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KISS 第101号「日本駐車場開発は太っ腹?」

日本駐車場開発、社長の保有株「ただで譲渡」ということです。
7月31日時点で株式を保有する投資家に対し、同社社長の持分を無償で譲渡(20株に対し1株)。

で、株価はストップ高というわけです。

さて、このオペレーションで、株主価値はどう変わるでしょうか?
少なくとも、このオペレーション「そのもの」では・・・
1、 発行済み株式数に変化はありません(一株辺りの価値に変化なし)
2、 この会社の将来キャッシュフローに変化はありません(業績に変化なし)
3、 株主資本コスト(Ke)には、もろもろ考えた結果、変化はないか、むしろ少しだけ投資家の期待を煽ってしまった分、上昇するでしょう。

以上から、時価総額を担保する株主価値に変化は無いか、Keの上昇分だけ株主価値は下落するでしょう。

このオペレーションは、要するに、新規に同社への投資をしようとする者にとっては、5%(20株に対して1株)ほど、同社の株式を安く買えるということであり、既に同社の株主になっている者にとっては、現在の保有比率が5%ほど増えると言うことです。(間違っても、保有比率に5%が足されるのではなく、保有比率が5%アップするというわけですからね)
その安くなる分は、大株主の同社社長が経済価値(=同社の株主価値)を無償で提供するということです。
つまり、企業価値には特に関係なく、単に株主同士の資金移動ということになります。
ですが、この発表を受けて、既に、5%(=安く買える分)以上、株価が上昇しています(爆笑)

株価が上昇するということは、時価総額が上昇すると言うことです。
仮に5%ほどの株価上昇で落ち着くとすれば、同社の時価総額は、昨日の終値18,890円にて、およそ700億円ですから、5%の上昇で、35億円!も時価総額が上昇します。
(僕は、個人的に、700億円の時価総額は、同社の予想される「投資家に帰属するキャッシュフロー」から考えて、既に相当に高いと思いますが)
しつこいようですが、時価総額を担保する株主価値に変化が無いか、もしかしたらKe上昇分だけ株主価値が下落するのに、35億円も時価総額が上昇してしまいます。
面白いですね。
さて、8月1日以降のこの企業の株価は、一体どうなるんでしょうか?

同社社長の持ち株比率は、このオペレーションによって、38.1%から、35.6%に、2.5%減少(持ち株数の減少幅は6.5%)するということ(←日本経済新聞より)ですが、一方で、株価は、(少なくとも今日現在では)それ以上上昇しているわけですよね。
これも、面白いですよね(笑)

僕の意見ですかぁ?、このオペレーションは、期待収益率の高い短期投機家を呼び込んでしまうのではないでしょうか・・・ってことは、同社の株主資本コストは上昇するってことです。
結果、「少なくとも中期では」、時価総額は減少すると思います。

いえいえ、このオペレーションが、良いとか悪いとか、そういうことを言いたいのではなく、ただひたすら短期の相場は、不思議な投資判断の投機家によって形成されるのだなぁ?思うだけです。
MSCBとは違って、株主価値を毀損するわけではありませんけどね。

ケーススタディーとして、この会社の株価の先行きが楽しみです。

ブクブクブクブク?(←これ泡ね)

2005年7月14日 板倉雄一郎

PS:
なんだか、今回のオープンセミナーは、出だしが悪いです(トホホ)
まあ、参加いただける方が、少なかったら、少なかった分、濃ぃ?セミナーにしますけど。
でもなぁ?、やっぱり寂しいから、是非いらしてくださいね。
よろしくです。





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