板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  Keep it simple,stupid  > KISS 第49号「もろもろ」

KISS 第49号「もろもろ」

本日は、少々予定が多く、朝から忙しいので、小ネタのエッセイです。

<中国の反日運動激化>

表面的には、「反日運動」ということになっていますが、その実、彼ら中国国民の反感は、実は自国の政府(=共産党独裁)に向けられているのだと思います。
不満の矛先として、代替的に「日本攻撃」になっているのでしょう。
中国政府は、これを鎮圧することに積極的ではないようです。
当たり前です。
この騒ぎを鎮圧すれば、そのエネルギーは、自国政府に向かうこと間違いなしだからです。
13億人の国の年率10%近い成長が、何年も続くはずもありません。
このような急激な成長は、間違いなく、多くの歪を、中国社会のあちらこちらに生んでいるでしょう。
いずれ、この歪は、経済的なショックとして現れるはずです。
中国への投資を考えるならば、「其の時」が来てからでも全然遅くありません。
共産党一党独裁の、経済大国なんて、そもそも無理がありますから。
僕が知っている限りの中国人は、政治よりお金に対する感心が非常に高いのです。

<ニューメディアとオールドメディア>

現在の「ネットとテレビの融合」のような論争は、歴史的に何度も繰り返されてきました。
紙メディア?電波メディア。
映画産業?テレビ産業。
その度に、オールドメディアに携わる方々の間には、動揺が走り、結果、ニューメディアに対する否定論、危険論に発展するわけです。
ですが、ニューメディアであろうが、オールドメディアであろうが、メディアはメディア。
つまり、情報を伝達する「媒体」に過ぎないわけですから、そもそも価値ある情報を持ち、それをメディアの性質に合わせて製作する能力は、メディアがいかように変化しようとも、価値があるのです。
その昔、映画産業に携わる方々の内、真に製作能力のある方々は、自然とテレビ産業に流れていきました。
テレビというニューメディアそのものの優位性もさることながら、彼ら高い製作能力を持った「人間」が、映画産業からテレビ産業に移行したことが、テレビ産業の成功の根源というわけです。
ネットとテレビの融合においても、全く同じことが繰り返されるでしょう。
ニューメディアの出現で、動揺すべきは、既存メディアのシステム上の「利権」によってのみ、収益を得ている人間です。
彼らの収益は、ニューメディアの出現によって、その配分を絶たれ、ニューメディア上の「利権者」に移っていくでしょう。
そして、いずれは、更なるニューメディアの出現によって、そのときの「利権者」の収益は、さらなるニューメディアに移転するでしょう。
真に価値のある情報を創造できる人間は、メディアがどうであれ、常に収益を得られると言うものです。
メディアは、「箱」に過ぎません。
メディアそのものは価値創造を行いません。
価値を創造するのは、常に人間です。

<リーマンブラザース証券の儲け>

今ごろ、MSCBの仕組みがテレビでもてはやされています。
転換社債と名前が付いてはいますが、何度も書いているように、

ライブドアの今回のMSCBは・・・・
それまでの同社株主が持っていたモノ(=ライブドアの普通株式)と
「全く同等のリスクのモノ(=ライブドアの普通株式)」を
「10%オフ」で、
手に入れることが出来る「引換券」を、
「ある特定の人たち」に、売ることによって、800億円調達した。
ということです。
(以上、KISS第3号より)

ですから、事実上の「(違法ぎりぎりの)有利発行」による増資です。
リーマンブラザースが、その引換券を株式に転換するのは、MSCBが2月に発行された時点で明らかですし、転換価格が下がったほうが、リーマンの儲けは大きくなるのも、明らかです。
その上、リーマンは、儲けを確実なものとするために、堀江君のライブドア持ち株を、堀江君から大量に借りているわけです。
借りた株を、売ることによって、株価を下げ、下がったところで買い戻し、借りた株を返すと儲かるわけです。
リーマンが、「確実に儲け」の源泉は、ライブドアの株主の経済的犠牲の上に成り立っているということです。
こんなことは、2月の時点で、わかっていることです。
なのに、MSCB発行後も、ライブドアの株式には「出来高」があるわけです。
出来高があると言うことは、「買う人」が居ると言うことです。
呆れてしまいますよね(笑)
理論的には、MSCBの転換価格下方修正下限である、157円まで、連日ストップ安で、ライブドアの株価が下がるはずであって、そうなるものだろうと、僕は2月の時点で思っていました。
しかし、世の中、物好きというか、わかっていない人が結構居ると言うことですね。
不思議です。
KISS2号、3号あたりを読んでいただければ、お分かりいただけるはずです。
堀江君の、資本調達方法は、しつこいようですが、既存株主の経済的犠牲の上に成り立っています。
その上で、最近の彼の発言は、「株主に儲けて欲しいのです。」ですからね・・・お笑いの「ボケ」でもやっているつもりなのでしょうか?(笑)

なにを今更・・・という情報ばかり流している「オールドメディアの方々」の、ニューメディア上での仕事場は、保証されないでしょう。
堀江君の「ボケ」に対する、メディアの「突っ込み」は、全然いけてません(笑)

<日本の資源>

食料自給率は相当に低い。
原油をはじめとする自然資源も無い。
人口当たりの土地も狭い。
この国にあるのは、「人間」だけなのです。
一人ひとりが価値創造を行うことによってのみ、この国は成り立つのです。

余談ですが、「トヨタ・プリウス」や「ホンダ・NSX」は、その価値に対して価格が安すぎます。
せめて、海外に輸出する場合だけでも、もっと高く売ってください。
我々は、我々の価値を、正当に評価すべきです。
さもなければ、日本の「もの造り」の価値は、安く買い叩かれてしまいます。
価値は、キャッシュフローに転換して、初めて経済価値として評価されるのです。
少なくともグローバルには。

2005年4月12日 板倉雄一郎 (Japanese by Nature) 

PS:
本日は、取材3件、出版や連載などの打ち合わせ3件、その他2件、とても忙しいのです。
僕、こういう忙しいの大嫌いなのです。
「忙殺」という表現もありますが、僕は、「貧乏暇なし」ならぬ、
「暇が無いから貧乏」と思います。
暇が無ければ、本も読めません。
暇が無ければ、じっくり物事を考えることも出来ません。
暇があることによって、初めて、自己価値が高まるんです。
週に一日ぐらいだから、まあええか。





エッセイカテゴリ

Keep it simple,stupidインデックス