板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  Keep it simple,stupid  > KISS 第8号 「勝手にしやがれ(笑)」

KISS 第8号 「勝手にしやがれ(笑)」

一連のライブドアを中心とした攻防について、いろいろ書いてきました。
まずは、文章の本質を理解していただくことを切望いたします。
「板倉は堀江が嫌いなんだ」とか
「板倉は自由競争が嫌いなんだ」とか
「板倉はメディアが嫌いなんだ」とか、
そういった、「脳みそを使うことから逃げた解釈」をする方が、多くないことを期待します。
僕のポジションは、以上のどれでもありません。
僕は、
「経営者の最も大切な仕事は、株主資本の管理である」
という理念に基づいて書いているだけです。
この点では、「フジサンケイグループ」も、「ライブドア」も、どっちも「×」と言うわけです。

「ライブドアの資本調達上の問題」や、「経営者不在の民放テレビ局」などを書いたり、
TV番組のコメンテーターのアホなコメント(これまで「この人いいこと言うなぁ!」と思っていた人=テリー伊藤氏などまで、お金と企業経営の話しになると、トンチンカンになる)を観て、「あらら」と失望してみたりしてきたわけです。
が、その実は・・・
「どうでもいいよ。勝手にしやがれ(笑)」ということなのです。
なぜなら、僕は、ニッポン放送の株式も、ライフドアの株式も、フジテレビの株式も、いずれも保有していないからです。
もし、僕に、「日本人のフィナンシャルリテラシーを向上させたい」という気持ちが無かったら、最初からこの件については、何も書かなかったでしょう。
僕のポジションは、日本人のフィナンシャルリテラシーの向上というだけですから。

それにしても、今回のライブドアのケースは、面白いですね。
僕がもし短期投機家なら、最も注目すべきは、ライブドアの2005年2月25日(新株予約権の行使期間の開始日)以降の「出来高」です。
現在、ずいぶんと株価が下がっていますが、(フジサンケイグループの買収が成功するとすれば)、これは一時的なものです。
800億円分、株式に転換された後は、同社の実体経済価値程度に株価は戻すでしょう。
(ただし、かなりのダイリューション(希薄化)は、免れません。)
注目すべきは、同社の株価ではなく、「出来高」です。
あくまで短期売買のための参考数値程度ではありますが、2月25日以降の出来高と株価の積が、ある一定の数値を超えたあたりから、同社の株価は上昇に転じるでしょう。
(もしMSCBの保有者が、株式への転換後、売却するのではなく、「ライブドアの支配=フジサンケイグループの間接的な支配」を目論んでいる場合は、この限りではありません。
いずれにしても、僕なら、2月25日までは、「火中の栗」には、手を出しませんが。)
だからと言って、既存株主とMSCBを購入した新規株主の間の不公平は、解決されることはありませんけれどね。

昨日の「MSCB頭の体操問題」について、何人かの読者の方々から回答を頂きました。
幸い、概ね正しい理解をしているようです。
(問題の回答は書きません。自分で考えることが大切ですからね。)
このような問題を解いていく過程で、理解が深まります。
たとえば、今回のライブドアによるMSCBについては、
それに「社債(=Bond)」と名が付いていること自体が「おかしい」ということも、理解できるでしょう。
あれは、単なる「割引株式購入権」に過ぎません。
それも、特定の人に対しての。

そもそも、時価総額3000億円の企業が、
800億円の「事実上の増資」を、
特定の人に対して割り引いて割り当てるのに、
臨時株主総会による決議の必要が無いのですよ。
なぜメディアは、この点を突っ込めないのでしょうか?
(適法だから、突っ込めないのは、承知していますけどね(笑))
こんなことをする経営者に対して、
「彼の考えは、メディアとITの云々かんぬん・・・・」などと、
のんきな解説しか出来ないコメンテーターって・・・・
(僕、民放TV局を散々馬鹿にして書きましたが、
せめてテレビ東京(TX)だけでもまともなこと言って・・・・って思っています。)

これも何度か書いていることですが、彼らの起債(?笑)は適法の範囲です。
よって、法律そのものに問題があるようにも思えます。
ですが、
「法律に問題がありそうだ=法律を変えよう」と言うことでは、規制緩和に逆行してしまいます。
法律がどうであれ、「経営者の資質」によって本来解決できることです。
経営者の振る舞いを見ながら、投資家が判断をすれば、それでよいわけです。
ただし、企業価値創造メカニズムや、資本コストに考えが及ばない投資家ばかりでは、「判断」など、出来るはずもないですが・・・

2005年2月17日 板倉雄一郎 

PS:
昨日のNHKの関東圏のニュースで、「バスの虚偽車庫移転事件」が取り上げられていました。
その違反者の会社名って聞きましたか?
「もっこり竹の子観光」ですよ(笑)
僕が、「もっこり」で、想像するのは、たった一つなんですけどねぇ(笑)

あと、当事務所パートナー間で、ブームの「ジョン・ナッシュ(ノーベル経済学賞受賞者)」について、彼の受賞論文である「ナッシュ均衡(きんこう)」を、当事務所パートナーのある天才が、
「ナッシュ亀甲」と(メール上で)書いてくれたものだから、パートナー皆「爆笑」だったりして。

最近、おもしろいことばかりで、たまりましぇん!





エッセイカテゴリ

Keep it simple,stupidインデックス