板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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KISS 第64号「組織」

皆様、GWは、いかがお過ごしでしたか?
僕は、広く読者の方々にお伝えするほど、楽しいことは、特にございませんでした。
(ほんとかなぁ?(笑))

まずは、新サービスのお知らせです・・・

<簡易企業価値「計算機」>

右フレームの新しいバナーに気づいていただけましたか?
現在ベータ版ですが、企業価値を簡易に計算するための「計算機」をご用意いたしました。
くどい説明は、後回しにして、まずは使ってみてください。
簡単な説明については、当該ページにマニュアルがあります。
各数値が企業価値および株主価値にどのような影響を与えるかについては、過去のエッセイ(SMU第64号以降)をお読みいただければ、体系的に掴むことが出来ると思います。
(本当は、セミナーに来ていただければ、一番良いですが。)
それにしても、「リスク認識=期待収益率」の部分、わかるかなぁ・・・ちょっと心配。
ヒントは、SMU第103号「資本コストと割引率」です。

尚、ご質問に関しては、簡易企業価値の計算結果ページの「価値計算に関するお問い合わせ」というリンクから、ご質問ください。(「板倉雄一郎へのメール」というフォームから質問されても、答えません。)

また、計算結果に基づいた投資活動において、利用者の皆様に損失が発生しても、当事務所では、一切責任を負いませんので、あしからず。
(っていうか、全数値を利用者自らが入力しますから、当事務所では責任の取りようがありませんけれど。)

<本題・組織論>

板倉雄一郎事務所の運営形態については、これまで少しだけ触れてきました。
その基本は、「パートナーシップ」です。
およそ8名のスタッフは、当事務所の仕事以外に通常業務(「本業」という表現は、使いません。理由は後述)として、主に金融、証券、コンサルティングファームやIT関連企業で、その価値提供を行いつつ、サラリーを得ています。
彼らは、空いた時間で、当事務所への価値提供を行います。
その後、代表者である僕が、彼らの価値提供を算定し、各プロジェクトの収益を、各スタッフに配分することによって、成り立っています。

以上の組織形態は、事業主の僕から見れば、経費の大部分が固定費ではなく、売上によって変動する変動費です。
よって、組織を維持するために、「無理をしなくて済む」という優位性があります。
また、この優位性は、見方を変えれば、「顧客に対し、自信を持って価値提供できる場合に限り、商品を提供する」という優位性も同時に実現できています。
さらに、商品の価格については、常に「顧客に提供した価値より、少し少なめの価格」を提示し続けることも出来ると言うわけです。(ただし、この場合の価値算定は、我々自身の基準によりますから、顧客によっては、「支払った価格以上の価値を手に入れられなかった」という反応が、絶対に無いわけではありません)
以上の優位性は、主に、パートナーシップという組織スタイルから生まれています。
つまり、経営効率を最大化できる組織構成というわけです。(←自信満々(笑))

さて、それでは、なぜパートナーシップが、経営効率を最大化できるのかについて書いてみます。

資本主義社会の中で、経済価値を生み出すのは、企業だけです。
企業が価値創造を行えるのは、そこに価値を生み出す能力を持った「人」が居るからです。
しかし残念ながら、彼らの能力を100%、経済価値に変換できる組織など、この世に存在しません。(この点においては、当事務所も、その例外ではないでしょう。)
にもかかわらず、多くの企業は、その従業員に対して、「アルバイトの禁止」規則などのように、当該企業への「専属」を雇用契約上求めます。
結果、被雇用者は、持てる能力のすべてを、労働という形で経済価値に変換することが出来ているわけではありませんし、一方、人を雇用した企業は、被雇用者の能力すべてを企業価値に変換できないのに、被雇用者の生活を維持するための「すべてのコスト」を、人件費というカタチで支払わなければならないというわけです。
これを、経営効率が悪いと言わないとすれば、なんと言えばよいのでしょうか。

パートナーシップは、あくまでパートナーシップです。
ですから、僕は、当事務所の代表者ではありますが、他のパートナーを「雇用」しているわけではありません。
僕は、このパートナーシップの中で、「事業の起案」と「収益配分の起案」を提示することが、最も重要な価値提供であり、セミナーなどで講義することは、当事務所のパートナーからの依頼を受けた「お仕事」という位置付けというわけです。
僕も含め、当事務所のパートナーは、相互に「専業」を期待しているわけでは無く、同時に、パートナーは、その収入のすべてを当事務所に「依存」しているわけでもないのです。
パートナーは、持てる能力を、最も効率よく経済価値に変換できるであろう「場」に、彼らの能力を提供し、その見返りとして、キャッシュなどの便益を得るわけです。
これを効率が良いといわないとすれば、なんと言えばよいのでしょうか。

パートナーシップの優位性は、他にもたくさんあります。

ネットやロジスティックスの進歩によって、もはや物理的な「オフィス」の必要性は低くなったわけですが、これを道具に、「在宅勤務」などと、馬鹿馬鹿しい表現を使った制度を導入する企業も出てきました。
しかし、「しっかり価値提供すれば、必ずしもオフィスに出勤する必要は無い」という意味での制度なら、「在宅勤務」ではなく、「オフィスレス事業」と表現すればよいわけであって、「在宅勤務」と企業が被雇用者の生活形態に口を出すこと事態、おかしなことです。
この点においても、パートナーシップは、そもそも「出勤を前提」としていないわけですから、最初からオフィスレスです。

さらに・・・(長くなるので、この辺で)

つまり・・・
「収入を得るのは、この組織(会社)」、
「住んでいるのは、この場所(住所)」、
「自分の仕事は、○○」
「恋人は、この人」などと、
誰が決めたかわからない(=だれがその仕組みを担保しているかわからない)社会幻想に依存して、「自分の立ち位置を確定」させることによる便益は、そのコストを上回らないと言うことです。

能力を提供する側(=人)も、提供された能力を経済価値に変換する組織も、そのどちらもが、必要なときに必要な価値を提供できることによって、効率は最大化されるというわけです。

「それでは、個人の生活が安定しない」のような意見もありそうですが、そのような人は、そもそも「自分の提供できる能力は、頂いている報酬より少ない」と認識していると言うことに他なりません。いわゆる給与泥棒です。
もし、「自分には、社会や組織に対して価値提供できる能力がある」と思うのであれば、一つの組織に依存することによって、収入の安定を得るなどという行為は、それ自体の機会損失の方が大きいと言うことに気がつくでしょう。

社会に対して行った価値提供以上に稼ぐことが出来るとするならば、それは他の誰かの損失の上に成り立った稼ぎでしかありません。
そんなこと、長くは続きません。
生活や将来に対する不安を打ち消すための方法は、「自分の価値を創造すること」以外にありません。
個人の価値を最も効率よく経済価値に変換するための組織とは、パートナーシップなのです。
(僕個人的には、男女間におけるあらゆる行為についても、これと同様に考えていますが(笑))

パートナーシップで最も重要なことは、「優秀な人材を、良い状態に置く」ことです。
間違っても、「ルールによる管理」ではありません。
人の価値そのものを創造しない「ルール」による管理は、「考える従業員」を排除することになります。
JR西日本の例を出すまでも無く、人間が自らの価値観に照らし合わせて、自らの行動を考える行為が失われれば、組織自体が破壊されます。

2005年5月9日 板倉雄一郎





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