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KISS 第74号「日本経済新聞から」

ネタに困ったとき、は、日本経済新聞記事に「いちゃもん」を付けるのです(笑)

日本経済新聞2005年5月25日の記事より・・・

<少子高齢化>

少子高齢化の解決策を、政府は、「子育ての環境改善」に見出そうとしているようです。
少なくとも、これまでの対策(?)は、そのようでした。
が、「子供を持っていることの多い年齢になっても、子供を持っていない人」を経験している僕(笑)の場合、子供を創ろうと思わないのは、「自分の子供を、委ね(=参加ぐらいの意味)たくなる社会とは思わない」ってことです。
国家財政、犯罪など社会不安、食料資源、エネルギー資源、地球環境などなど。

でも、だからこそ、社会に価値提供できるような自分の子供を作り、育るという行為が必要なのだとも思います・・・複雑です。

<配当利回り バブル後最高1.26%>

だそうです。
「配当利回りが、国債利回りを上回っていると指摘することが、そもそもへんてこりん」です。
なぜなら、株式投資は、国債を始めとする債券のような「フィックスドインカム」ではありませんし、そもそも株価変動が大きいわけですからね。

ちなみに、同記事にある「中長期的な株式投資の魅力増につながる可能性がある」と言うのは、アホ過ぎです。
何度も書いていることですが、企業が価値創造(=資本コストを上回る投下資本利益率を長期で維持)出来るであろうと予測されれば、企業は、配当による現金株主還元より、企業内部で「再投資」をしたほうが、株主価値は増大します。もちろん、「使い道の無い現金」を持っていれば、配当や自社株買いが適切です。
この記事書いた人、「中長期」という表現を使う割には(=中長期の場合、理論企業価値に時価は近づきます)、企業価値についての理解がほどんとありません。
投資家が受ける経済的便益は、配当などインカムゲイン、か、時価総額の増大などキャピタルゲインですが、これは常にトレードオフにあります。
当たり前ですが、配当によって、企業の現金を引き出した方が、株主価値が上昇するなんてこと、あるわけ無いでしょ。(遊んでいる現金がある場合でも、少なくとも理論的には株主価値に変動はありません。)
そもそも、配当利回り1?2%って言うけれど、株価変動のほうがよっぽど大きいですよ。

日本人は、その義務教育の質の悪さが原因でしょうか、「分数」が苦手みたいです。

詳しくは、KISS第39号「配当と株主価値」をご一読くださいませ。

<在京民放各社、インデックスと提携交渉>

民放の買収より、提携(=アライアンス)の方が、遥かに賢いです。
賢い理由は、その方が明らかにROIC=投下資本利益率が高い「場合が多い」からです。

話しそれますが・・・
M&Aという名の、「実質株式持合い」がそんなに良いのなら、そもそも日本企業は「持ち合い解消」などしなければ良かったのです。
「持ち合い解消」より、持ち合いをした上で、コーポレート・ガバナンスを実現する「日本的経営手法」を編み出せばよかったのです。
何でもかんでも、米真似では、お話しになりません。

そもそも僕は、「この国において」、通信、基幹交通など、ライフラインに関わる事業を、民間企業に委ねることに反対です。
中越地震での、NTT固定電話の復旧の早さ(=無線インフラのDoCoMoより、NTT東が先に復旧)にしても、あの会社の金儲け「だけ」に釈迦力にならない余裕のなせる業であって、仮にソフトバンクが、通信インフラの大部分を運営していたら、地震などのときに本当に早期の復旧をする体力があるのかいな?と思ってしまいます。
とはいっても、NTTのお役所体質はいけてませんが。
(ちなみに、NTTの株主の大部分は、国民です。)
民営化するのは、マーケット全体がもっと賢くなってからです。

<ネット各社成長軌道へ>(本紙3面)

相変わらず、売上高と営業損益を掲載しています。
しつこいようですが、その利益を生み出す「投下資本」がどれほどだったのかが重要です。
いくら利益が倍になっても、その裏で、投下資本が倍になっていたとしたら・・・

大切なのは、投下資本利益率の向上です。
会計上の利益なんて、企業の「ほんの一部の側面」でしかありませんし、そもそも、インチキ企業の利益は、そのキャッシュフローと大きく乖離しています。
(設備投資の割合など、ビジネスモデルにもよりますが)

僕個人的には、減価償却費のでかいビジネスモデルは、好きになれません。

今日は、こんなところで。

2005年5月25日 板倉雄一郎

PS:
無線イヤホン使えてます!
でも、ある読者から、「イヤホンで話しながら、街を歩っていたら、変ですよ」と言われました。
確かにそうです。
ですが、僕が今から20年ほど前に、ケータイ(当時はでかい奴)を持ち始めた時も、同じようなことを言われました。





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