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KISS 第106号「米の教育」

昨日、当事務所セミナーの卒業生で、循環器科の医師Iさんと船橋で食事をしました。
(余談ですが、僕、「アルコール飲むな」って、ドクターストップ状態です)

会話の内容は、ほぼ教育に関することでした。
彼は、彼の米に住む知人からの米における教育についての情報を僕に教えてくれました。

まずは、食事の後、彼から送られてきたメールの内容(Iさんの知人からのメール内容の一部)を、無断転載します。


私の2人の子供の通っている学校教育について、
あまりにも「びっくり」したことがあったのでお知らせしますね。
あまりにビックリで、思わず言いたくなりました。
こちらアメリカのごく普通の公立学校で、私の子供が通う小学1年生と幼稚園でのクラスにて以下のような教育がなされています。

<仮説→検証の学習について(小学一年)>

Physical(物理)のクラスにて、テーマは「Ball & Ramps」(ボールと傾斜・スロープ)。
容積が同じで比重が違う2つのボールや、大きさ、素材の違うボールなど、様々な組み合わせの中で、2つのボールをある一定の高さから同時に落として、どのように跳ね返るかを、いくつかに分けたチー
ムに事前にその結果を予想させた後(仮説)、クラスメートの前でその予想を発表させる。
その後、実際にボールを落としてみて、「なぜそうなったのか、仮説どうりだったのか、違ったとすればなぜなのか」を検証し、また発表させる。
同様に、ボールを傾斜から落としてみて、傾斜の角度を変えたりしながら同様に、仮説→検証→発表のサイクルの中からその意味合いを学ぶ。
これは、まさしく「科学的実験法(ロジカル・シンキングの基礎)」を養うようなクラスです。仮説→
検証を繰り返す中からベストな答えを導く、これはまさしく答えのない社会に対応する強力な思考ツー
ルを養成とともに、良く考え、仮説を構築し、検証、発表することで議論をする前段階の訓練をしているともいえるかもしれません。

<GOOGLEの活用について(小学一年)>

Lifeのクラスにて。テーマはrainforest(熱帯雨林).。
各人が、熱帯雨林に生息する動物などのテーマを決めます。例えば、Howler Monkeyという特殊なサルを選んだ場合、そのサルについて、どのような特質を持つか?、生態は?、食べ物は?、天敵は?、興味深い事実は?等々の質問に対し、各人コンピュータ室で、PCに向かい
http://directory.google.com/Top/Kids_and_Teens/
という、子供向けのグーグルサイトで検索することで、上記質問に対するファクトを収集し、リサーチをし、レポートを書いてまとめます。
さらに、その後、紙で3次元的なサルのモデルを作ったり、粘土で調査したサルを作成したり、絵を描いたりと、様々な手法で選択したテーマについて包括的にクラス全体に分かりやすくプレゼンテーションするという流れです。
これも、やはり「議論する」ための前提になる事実関係を正確に捜す能力、得た事実関係を自分なりにまとめ主張(結論)を導き、プレゼンにより包括的に説明する能力など、ロジカルに考える基礎と、コミュニケーション力を小さい頃から自然に育成しているように感じました。

(以上は、あくまで、Physical、と、Lifeの科目の話しですので、
「そんなに優れた教育があるなら、なぜ米は侵略戦争をするのか!」
なぁ?んて話に発展させられても困りますので、あしからず。)

僕は、この内容を見て、愕然としました。
僕には、子供は居ませんし、現在の日本の小学校教育の現場を具体的に知っているわけではありません。
よって、日米の教育の差について、言及することは出来ませんが、「おそらく」、日本の教育現場では、いまだに、テスト(受験)の成績を重視した教育を施していると予想します。
その結果、過程より「答え」が重視されているように思えてなりません。
現場を知らないのに、そう思う理由は、高学歴な人ほど、安易に答えを求める傾向があると感じるからで、その原因を、僕は勝手に、現在の教育にあると思っているからです。

(だって、「π」を、3にするか、3.14にするかでもめてたんでしょ?
そもそも、どっちも間違いで、πは、πでしかないんですからねぇ・・・
なら、1/3を、どうするんですかねぇ?
0.3にするか、0.333にするかとかでもめるんですかねぇ?
本来、「πとはなんだ?」を教えるべきでしょ。)

話は、理解不足による安易な結論についてに変わります・・・

たとえば、
恋愛も経済も、その現象の本質は「人の心」であり、よって、本質的には同様に語れると書いたりすると、「反論」が寄せられます。
たとえば、「私は、恋愛と経済を一緒に考えたくない」とか。
で、その方に、「あなたは、経済をどれほどご存知ですか?」とお聞きします。
すると、「あまり良くわからない」と返事が返ってきます。
経済についてよくわからないのに、どうして「恋愛と経済を一緒に考えたくない」と言えるのでしょうか?

たとえば、
KISS第104号「ナイジェリアの悲劇」に寄せられた感想の中に、以下のようなものがあります。
「資源のある国の場合、それを欧米に搾取されるが、日本の場合には、どうして搾取されなかったのか?」
いえいえ、日本にも世界的に非常に貴重な資源がありますし、それは明らかに搾取されています。
日本の貴重な資源とは、他ならぬ「優秀な労働力」です。

つまり、自ら答えを予測し、自らその答えを検証しなければならない現実を認識させ、結論を導き出すために必要な知識が何であるかを自ら考え、自ら取得することを、教育しなければならないと思うのです。

2005年7月26日 板倉雄一郎

PS:
と、書いたりしますが・・・
僕は、「提言」ばかりに貴重な人生の時間を使いたくはありません。
僕は、自分ひとりでもかまわないから、自ら信じる考えを実践する人間で居たいと思います。
僕は、これまでの人生、最初は常に、一人で始めてきました。
急ぎすぎたことによる失敗も経験しました。
だから、自分自身が継続可能な方法で、着実に進めて行きたいと思います。
自分自身が継続可能な方法の条件とは、自分の精神に問い合わせ、疑いを持たない方法です。
僕の理想の人生とは、死ぬ寸前まで、「僕という職業」をリタイアしない人生です。





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