板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  Keep it simple,stupid  > KISS 第53号「イメージ」

KISS 第53号「イメージ」

***臨時アップデート***

東京スーパーマーケットでは、夕方前に早々とバーゲンセール中です!(笑)
米景気先行きや、中国騒動に関係の薄い野菜までバーゲン中です!(笑)
カンズメや、漬物まで、バーゲンセール中です!(笑)
以上です。(↑なんのこっちゃ)
やっぱ、「ミスターマーケット」は、すばらしい!
(「ミスターマーケット」の意味は、ベンジャミン・グレアム関連の書籍にて)

***臨時アップデートでした***

多くの人は、自分でも気がつかないうちに「イメージ」による判断を行っています。
それが、自分の不得意分野であればあるほど、
それが、自分の知識で理解できない事象であればあるほど、
人は、「なんとなく」といったイメージで、物事や人物を判断しがちです。

たとえば、「地球温暖化」については、多くの人が「人間が生み出す温暖化ガスによって地球が温められている」と思っていますし、おそらく科学的にも、「温暖化ガスによる地球温暖化への影響は排除できない」ということになるのでしょう。
しかし、地球のシステムは、おそらく我々が現在知りうる情報と、科学技術だけですべてが説明できるわけではありません。
ですから、現在起こっている「明らかな事象であるところの地球温暖化」の原因のすべてが人間の作り出す温暖化ガスであるかどうかは、非常に疑問です。
しつこいようですが、人間が作り出す温暖化ガスによる影響は排除できませんから、温暖化ガスの排出を削減することは、当たり前のように必要ではあります。

地球温暖化と比べれば、話は非常に身近なことになりますが・・・
先日、TV番組のインタビューに答える東京大学合格者の映像を拝見しました。
その中に、「堀江社長を尊敬しています」という表現がいくつかありました。
彼らいわく、「社会を変えるために挑戦している姿に尊敬する」とか何とかなんとか(笑)。
「社会を変える姿勢」という、「イメージ」を元に、このような感想を述べているのでしょう。
一方で、堀江君が実際に行っている経営オペレーションの資本市場に与える影響であるとか、彼の言葉と彼の行動に大きな矛盾が潜んでいることを、彼らは理解できていないわけです。
たとえば・・・
「投資家も勉強しなければ、悪どい人たちに騙されてしまいます」という発言の一方で、
株式分割による、実体経済価値を一時的に遥かに上回る株価を利用した株式交換による買収という、それこそ、「悪どい手法」を繰り返したり、
「当社の株主に儲けてもらいたい」という発言の一方で、
明らかに既存株主を犠牲にした資金調達(MSCBの発行)を実施していたりしています。
これらのカラクリを理解できないものが、堀江君を尊敬したりするのでしょう。

これらのカラクリは、地球温暖化に比べれば、遥かに理解しやすいわけです。
なぜなら、資本主義やそのシステムは、明らかに人間が作り出したものだからです。
にもかかわらず、カラクリの理解もせずに、「イメージ」でそれを賛美する・・・
彼らは、日本の最高学府に合格した学生のはずなのですが・・・。

今一度、そのインチキを説明した・・・
KISS第28号「株式分割と株式交換」および、
KISS第4号「株価と資本政策」をお読みください。
それでも堀江君を尊敬するなら、勝手にどうぞ(笑)

このところ、フジテレビとライブドアの「和解」が話題になっています。
確かに、M&Aが成功することによって始まるであろうライブドアの「ながぁ?い失敗」は、結果的に避けることが出来るでしょう。
よって、現時点で取れる手法の中では、僕もこのエッセイで何度となく書いてきた「今のうちに手打ちを」という考えに合致します。
しかしながら、和解によってわずかな「キャピタルゲイン」を得たところで、それがライブドアの成功でも何でもありません。
結果的に、インチキ手法(=MSCBの発行)によって得られた資金を、ちょいと転がしただけなのです。
しつこいよですが、企業価値が創造されるためには、その資本コスト以上の投下資本利益率を得ることが必須です。
果たして、ライブドアの資本コストは、ちょいと資金を転がした程度のキャピタルゲインで満足できるのでしょうか?(そもそもキャピタルゲイン出るの?)
僕の計算では、ほとんど無理です。

テレビ番組(「スーパーモーニング」テレ朝)では、
「ライブドアが短期間で、300億円ほど『儲けた』」などと、
馬鹿もイイカゲンにして欲しいコメントがあります(笑・あきれてものが言えません)
300億円の「資金流入」があったわけであって、間違っても「儲け」ではありません。
その多くは、フジテレビからライブドアへの「出資」なのであって儲けではありません。
ライブドアは、この増資によって、更なる株式希薄化と、今後の投下資本利益率の下落圧力を得たに過ぎません。
公共の電波を使うのですから、もうちょっと勉強しましょうよ。ねぇ。

問題は、帰ってきた資金(=ニッポン放送株の売却、と、新たなフジテレビを割当先にした増資による資金)を、今後どのような運用を通して、どの程度の投下資本利益率を得られるかということになります。
おそらく今回の買収劇の失敗によって、少しは学習したであろう堀江君の今後の経営のお手並み拝見ということになります。
今回の騒動で落としたライブドアの「イメージ」では、今後、同社の買収活動にネガティブに働くでしょうけれど。

ちょいと勉強すればわかることを、「難しそう!」と逃げることによって、イメージによる判断を続けたときに損をするのは、その人自身です。
我々は、資本主義社会に住んでいるのです。

追加です・・・(中国における「反日デモ」)
共産党が、自らの指導力を維持するための「ネタ」として行ってきた「反日教育」のしっぺ返しは、おそらく中国共産党自身に向かうことになるでしょう。
現在の中国は、世界でもトップクラスの「貧富の差の激しい国」です。
共産主義国家なのに、貧富の差が激しい・・・わけわからん(笑)
インチキ手法による繁栄は、結果的に自らの首を絞めることになるのです。

2005年4月18日 板倉雄一郎 (Japanese by Nature)

PS:
4月24日開催の「簡易・企業価値評価オープンセミナー」は、本日をもって締め切ります。
ご興味のある方は是非この機会に。





エッセイカテゴリ

Keep it simple,stupidインデックス