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KISS 第82号「財務指標」

PER(=Price Earning Ratio=株価収益率)、
PBR(=Price Book value Ratio=株価純資産倍率)、
PCFR(=Price Cash Flow Ratio=株価キャッシュフロー倍率)、
EPS(=Earning Par Share=一株あたり利益)、
ROA(=Return On Asset=総資本利益率)
ROE(=Return On Equity=株主資本利益率)

これらの指標に共通することはなんでしょうか?



は、






す。

「企業の経営指標だろう」・・・確かにそうです。
「企業の経営効率を示す値でしょ」・・・確かにそうです。
しかし、「投資家が、最も頼りにする指標」では、絶対にありません。
なぜでしょうか?

最初に結論を書いてしまいますが、世界中のどの市場においても、上記の指標と、当該企業の時価総額の推移には、「ほとんど相関はありません。」
つまり、上記の指標は、投資判断において、「あてにならない」ということです。

上記の、いくつかの指標に共通するのは、これらの指標は、
「ある企業の『単独期』の指標」でしかないということです。

当たり前のコンコンチキですが、投資家から見た企業価値(=株主価値+債権者価値)は、当該企業が将来生み出すであろうネットキャッシュフロー(および非事業用資産)によって担保されています。
つまり、簡単に言えば、時価総額や企業価値とは、当該企業の「将来性を織り込んだ数値」です。
そうでなければ、世界中のあらゆる企業の時価総額は説明不能です。
今から将来にわたる企業の業績が織り込まれるのが、事業価値であり、事業価値と非事業用資産の合計が投資家から観た企業価値です。
よって、単独期の指標のどれとどれを組み合わせようが、時価総額や企業価値の「割高、割安」や、その後の推移を予測する指標とはなりえません。

ただし、短期の株価推移に関しては、上記の数値を信じている短期トレーダーによって株価が形成されますから、必ずしも「あてにならない」とはいえません。
しかし、資本市場は、不思議なことに、そんな短期トレーダーによる短期の株価形成は、あっという間に、長期の企業価値に飲み込まれていきます。
結果、長期での企業価値は、当該企業が生み出すネットキャッシュフローに担保された周辺の値に収まるのです。

投資家から見た企業価値とは、すなわち当該企業の「あるべき価格」のことを示します。
あるべき価格ということは、すなわち企業価値を、キャッシュに置き換えた場合の「あるべき価格」というわけです。
キャッシュに置き換えて企業価値を計るわけですから、その因数は、当然ながら、キャッシュであるべきです。
よって、投資家から見た企業価値を担保する根源は、当該企業が生み出す「投資家に帰属するキャッシュフロー=ネットキャッシュフロー=フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの和」以外にありません。

投資家でなくとも、当該企業のステークホルダーにとって、最も関心があるのは、キャッシュです。
キャッシュが無ければ、家賃も、人件費も、原材料費も、税金も支払うことが出来ません。
会計上の利益では、御飯(おまんま)食べられないと言うことです。

確かに将来は不安定で、予測困難です。
しかし、だからと言って、将来業績を無視すれば、あらゆる国のあらゆる企業の時価総額の説明は不可能です。
投資とは、常に、将来の見通しにより行われます。
その時点での価値とは、その時点から将来を予測した結果得られるのです。

SMUの頃から既に書いたことばかりを、また、書いてしまいました。
でも、大切なことなので、何度も書きます。

じゃあ、「将来の業績予測の仕方はなんだ!?」ですかぁ・・・
結論から書けば、「温故知新」です。
過去の業績の『推移』(であり、過去の単独期の指標ではありません)から、その企業の「儲けパワー」を計算することが出来ます。
特に重要な指標は、「投下資本利益率」の「推移」であり、「資本コスト」の「推移」です。
続きは、また明日。
どうしても、早くすべてを包括的に知りたければ、その分の時間とキャッシュを支払って、セミナーに来てください。
どんなに、このエッセイを読み込んでも、セミナーの「インタラクティブ」&「ライブ」には、かないません。

2005年6月8日 板倉雄一郎





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