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KISS 第111号「国債と税」

国債による借金も、税も、どちらも国民負担に変わりありません。
違いは、
税は、今日現在の国民に対する経済的負担であり、
国債は、後の世代の税負担という点です。

日本政府の借金(=国債残高)の債権者の大部分は、日本国内(=国民)ですから、対外的にデフォルトを起こす可能性は非常に低いわけですが・・・
仮に、日本国債に対する投資家から観た魅力が低下し、国債を売却する投資家が多くなれば、既発国債の価格は下落します。
国債のように、その将来キャッシュフロー(=国債の場合には、利払いおよび満期の元本)が確定している証券の価格が下落するということは、同証券に対する投資利回りの上昇を意味します。
国債の安定消化(=郵貯などによる国債の引き受け)が難しくなったり、国債の価格が下落し、利回りが上昇すれば、新発国債の表面利率も上昇させなければ消化できなくなります。
なぜなら、既発国債も新発国債も、その発行者(=債務者)は、どちらも日本政府であって、投資家から見たリスクは(期間の違いは多少ありますが)同じですから、新発国債は、市場の利回り程度の表面利率を提示するか、最初から価格をディスカウントしなければ誰も買わないってことになります。

以上から、ものすごくざっくり表現すると、政府財政のバランスを正常なカタチ(=少なくともプライマリーバランスをゼロにする)にするためには・・・
1、大増税によって歳入を増やす。
2、大幅に歳出を削減する。
これらを実施する必要があるわけです。

大増税無しに、国家財政のバランスを改善する方法があるんでしょうか?
少なくとも僕には、大増税を伴わない解決方法なんて、見当たりません。
よって、一国民として大増税(たとえば消費税、たとえば社会保障のコスト削減)を覚悟しています。
どの政党が政権をとろうが、以上の経済原則には、変化はありませんから。

さて、国債の債権者の大部分が国民だと冒頭に書きました。
一体国民の中の誰でしょうか?
つまり、国債を誰が引き受けているのかということになりますが、皆さん是非調べてみてくださいね。

また、こんなにも借金を作ってしまった(=後の世代にツケを回した)のは、一体誰でしょうか?
政府だとおっしゃる方もいらっしゃるでしょうけれど、本質的には、
その政府を選んだ国民であり、
国債が増加する期間に経済活動をしてきた国民であり、
以上のことに気がつくことが出来ない経済的教養の低い国民なのです。
この点、気がつきましょう。
気が付くことができなければ、あなたの子供や孫や子々孫々に、「あなたが税負担の上で楽をする分のツケ」が回るのです。

もし、それでも増税を行わないとすれば、YENを増刷し、増刷したYENによって国債を引き受ける以外の方法がなくなります。
このとき、YENの価値は低下します。
つまり、極度のインフレーションが発生します。
まあ、この方法でも、政府の借金をチャラには出来ますけどね。

2005年8月21日 板倉雄一郎

PS:
尾骶骨「骨折」と書いてしまいましたが。
単なる「打撲」です。
タイプが滑って「骨折」と書いてしまいましたとさ(ごめんなさい)
1週間経って、だいぶ良くなりました。
でも、椅子に座るのは、とても辛いです。トホホ。

PS^2:
8月27日開催のオープンセミナーは、明日22日を持って締め切ります。
今回も、予定人数の9割が確定しました。
ありがとうございます。
皆様にお会いするのを楽しみにしています。





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