板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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KISS 第24号「適法?」

適法か否か?
このところ、そんなことや、商法の解説ばかりのマスメディアですが・・・
そもそも・・・(しつこいようですが)
適法であることは、「最低限のルール」というだけであって、適法だから「経営者として正しいやり方」ということではありません。
経営とは、あくまで適法な範囲内で、戦略に基づき、企業の将来キャッシュフローを、そのリスク以上に高めることなのです。

時代の変化に合わせた法整備は確かに重要です。
(ですから、立法府の人間を選ぶこと=選挙は非常に重要です。)
しかし、賢明な経営とは、「適法な範囲であればなんでもアリ」というような、「ノーブレスオブリージェ」とかけ離れた手法を指すのではないのです。
全うな投資家(=企業価値創造に資金を投資する)は、全うな経営者を見抜くのです。
全うな経営者とは、資本の管理者として、企業価値を高めるメカニズムを理解し、実践している者を指します。
よって、「今回の司法判断が日本経済に及ぼす影響が・・・云々かんぬん」とは、議論の価値が無いとは申しませんが、それは「アホな投資家ばかり」という前提で必要な司法判断なのであって、賢明な投資家であれば、投資する前に「全うな経営者によって経営されているか否か」を査定するわけですから、法整備や、適法なオペレーションをしているか否かなんてことは、投資意思決定において(最低限の条件ではありますが)重要な要素ではないのです。

本日の日本経済新聞一面中央にある・・・
「株式分割の新株売買、翌日に」という記事にある内容は、極めて重要です。
「何かを防ぐ」ための法整備ではなく、「当たり前のカタチ」を、まず整備すべきですね。
株式分割による、当該企業による一時的な株式流通量の減少は、多くの場合、企業価値に全く無縁に株価は急騰します。その機会を利用した増資による資本調達は、既存株主にはある程度有利でも、新規に増資に応じた株主にとっては、損です。
なぜなら、実体経済価値より極めて高い株価で、新規の株式を手に入れることになるからです。
まあ、それがわからない投機家がわるいのですけどね。;
(株式分割それ自体が悪いといっているのではないですからね)

「穴を見つけて攻撃する」のは、世に言う悪徳業者の手口に過ぎません。
全うな経営者は、「企業価値創造を行うためには、?という手法が必要だ」と、まず考え、
その手法が、古い法律によって妨げられている場合に初めて、法制度への注文をつけたり、穴を見つけたりするわけです。(規制緩和の根源的理由です。)
「穴」を見つけて、それを利用する目的をでっち上げるのではなく、
企業価値創造の具体的目的が最初にあり、
手段として、法改正や、「穴」を利用するという順番であるべきです。

堀江君の手法は、昨年の株式分割とその株高を利用した増資においても、違法ではないが法の精神に合致しない時間外取引による今回のM&Aの手法においても、その前提が、企業価値創造ではなく、「穴を探して、責める」という「VS」の姿勢だと思います。
彼自身が「詰め将棋」と言っているように、相手を見つけて勝ち負けを競うのは、将棋版の上だけで結構です。
企業が、価値創造を行うためには、その企業の利害関係者すべての賛同が必要なのです。
堀江君の発言からは、KISS第19号「パートナーシップ」で書いたようなことの、かけらさえ、僕にも見つけられません。
「フジと話しがしたい」などと言い出しているのは、彼が形勢不利になったことによって出てきた言葉に過ぎないのでは?

2005年3月9日 板倉雄一郎 





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