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KISS 第109号「郵政民営化の是非という馬鹿馬鹿しい議論」

<郵政民営化法案(参議院にて)否決?衆議院解散?総選挙>

これまた、ライブドア騒動のときのマスメディアによる「VS」構図のように、「郵政民営化の賛否」を直接議論するのでは、本質を見失います。

賛成の方にも、「賛成する場合の条件」があるでしょうし、
反対の方にも、「反対なりの理由」があるわけです。
民営化法案に反対のそれは、小泉首相の「やり方」に対する「反対」であって、郵政民営化そのものに対する直接的な「反対」ではなかったり、
いやいや、そもそも郵政民営化そのものに反対で、「郵便貯金と簡易保険は、政府の財布として使い続けたい」という馬鹿者も居るのでしょう。
ましてや、自分自身の票や、自分自身の就労場所を確保することを最大の目的として、もっともらしい主張をする人間は、大馬鹿者です。

民営化の是非についての論点は・・・

1、国家財政から観て、「多すぎる国家公務員」の削減
これは、議論の余地が無いでしょう。
郵便事業と同等のサービスを提供できる民間企業や、郵貯や簡保の資金運用と同等以上の運用実績を持つ民間企業などの経営効率と比較すれば、議論の余地はありません。
そもそも郵便事業は、人口減少&ITによってマーケットサイズは自ずと小さくなるわけですからね。

2、過疎地のサービス
これは、本筋ではありません。
反対派のイクスキューズとして、重宝するイイワケですが、民営化後であっても、多少の特別予算を義務付け、過疎地のサービスを継続すればよいわけです。
精密に計算したわけではありませんが、「過疎地域のサービスを維持する」ためのコストって、大勢に影響を与えるほどではないでしょう。

3、生きていないお金
つまり、350兆円の「社会に生かされていないお金」を民営化によって、民間に流そうということですが、これ、本質的におかしな議論なのです。
だって、その金って、「預金者=郵貯に対する債権者」のお金でしょ。
法律や制度によって、「その金」を民間に流すとか、流さないとか、そういう次元ではありません。
そもそも、郵貯(や簡易保険)にお金を預託する者の問題でしょう。
郵貯に大切な資産を預ける「おばかさん」が居なくなれば、この部分の議論の必要は無いのです。
(この点に関しては、民営化どうのこうのというより、民主党の主張する「預金限度額の低減」に合理性があると思います。)

4、立法府の人間の立場
これはもう、「モラル」と、その人間の「存在意義」を問うしかないでしょう。
特にコメントありません。
彼らを選んでいるのは、我々有権者ですからね。

その他割愛しますが、僕が主張したいのは、冒頭に書いたとおり、「郵政民営化の是非」と簡素化した構図では、本質を見誤るということです。

「ちょいブス」と、「ちょっと可愛い」は、どっちが可愛いのか?
という議論と同様に、
様々な規制や民間企業に比較して有利な条件が伴う「なんちゃって民営化」と、
政治的なコントロール下に置いたままの「実質民営化」の、
どちらが、国民の便益になるのか?
どう思いますか?
民営化の是非ではないことがお分かりいただけるでしょう。

「右か左か」というような「踏み絵政治」をする人間を僕は軽蔑します。
なぜなら、政治とは、「有権者に対するサービス(=パブリック・サーバント)」であるからです。
(立法府は、行政ではありませんから、「サーバント」という表現はおかしいかもしれませんが、「立法」という手段でパブリックサービスを実現するという意味では、同質と考えます。)
多くの政治家は、このことを忘れ、「自己実現」と「政治」をごちゃ混ぜにしているように見えます。
おそらく、「踏み絵政治」を展開する政治家の心には、
「どうせ国民は馬鹿だから、わかりやすい構図を演出すれば思い通りになる」
と思っているのでしょう。
実際、「かっこよさ」で、大切な一票と投じてしまう有権者は大多数です。
自分の首を、自分で絞めている事実に気が付かない人が多すぎます。

確かに、「わかりやすい構図」は、話題を呼び、注目を浴び、「美人投票」としての成果を上げることが出来るかもしれません。
しかし、そのような構図を演出する政治家が悪いのではないのです。
しつこいようですが、彼らを選んでいるのは、我々有権者ですから。

僕は、選挙区の有権者ばかりではなく、一度立法府の人間になったら、「全国民の便益」について真剣に、具体的に考え、行動することが出来る、知識、経験、勘、行動力そして人格を備えた人間に国政を行っていただきたいと思う次第です。
(↑まあ当たり前ですが)

『すべては、有権者が決めることなのです』

『カタチ』に惑わされてはいけません。

2005年8月16日 板倉雄一郎

PS:
「ポイント5%還元!」という、顧客に対して何の便益も提供できない「餌」で顧客を釣ろうとするインチキ民間企業のやり方と、「右か左か?」に簡素化した政治は、どちらも・・・
「如何に民衆をだまくらかすか」に支配されています。
残念なことです。
僕自身のポートフォリオにおける、「YEN資産」を減らそうと思うのは、僕だけでしょうか?

ライブドア騒動のときに、「頭でっかち」が、ホワイトナイトだとか、グリーンメールだとか、その本質とかけ離れた議論をしていたときと同様に、今の政局議論は、本質とかけ離れ過ぎています。
企業買収において、「株主価値」が問われるのが本質であるように、選挙においては、有権者の便益を最優先にして欲しいものです。





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