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KISS 第112号「日本国債の保有者」

国家財政は、ご存知の通り、危機的な状況にあります。
そこで、誰が債権者なのかについて考えて見ましょう。

日本政府の借金=国債は、一体誰が保有(=誰が政府に対する債権者)しているのか・・・
国債発行残高は、およそ740兆円。
国家予算のおよそ10倍!です。
(財務省の速報値を参照しています・・・国債以外にも、短期の債務、そして地方の債務など、まだまだたくさんあります。)

公的部門(郵貯、簡保、財政投融資、政府系金融機関など)の保有は、
なんと、45.1%!
その中で、国債残高全体の22.4%が、郵貯&簡保による保有です。

また、民間金融機関の保有は、37.2%。
個人や一般企業、などがその他ってことです。

これ、どう思いますか?
ちなみに、紙幣を発行する日銀による保有は、13.5%!
つまり、紙幣を刷って、国債を買っていることと本質的には同一です。
(政府発行の国債を、中央銀行が直接引き受けることは出来ないことになっていますが、結局、日銀は、回りまわって、これだけ保有しているというわけです。)

さて、このループ現象をどう考え、どう政策に打ち出すのか?
残念ながら、根本的な解決策を出している政党は、僕が知る限りありません。
というより、「どうにもならない」というのが本当のところでしょう。
だから、具体的な政策を提示できないわけですね。
だって、「過度なインフレによる借金帳消し」もしくは、「消費税などの大増税」以外に、解決方法無いですからね・・・そんなことを本気で訴えたら、誰も票を入れなくなっちゃうしね。

ある意味、今後数年で膨大な国債費(利払いと、借り換え)が発生するわけですから、今回の衆院選に立候補する方々は、(以上の財政的状態を認知しているとすれば)「すばらしい!」と言えなくもない。
しかし、結局は、「僕らが作った借金じゃないもんね!」ってことになるんでしょうか?
いずれにしても、国民負担は、増大します。
それだけは、確実です。

ところで、各党のマニフェストの中に、「日本のビジョン」を提示しているところってありますか?
たとえば、「ものづくり」でも、「新規企業促進」でも何でもいいですが、「だぶつくカネ」を、何に生かすのかについて、あまり多くが語れていませんよね。
「老後の心配」に付け込んだ政策ばかりじゃないですか?
残念なことです。
夢やビジョンが無ければ、カネ使えないですよね。貯める一方になっちゃいます。
企業も、個人も、カネを貯めてばかりいるから、経済が活性化しないのです。

今、この瞬間、カネ持っている国民の多くは、カネの使い道の無い人ばかりなのです。
そう、自分の子孫など日本の将来ではなく、「自分の老後」の心配ばかりしている人たちです。
ちなみに、現在の政府の借金は、この方々が作ったと言えなくもないのです。

だからと言って・・・
郵貯・簡保のカネ(=国民の金ではなく、国民の一部である預金者の金ですよ)を、誰がどのように使うかばかりを訴える候補者が見受けられませんか?
呆れてしまいますよね。

しつこいようですが、この点に関して、「預金者に金を戻す」」という民主党による預金限度額の引き下げは合理的だと思います・・・でも、そのカネ、その後どう使われるかという問題はあります・・・なので、僕個人の提案は、「一定期間、生前相続の無税化」です。
じーさん、ばーさんから、子孫や親戚に対して相続が進めば、「やったぜ!これで車買えるし!」なぁ?んて、アンちゃんが出てくるんじゃないかと(笑)
そして、「おいらも株式投資やってみよう!」なんてなるかもしれない・・・でも、価値と価格の区別が付かない「価格変動しか理解できない人」が株式投資などすると・・・まずいけどね。

政治「屋」さんたちは、財政や経済について具体的な政策を提示しても、「多くの国民には理解不能」って思っているのでしょう。
なので、「右か左か」と簡素化した構図を演出するわけです。
やはり、国民のフィナンシャルリテラシーの向上が、政治の上でも欠かせないということです。

「郵政民営化」という「カタチ」は、どうでもよいのです。
公社のままでも、民営化しても、どちらの場合も、具体的にどのように変えるのかが大切なのです。
しつこいようですが、「カタチ」で選択すべきことではありません。

2005年8月22日 板倉雄一郎

PS:
やっと、歩くには痛みがなくなってきました。
でも、座って、こうしてタイピングするのは、10分が限度。
10分仕事して、20分ベッドで休むの繰り返し。
ほんと、トホホです。
もちろん、御食事できないし、「その後」も不可能(笑)ですから、デート無理。

PS^2:
「おりおば」、やっと原稿を書き上げました。
この後、編集者による編集、レイアウト、製本と続きます。
10月には出せると思いますので、よろしくです。

PS^3:
27日のオープンセミナーは、本日を持って締め切りです。
ご興味のある方は是非。





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