあっただろう。
しかし、このときの彼女の視線に、なぜか僕は動けなかった。
僕の右側に寝ていた彼女は、左手を僕の方にゆっくりと寄せる。
そして、僕の頭にやさしく当て、ゆっくりと撫でる。

幼い頃に体験した「陽だまり感」が蘇る。
ドロドロの海がどんどん小さくなっていく。
肩らか腕にかけて硬直していた筋肉が、深呼吸した時のように、
開放されてゆくのを感じる。
嬉しい。
なぜか涙が出そうになる。

僕は何も表現しなかった。
慰められるその行為に甘える事をプライドが許さなかったわけではない。
ましてや女性に愛撫されて硬直するような性格でも間柄でもない。
あまりにも遠い過去に味わった感情に、どう対処すれば良いかわからなかったからだ。
自分の感情の高ぶりに、それまでの自分が何を求めていたのか初めて悟る。
励まして欲しかった。
慰めて欲しかったのだ、と。

僕は愛情に飢えていた。
誰かのために危機を乗り越えたいという自らの愛情。
そして、愛されたいと思う愛情。

沈黙と陽だまり感をさえぎるように彼女が言った。
「あっ、ごめん、あきらのお尻かと思った」
暑かったのだろう、あきらはベッドから抜け出して、雄太と一緒に床に寝ていた。
彼女は左手を布団の中に戻した。
そして、僕は現実に引き戻された。

数週間後、僕は彼女に別れを告げ、白金の家を引き払い、実家の船橋へ
雄太とあきらと共に引っ越した。
彼女は、母親の元へと越して行った。
起業家として、そして彼女の恋人としての、線を引いた日だった。

数年後、雄太とあきらを連れて彼女に再会した。
彼女は一児の母になっていた。
僕は数年前のある夜の出来事を彼女に話してみた。
すると彼女は、しばらく考えた後にこう言った。
「私、本当にあきらのお尻だと思って触ったのかな」
そういう彼女は、どこか寂しそうだった。

本当の事はわからない。
というより、真実なんてどうでも良いことだとも思う。
当時愛情に飢えていた僕は、それを正直に訴えることができなかった。
彼女に対してだけではない。
社員に対して、取引先に対して、そして両親に対して。
その根本的な原因は、僕に愛が無かったからだと思う。
愛されたいと思う愛、が無かったからだと思う。

板倉 雄一郎
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