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KISS 第91号「買収防衛策&セミナーランナップ」

<KISSの読破力(=僕の表現力)>

セミナー中に、毎度感じることですが、セミナーにお越しいただく方々は、あたりまえですがKISSの読者の場合が多いわけです。
ところが、既にKISSで表現したことをセミナー中に公開質問をしても、なかなか返答が帰ってきません。
たとえば、こんな質問をします・・・
「有利子負債の資本コスト(=金利)は、会計上の利益に影響を及ぼすが、株式の『株主資本コスト』は、どのようなカタチで現れるか?」
もちろん、その答えは、「株主価値(≒時価総額)に影響を及ぼす」です。
ですが、これがなかなか・・・・

多くの卒業生は、
「セミナー後に、再度KISSを読むと、その行間も含めて、すごく理解が深まる」
または、
「実は、KISSのエッセイがゴールであり、セミナーはそれを読み解くための知識」
と感想を述べられます。
そう言われれば、確かにそうですね。
KISSは、もっと簡素に、わかりやすく、題名どおりの内容に出来るように精進いたします。

<買収防衛策>

制度による防衛策など、経営者の怠慢を招くだけです。
最も、現実的で、合理的な買収防衛策とは・・・
「全うな経営」以外にありません。

全うな経営によって、その価値に対して高くも安くも無い適切な価格(=時価総額)を維持できれば、誰も敵対的買収をしようとは思わないからです。
全うな経営とは、当該企業の経済価値創造を効率的に行うために、あまねくステークホルダーに対して、最適な経済価値配分を行うことです。

その価値に対して安すぎる価格で商品を提供している企業があれば、多くの人は、顧客としてその企業に接しようとは思いますが、そのツケが回る株主には成りたがりません。
また、その価値に対して高すぎる価格で商品を提供していれば、多くの人は、顧客にはなりたがりませんが、その益を享受できる株主にはなりたがります・・・が、長く続かないとなれば、一時的な投機家しか集まりません。
このバランスを効率よく実現できる経営者が経営にあたれば、顧客にとっても、従業員にとっても、取引先にとっても、継続的なWin2Winの関係を維持できます。
そのような企業には、価値判断の出来る投資家が、株主や債権者としての関係を求めます。
結果、高くも安くも無い時価総額が形成されます。
この場合、誰も、敵対的な買収など考えません。
もし、その上で、Win2Winを求め、買収を提案する第三者が現れれば、双方の株主が、株主自身の便益を考慮し、合理的な判断がなされるはずです。
この場合、買収が実現しても、「敵対的買収」とは、なりえません。
買収防衛策は、無能な経営者の自己保身に過ぎません。
(↑、まあ、かなり限定的な表現ですけれど)

しつこいようですが、敵対的買収を受けるということは、すなわち、その企業が持っている本来の価値に対して、価格(=時価総額)が不当に安いことに、賢い投資家が目をつけるということです。
本来持っている価値とは、現在の経営者より、優れた経営手腕を持った経営者によって経営されることによって得られる価値のことです。
(つまり、現在の経営者がアホな場合に敵対的買収が行われるというわけです)

企業価値を決定する大きな要素は、将来キャッシュフローおよび資本コストです。
将来キャッシュフローを増大させるためには、経営資源を効率よくキャッシュに結びつける経営が必要であり(=投下資本利益率の上昇)、資本コストを低減するためには、経営者に対する市場からの信頼を得ることが必要です。
経営者が、市場からの信頼を得ることができれば、短期投機家の異常なまでの期待収益率(=企業にとっては、株主資本コスト)を排除でき、当該企業に対するリスク認識の低い投資家が株主の大部分を占めることになります。
結果、当該企業の株主資本コストは低減され、企業価値は増大し、少なくとも長期では、時価総額が適正水準(=敵対的買収の経済的価値が無くなる範囲)に収まるわけです。

「敵対的」という言葉は、その主語が現経営者ですから、経営者が敵対的買収を避けたければ、経営者が全うな経営を学び、実施することが最も合理的です。

バークシャーハザウェイ社を「欲しい」とは思います。
しかし、バフェット氏以上に効率的で安全な経営を出来る経営者を用意できればの話しですが。
(おっと、その前に、20兆円以上のキャッシュが必要でした(笑)・・・用意できなければ、用意できる範囲で、同社議決権の一部を手に入れるという方法があります・・・この場合、バフェット氏もセットで付いてきますよ。)

2005年6月27日 板倉雄一郎

PS:
楽しかった(←いつもの台詞)
でもって、とっても疲れた(←これもいつもの体調)
週末は、当事務所主催「実践・企業価値評価シリーズ」合宿セミナーでした。
今回の講義用評価企業は、「東京製鐵」、ワークショップ用の評価企業は「吉本興業」。
今回も、30名ほどの受講生、15名ほどの卒業生、そして8名の当事務所パートナーと共に、濃いぃ?2日間でした。

毎度のことですが、どういうわけか、受講生の皆さんは、ナイスガイ(←ルックスという意味ではなくてね(笑))&レイディースぞろい。
いつものように、「やってよかった!」が僕の主な感想です。

デイトレードを一人ぼっちで続けていたある受講生は、自分の投資活動が社会に対する価値提供につながるバリュー投資に出会い、且つ仲間ができたことによって、「救われた」というような表情をしていました。感慨無量です。

遠くは、北欧スウェーデンをはじめ、日本各地からこの二日間のために参加いただいた方々に、この場を借りて、お礼をお申し上げます。
楽しい時間をありがとうございました。
(最近、ご夫婦での参加が、増えております・・・いい感じです。)

次回は、7月16?17日です。
既に10名を超える方々からのお申込を頂いております。
ご興味のある方は、是非。





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