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KISS 第12号 「3人でケーキを分ける方法」

ケーキを2人で分ける方法については、以前に書きましたよね。
「片方がナイフを入れ、もう片方が、選ぶ」というルールで解決します。

では・・・
設問「ケーキを3人で分ける方法を考えてください。」



は、










頭の良い人は、「この設問では定義があいまいであるからして、回答できない」などと考えるのではないでしょうか?
しかし、もっと頭の良い人は、こう考えるのではないでしょうか・・・
「そもそも、3人で分けるという言葉には、分ける方法に3人の同意が必要であるという前提が含まれている。」と。

よくある回答は・・・
Aさんが最初にナイフを入れ、
Bさんが二番目にナイフを入れ、
Cさんが最初に選び、
Bさんが次に選び、
Aさんが最後に残ったのを選ぶ。

一件、フェアで、喧嘩にならないような感じがしますが、問題があります。
Bさんのナイフの入れ方次第で、Aさんのケーキの最小化と、Cさんのケーキの最大化を同時にやってのけることが出来るのです。

では、
Aさんが最初にナイフを入れ、
Bさんが二番目にナイフを入れ、
Cさんが最初に選び、
Aさんが次に選び、
Bさんが最後に残ったのを選ぶ。

一件、解決しているようですが、やはり、前出の分け方と同様に、
「誰かが故意に、極薄ケーキ片を作ってしまうと、最後に選ぶ人がそれを拾うハメになるわけです。

さて、皆さん、解答できますか?











実は、僕、解を持っていません(笑)
少なくとも、二人でケーキを分ける方法ほど、シンプルな解は持っていません。
が、現実世界の中での解は持っています。

現実世界では、ケーキは、何度も配られます。
決して、一度きりではありません。
もし、一度きりなら、相手を騙して、納得させ、自分の配分が最も大きくなる方法を、他のメンバーに納得してもらえれば、それでかまわないのです。
しかし、ケーキが何度も配られると言う前提では、メンバー全員が、前回の分け方と、そのときに誰が最も得をしたのか、そしてその分け方を誰が提案したのかを、記憶し、次回のケーキ配分の参考にします。
さらに、毎回配られるケーキは、最初のものより、大きい場合もありますし、小さい場合もあります。
よって、何度も配られるケーキの配分を、メンバー全員が最大化しようとする結果、「可能な限り平等にケーキを分けることが、自分の配分を最大化することとイコールである」と言うことに気がつくわけです。
つまり、それぞれのメンバーの分け前を最大化するためには、均等が望ましいと言う均衡を得るわけです。
これを発展的に解釈していくと、こうなります・・・
「自分の取り分を大きくするためには、自分自身の価値を高め、その価値を他のメンバーに納得してもらうしかない。」と。

今回のリーマンブラザース証券による、ホリエモンをフロントラインに据えた戦略は、確かに彼らの利益を最大化しました。
極めてローリスク、かつ、ハイリターンと言うわけです。
もちろん、(僕が知っている限り)適法です。
しかし、この手は、何度も使えるでしょうか?
もし、市場参加者が、以上のように合理的に動くとすれば、彼らは、同じ手法で、何度も美味しいケーキを他人よりたくさん食べることは出来ないでしょう。

ケーキの大きさは、常に、企業の価値創造が源泉なのです。
だれかが、(短期で=企業が価値創造をする時間より短い時間で)取り分を大きくすれば、他の誰かの取り分の減少となるわけです。
そして、取り分が減少した人は、それを記憶に留め、次回の戦略の参考にするわけです。

2005年2月23板倉雄一郎 





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