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KISS 第78号「理解と価値観などもろもろ」

本日は、もろもろ話題です・・・

<理解と価値観>

資本主義や、株式市場のメカニズムなどについて誰かと議論するとき、当たり前のように意見の合意が得られないことがあります。
議論は、大好きです。
なぜなら、他の方の考え方など、自分だけでは思いもよらない「発見」があるからです。
議論は、自分と議論の相手を成長させます。
そして、全うな議論の結果、多少の意見の相違が埋まらなくても、それは「あなたと私は、意見が違うと言うことに合意する」という合意が得られれば幸いです。
つまり、価値観の違いを受け入れられます。

しかぁ?し、多くの場合、(正直、生意気な言い方ですが)価値観の違いによる意見の不一致ではなく、相手の「理解不足」による意見の不一致の場合が多いです。
理解不足とは、テーマそのものに関する基礎的な理解の不足であったり、こちら側の主張の意図への理解不足であったり。

つまり、「価値観の違い」で片付けている多くの議論は、実は、どちらか、または、双方の「理解不足」だったりします。

と書く僕も、「自分の理解不足が、議論がまとまらない原因」にならぬよう、気をつけたいものです。

<世界を動かす「主義」の限界>

ある本質を見抜く能力に長けた読者とのやり取りの中で、以下のような文章を頂きました。

(前略)
そして今の世の中は、この「民主主義」や「資本主義」では解決できない時代に突入していると私は感じています。それらの様々な問題を探求していくと、我々現代人は先人達が発明した「民主主義」や「資本主義」といった道具の生まれた経緯や本来の使い方を忘れ、逆にその道具に人が使われているように思えるのです。今の日本政府の人類史上最大の財政破綻や経済界で起こっている「勝ち負け」を具現化した貧富の2局化などのマネーゲームがその良い例です。
(後略)

この方は、お金を基礎にした「資本主義」、そして、多数決に頼る「民主主義」の限界に注目されたうえで、『哲人主義』を唱えていらっしゃいます。
一歩間違えると、単なる新興宗教になってしまいそうな考え方ではありますが、概ね僕も賛成です。

「民主主義や資本主義は、問題だらけだが、それに代わる手法が見つからない」といったところが、世界のコンセンサスとは思います。
しかし、他の手法を、頭から否定する合理的理由もありません。
いずれにしても、現在の環境(=資本主義、民主主義)について、深い理解をしたうえで、「次の手」を考えたいものです。

<セミナー・アライアンス>

それぞれに思う哲学の下、バラバラに散らばって、いたるところで行われているファイナンスやバリュエーション、そして資本主義に関わるセミナーを行っている主宰者らとの出会いが、このところ続いています。
彼らと話せば話すほど、「一緒に何かやりましょう!」という話になります。
たとえば、投資手法としては、僕の推奨するバリュー投資とは対極にありそうなデイトレ関連のセミナー主宰者とも、しっかり話せば、「目指す哲学は同じである」という結論を得ることができ、何らかのアライアンスが組めそうな案件が、いくつか生まれています。
あるデイトレ・セミナー主宰者と議論をしたとき、その方は、こう言っていました・・・
「デイトレなんか、何年も続けられるものではない。あれは、あくまで導入に過ぎない」と。
確かに、投資初心者に対して、
「年率30%複利で、30年もあれば、元金の100万円は、26億円にもなるんだよ!」
なぁ?んて、教えても、
「100万円が、1年後に130万円になるだけでしょ! デイトレやって、100万円を1年で1億にした人だって居るのに、気の長い話で興味が無い」
などと、思われてしまうのが関の山ですから(笑)、
「まずはデイトレやってみてください、運がよければ稼げますが、多くの場合損しますよ」という導入も、無くは無いな・・・とは思います。
彼らのおかげで、ボラティリティーが高くなり、バリュー投資家にとっての投資チャンスが増大する面と、一方で、企業の株主資本コストが上昇し、株価が押し下げられている事実については、その天秤の量り方については、意見の相違がありますが。

いずれにしても、資本主義について学ぶための良い機会であることに違いはありません。
おそらく、近い将来、様々なセミナー主宰者とのアライアンスが、実現できることでしょう。

<未来の証券取引>

SMU第78号「未来の証券取引」で詳細を書いたとおりですが、この手法をどこかの証券会社で、FEP(Front End Processor)として、やってくれませんかね?
そしていずれは、証券取引法の改正と、証券取引所のシステムが、このような手法に改善されればと思います。
この手法なら、「株式分割」やら「単位株制度」などの、わけのわからないオペレーションや制度によって、企業の株価が実体経済価値とかけ離れて乱高下することもなくなりますし、「投資家から見た企業価値とは何ぞや?」という問題も、証券取引を通じて、自然と学習できるはずなのです。
株券が事実上なくなるわけですから、「米の真似」から卒業して、日本が一歩先んじてやっていただきたいと思います。

SMU(スタートミーアップ)第78号を、再読ください。

最後になりますが、僕がやろうとしていることは、道のりが長く、「おそらく」ゴールはありません。
結果より、過程にこそ価値があると、僕は信じています。
たとえば、恋愛においても、それにゴールを設定する必要なんて、一体どこにあるのでしょうか?
夜遊びゲームでのセックスも、ステディーな付き合いにおける結婚も、とりあえずの「踊場」であって、けっしてゴールではありません。
起業家がIPOを目指すといいますが、これもまた、あたりまえですが起業におけるゴールではありません。
すべては、連続して流れの中にあります。
「ゴールにたどり着ければ、価値がある」ではなく、
「過程そのものに価値がある」という生き方をしたいのです。
だって、ゴールは無いんですから。

2005年6月2日 板倉雄一郎





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