板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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KISS 第6号「経営者不在の民放TV局」

最初は、お知らせです。

当事務所主催「実践・企業価値評価シリーズ」合宿セミナー(2月19~20日)は、昨日を持って募集を締め切らせていただきました。

多くの受講生に集まっていただき、大変うれしいです。

「満員御礼」

次回の開催は、3月下旬を予定していますが、すでに受講希望者が最低執行人数に達していますので3月は開催いたします。

ですが、日程などについては、もうしばらくお待ちくださいね。
詳細が決まりましたら、このWEBにてお知らせいたします。

よろしくです。

それにしても、MSCB(=Moving Strike Convertible Bond:転換価格修正条項付転換社債)が平然と横行するようになったら、それこそ資本市場はおしまいです。

これ、企業にとっては「麻薬」ですからね。

「転換価格の市場価格に対するディスカウント」がついているならば、せめて社債部分は「マイナス金利にしろ!」といいたくなりますよ。
(オプション価値を認定した上でも、理論的にはそうであるべきです。オプション価格については、ノーベル経済学賞レベルだから難しいですね。)

ライフドアのフジサンケイグループ買収という「運用側」なんて、どうでもいいのですよ(言いすぎ(笑))

問題は、「調達側」なんですよ。

せっかく日本の直接金融市場に個人資金が入ってきたという大切な時期なのに・・・そういえば、昨年「吉野家D&C」もMSCB発行していますよね。

まあ、彼らにしてみれば、苦肉の策ということなのですが、ライブドアの場合は、単なる堀江君の自己実現だから呆れますね。

この点、少なくとも民放TV局の番組では、ほとんど取り上げられません。

なぜなら、メディアがアホだからです。
(フジテレビにしてみれば、堀江君を攻撃するための格好のネタなのにねぇ(笑))

彼らが番組で取り上げるのは、「ライブドアVSフジサンケイグループ」という意味不明な内容ばかりです。

これが意味不明な理由がわからない人は・・・
過去エッセイ:SMU 第137号「誰と誰が敵?」を再度お読みいただくことをお勧めします。

しつこいようですが、投資銀行(今回は、リーマン・ブラザーズ)が儲かるだけですよ。(あと村上ファンドね)

そしてその分だけ、既存株主が損をするのですよ。

さて、それでは本題「経営者不在のメディア企業」です。

NHKの「ラグビー中継やるorやらない事件」を見てまず笑いましょう。

「朝日新聞」とのロゴが入っているのがそんなにまずいなら、「野球中継」なんてNHKには出来ないってことですよ。

だって「ヤクルト」とか「オリックス」とか「読売ジャイアンツ」だとか(笑)、めちゃめちゃ会社名が映るでしょ。(笑)

(まあ、事前に断りがあったかどうかを問題にしているのでしょうけれど。子供の喧嘩です。)

次は、フジサンケイグループの「経営者」のマヌケぶりを見て笑いましょう。

ニッポン放送の時価総額が、その保有資産に対して割安で放置されていたことなど、まあ投資活動をしている人なら、誰でも知っていたわけですよ。
(僕は、昔買ったことがありましたが、全然動かないので、痺れを切らして、売っちゃいましたよ・・・とほほ・・・もうちょっと持ってりゃ良かったという後の祭りです(笑))

なのに、彼らは、なんら対応しなかったわけです。
経営者不在というわけです。

その昔、「ソフトバンクによるテレビ朝日買収事件」があったでしょ。つまり、前例があるわけです。

なのにねぇ~。

メディアは経営者不在です。

ではなぜ、メディアは経営者不在となったのかを説明しましょう。
(以下、文章表現の「メディア」とは、主に「民放テレビ局」という意味ですので、あしからず。)

「メディアを製作専業にする、広告収入構造」が、最初の原因です。

民放TV局の売り上げは、一体誰が負担しているのか?

