板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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KISS 第45号「担保」

僕が、大手企業に訪問したり、電話をかけたりする時のことです。
僕は、
「板倉雄一郎と申します。いつもお世話になっております。
?●×部署の■▲さん、いらっしゃいますか?」
と、電話口の方にお伝えします。
すると、電話口の方は、
「どちらの板倉様でしょうか?」と聞かれるので、
「どちらでもなく、板倉雄一郎と申します。」と答えます(笑)
(だって、本当だから、仕方ないんだもん)
電話口の方は、「しかたなさそうに」電話を繋いでくれます。

顧問先企業に電話したときに、同様の反応がある場合、
僕は、「御社の顧問の、板倉雄一郎です。」
と答えたりもします。
慌てて繋いでくれます。

(誤解を恐れ、書いておきますが、
「俺の名前を知らんのかぁ! このフトドキ者めぇ!」
と言う意味ではないですので、あしからず。)

で、この無駄な時間を回避するために思いついた方法が、
「板倉雄一郎事務所」なる任意団体の名称です。
(板倉雄一郎事務所は、現段階で任意団体であり、納税は個人で行っています。もちろん、セミナーなど事業届出はしています。)
この「組織名称」の効果は絶大です。
「どちらの板倉様ですか?」との問に、
「板倉雄一郎事務所の板倉雄一郎です。」と答えると、
不・思・議・な・こ・と・に、「少々お待ちください。」と、
すんなり繋いでくれるのです。
笑ってしまいますよね(笑)。

「板倉雄一郎事務所の板倉雄一郎」では、板倉雄一郎という個人を担保するのは、板倉雄一郎事務所ということになり、板倉雄一郎事務所を担保するのは、板倉雄一郎という個人であって、条件循環(=ループ)を起こすだけで、実は何の解決にもなっていないのです。
なのに、電話口では、すんなり繋いでくれるのです。
世の中不思議なことが、たくさんあります。

株式の「価値」を担保するのは、当たり前ですが、
当該企業の株主価値(=企業価値―純有利子負債)です。
当該企業の企業価値を担保するものは、
当該企業が将来生み出すであろう純現金収支(=ネットキャッシュフロー)を、
当該企業の資本コストで、現在価値に割り引いた総和です。
(この辺は、セミナーに来ていただければ、しっかり理解できるはずです。)
一方、「株価」を担保するのは、必ずしも当該企業の株主価値ではありません。
主に、(特に投機家にとっては)市場の株価形成が担保しています。
これが、価値と価格の違いであり、
株価に対する「投機家」、価値に対する「投資家」と、僕が分類する根拠です。
しつこいようですが、株式投資で利益を得るためには、
「支払った株価以上の価値を手に入れる」といことになります。
この考えの下では、株式投資における利益は、俗に言う「利益確定=買った株を売る行為、または、売った株を買い戻す行為」の時に発生するのではなく、「投資した瞬間」に確定されるのです。
利益確定によって、初めて利益が得られると考えるということは、すなわち、「現金に置き換えなければ、価値を算定できない」ということを意味します。
しかし、「現金そのもの」は、価値を創造しません。
少なくともインフレ状態では、紙幣の価値は、どんどん減少していくだけです。
デフレの場合でも、運用した場合と比較した「機会損失」が発生します。

話し戻しますね・・・

情報を担保するのは、その情報の表現者(新聞であれば、新聞社、TVのコメンテーターであれば、そのコメンテーターなど)に対する、社会からの信頼です。
表現者は、事実に基づく情報を表現し続けなければ、社会からの信頼を損ね、自らの活動が出来なくなってしまうというリスクを背負っているわけであり、そのリスクを社会がしっかり見張っているという相互担保によって成り立っています。
表現者によって担保されない「匿名情報」には、全く価値が無いとは言いませんが、ほとんど信用に足る根拠はありません。表現者が特定できない情報に対して、それを受け取った人の自己責任を問えるはずもありません。

その人物の価値を担保するのは、その人物の過去の言動であり、
乗っている車や、
飛行機の座席クラスや、
持っているカードの色や、
着ている服やバッグのブランドや、
恋人の数や、
ましてや、どのようにして手に入れたのかわからない「金」ではありません。

さて、「日本銀行券」や「日本国債」を担保するのは、一体なんなのでしょうか?
皆さん、是非、考えてみてください。

少なくとも僕は、「日本銀行券」より、「トヨタ自動車の株式」を持っていることのほうが、遥かに安心できます。

(余談ですが、「プリウス」は、その価値に対して、価格が安すぎます・・・つまり「プリウスは買い」と言うことです)

2005年4月5日 板倉雄一郎 (Japanese by Nature) 

PS:
4月の「簡易・企業価値評価オープンセミナー」の受付は、
4月18日(月曜日)で締め切る予定です。
是非この機会に。
なお、5月からは、これまで同様、
「実践・企業価値評価シリーズ」合宿セミナーを開催予定です。
4月のオープンセミナー受講者は、5月以降の合宿セミナーの料金割引があります。
よろしくです。





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