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KISS 第48号「会社は誰のもの?」

「会社は誰のものか?」という、視聴率を上げる以外に、ほどんど何の意味も無い話題が続いているらしいです。
日曜日の番組(笑・・・すいません。僕は観ていません)内でも、このテーマで番組が構成されていたと、TV大好きの親父から、聞きました。

テーマを設定する前に、そのテーマそのものが、「言葉」として、おかしいか、おかしくないかを、是非考えていただきたいものです。
そして、設問への意見を述べる前に、設問そのものを理解するべきですよね?
だって、そもそも設問の意味がわからなければ、意見も出ようがありません。

結論を書きましょう。
「会社」とは、価値を生み出し、それを利害関係者に分配するための「システム=方式」なのであって、間違っても「もの」ではありません。
「もの」ではないのですから、「誰のものか?」という設問は、それ自体に意味がありません。

では、会社というシステムとは・・・(損益計算書に沿って)
顧客は、その商品を受け取る代わりに、代金を支払います(=売上高)。
取引先は、その原材料を会社に提供する代わりに、代金を受け取ります(=売上原価)
従業員は、その労働力を会社に提供する代わりに、賃金を受け取ります(=販売管理費)
(ここまでで、営業利益となります。)
債権者は、会社にお金を融資する代わりに、金利を受け取ります(=支払利息=有利子負債部分の資本コスト)
(ここまでで、経常利益となります。ちなみに、資本コストの内、有利子負債コスト「しか」カウントされない経常利益という「英訳」は、この世に存在しませんので、あしからず。)
国は、法人を認める代わりに、税金を受け取ります。
そして、以上の配分と、会社が価値創造を継続するために必要な「投資」を行った結果、最後に残った「お金」が、投資家(=株主+債権者)に帰属するフリーキャッシュフローになるというわけです。
また、経営者とは、以上のシステムの中で、
「効率よく、価値創造を行う手段を考え、実行し、収益を配分する仕事」を担っているというわけです。

以上の、「システム」を、我々は「会社」や「企業」と表現しているわけです。
しつこいようですが、会社は「もの」ではなく、「システム=方式」です。
したがって、「会社は誰のものか?」という設問は、それ自体に意味がありません。

「フリーキャッシュフローは、誰のものか?」であれば、
「それは、投資家のものだ。」と答えられます。
「株主総会の議決権は誰のものか?」であれば、
「それは、株主のものだ。」と答えられます。
「取締役会の議決権は誰のものか?」であれば、
「それは、取締役のものだ。」と答えられます。
「取締役を選ぶ権利は誰のものか?」であれば、
「それは、株主のものだ。」と答えられます。
が、
「従業員は、誰のものか?」であれば、回答不能ですし、
従業員が居なければ、会社は価値創造を行えません。

会社は「食べ物」じゃないのですから、「誰のものか?」と考えても、何の意味もないのです。
目の前の食べ物が、「誰のものか?」という議論には、意味があります。
なぜなら、誰かが食べてしまったら、無くなってしまい、他の誰かが食べることが出来なくなるからです。

それから、「この女は、俺のものだ!」などと、これまた馬鹿馬鹿しい主張をする男も居ますよね(笑)。
「お前は、俺の女だ!」という馬鹿な男の言葉に、
「そんなの、決まってるじゃない。うふふ。」と答えている女性は、心の中で、
「なに、意味の無いこと、言ってるのかしら、この男は。」
と思っているのですよ(笑)

所有だ! 権利だ! 俺のものだ! 
っと大騒ぎする人の恋愛の仕方が透けて見えます(笑)

以上、関連エッセイは・・・
KISS第27号「企業は誰のもの?」
KISS第19号「パートナーシップ」
KISS第38号「所有と労働」

2005年4月11日 板倉雄一郎 (Japanese by Nature)

PS:
4月9日(土曜日)は、当事務所主催「実践・企業価値評価シリーズ」セミナー卒業生と共に、お花見大会でした。
いつもながら、楽しく、幸せな時間を過ごすことが出来ました。
お寿司?カラオケ?カラオケボックス内での講演会?僕の自宅で「朝まで生テレビ!」の鑑賞会?犬を連れての「お花見散歩」。
皆さんをJR船橋駅に送り届けたのは、翌日の朝7時でした。
所有ではなく、楽しい時間を「共有」できました。
卒業生の皆さん、パートナーの皆さん、ありがとうございました。

明日のエッセイは、再び、「ネットとテレビの融合」についての予定です。





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