という問いを受けて「スポンサー企業だ」などと答える読者の方が少ないことを祈ります。彼らの売り上げの大部分は、我々消費者が負担しているわけです。

何らかの商品を、我々が購入するときの価格には「間違いなく」当該商品を売っている企業の「広告費」が相当の比率で含まれています。

それが、消費者→販売店→企業→民放テレビ局と、回りまわって流れているだけです。よって、その広告費の最終負担者は、消費者なのです。当たり前です。

以上の金の流れは、まるで、消費税の仕組みそっくりです。

僕は、民放TV局の売り上げって言うのは、実質消費税だと思っています(言いすぎ?(笑))

黙っていても(コンテンツさえ面白ければ)金が入ってくる「消費税システム」がある以上、経営者がアホになるのは当然です。

民放TV局が、その売り上げの最終負担者(消費者)に触れるのは、「直接的には無料」の番組だけです。

一方、その収入面では、上記のように間接的ですから多くの消費者は、感覚的な「ありがた味」だけを感じるわけです。

ずるいですよね。(笑)
(予断ですがこの点では、有権者の支持を直接受けることが前提の政治家のほうが、ガバナンスが働くということで遥かにマシです。)

よって、「自動的に入ってくる売り上げのおかげで、メディア経営者はアホになる。」

【アホになる理由1】

(NHKの場合も「自動的に売り上げが入ってくる」という点では、同じです)

おっと上記の「消費者→販売店→企業→民放テレビ局」には、重大な忘れ物がありました。

「企業→テレビ局」の間に、メディアの販売代理店としての「広告代理店」があるわけです。

すなわち、電通や博報堂などです。

彼ら広告代理店のおかげでメディアは、「営業活動」から実質開放されるわけです。
(中には製作活動さえ、代理店任せだったりする局もあります。)

一方、スポンサー企業においても、彼ら広告代理店のおかげで「広告告知効果の最大化」という仕事から実質解放されているわけです。

スポンサー企業が決めるのは、極端に言えば「広告予算」だけであり、その効率ではないのです。

そもそも広告の価格を決めるための最も重要な指標である「視聴率」を測るべきは、自らのお金で広告を行う広告主であるはずです。
当たり前ですが、自分のお金が効率的に使われているのかどうなのかを心配すべきは、お金を出す人ですからね。

ところが、この日本では、その視料率を計測し発表するビデオリサーチ社の株主は、メディアと広告代理店だらけです。

ちなみにアメリカでは、広告主が視聴率調査を行っています。当たり前です。

つまり、広告の値段を決めるための最も重要な指標である視聴率は、広告の値段が上昇した方が都合の良い人たちによって、支配されているというわけです。
(そこにインチキがあるかどうかは、別の問題ですし、必ずインチキがあると言っているわけではありません。)

つまり、「メディアの価格」についてのガバナンスが働かないわけです。

以上から、どちらも(スポンサー企業も、メディアも)、広告という部分においては、骨抜きなのです。

スポンサー企業の場合、その経費の「一部」であるところの広告費についての骨抜きで済みますが、民放TV局の場合、(企業にとっての広告費が)その売り上げの「ほぼ100%」というわけですからね。

よって、「商品(メディア枠)の価格競争が起こりにくい世界で仕事をしているわけですから、メディアの経営者はアホになるのです。」

【アホになる理由2】

「国による庇護」これは、カンタンに書きましょう。

「メディア企業は、その株式の20%超を外国人が占めてはいけない。」

という法律があります。

国による庇護を受けた企業群なんて、そもそも国際競争力が無いんですよ。
メディアにしても、情報通信にしても、金融機関にしても。
逆に、特に庇護を受けてこなかった自動車産業を見てください。

世界に誇る日本の産業でしょ。

「国による庇護を受けているので、メディアの経営者はアホになるのです。」

【アホになる理由3】

以上のメディア論は、ホリエモンの「表向きのイイワケ」とは合致する部分があるんですよね。(笑)

しかし、既存株主を犠牲にするその経営手法には、100%賛同できません。

以上、おしまい。

2005年2月15日 板倉雄一郎

PS:
3月のセミナーアナウンスは、来週以降行いますね。
よろしくです。





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