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KISS 第54号「フジテレビ&ライブドア和解」

「和解」だそうです。

ライブドアのメリット・・・
「無料パブリシティー効果」以外、ほとんどありません。
まず、
「1000億円突っ込んで、1400億円になった」などと、
気が遠くなるほど「おばかさん」な発言が、メディア上にあります。
正確には、
「1000億円突っ込んで、1000億円戻ってきただけ。」ですし、
この取引に関わる「取引手数料」の損失が発生しています。
(つまり、この取引に関する投下資本利益率は、
ほぼゼロかマイナスです。)
また、400億円分は、フジテレビを割当先にした「増資」なのであって、
資金の代わりに、ライブドア自身を「切り売り」したというわけです。
それも、MSCBによる800億円の調達時点での株価より、
かなり低い株価での増資です。
この400億円は、間違っても「儲け」ではありません。
ライブドアは、今後、フジテレビの出資分のために、
働かなくてはならないということです。
増資とは、そういうものです。

MSCBの発行前の株主(が残っているかどうか疑問ですが(笑))にとっては、踏んだりけったりと言うわけです。
堀江君は、資本市場を、馬鹿にしすぎです。

また、「無料パブリシティー効果」は、
その効果によって得られたライブドアの知名度、および、
同社WEBへのアクセス数の増加を、
「キャッシュに変換」できて始めて企業価値の上昇になるわけです。
これは、どうなるか僕には、わかりません。

さらに、「業務提携に関する委員会の設置」については、
僕には全然わかりません。
が、
「著作権が複雑に入り乱れた過去のテレビ番組」のネット配信は、
そう簡単なことではありません。
仮に、フジテレビ側が「OK」と言ったところで、
タレント事務所やスポンサー企業の了解が無ければ実現できません。
それらが実現できたとしても、ネット配信の度に、著作権保有者に対して相当のロイヤルティーを支払う必要が生じます。

そして最後になりますが、MSCBの発行や、今回の増資で、
ライブドアの株主資本コストは、「非常に高く」なっています。
さて、その非常に高い資本コストを上回る投下資本利益率を得る事業を今後展開できるのでしょうか?
それが出来なければ、少なくとも長期では、ライブドアの時価総額は、減少します。
どうなるかは、僕にはわかりません。

フジテレビのメリット・・・
何かあるのでしょうか?
ニッポン放送株の買戻しに、色を付けず、増資としたところが、ちょいと大人です。
しかし、金を使い過ぎです。

ということで、この騒動で得したのは・・・
NHK・・・自分の問題が、吹っ飛びました。
その他メディア・・・視聴率や発行部数が増えました。
リーマンブラザース証券・・・ライブドアの株主の犠牲分、儲かりました。
ええと、そして、僕・・・ありがとうございました。

2005年4月18日 板倉雄一郎 (臨時掲載分)

PS:
「朝まで生テレビ!」でご一緒させていただいた永沢弁護士は、「資本コスト」について、勉強してください。法務を知っているだけでは、企業は語れません。





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