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KISS 第61号「速度超過」

KISS第60号「人生資源」にて、人生の限りある資源「時間」について書きました。
しかし、だからと言って、対処不可能なほど、慌てたり、急いだりしたら、結局時間の浪費になってしまいます。
このところ、図らずしも(?)忙しくなりつつあり、ワークアウトも十分に出来ない状況を鑑み、「これはまずいな・・・そのうち何か失敗する」と思っていたら、やはりやってしまいました。

昨日(2005年4月26日)は、YEO(Young Entrepreneur Organization)&WEO(World Entrepreneur Organization)合同主催の「圧縮(?)・企業価値セミナーforアントレプレナー」の講師を務めてきました。
先日の「ウィルスバスター事件」以来(そのときに、PCの中身をいろいろいじってしまったため)続く、PCの問題が、講義前に発生。(内容は割愛)
何とか解決したものの、心穏やかでないまま、ちょいと会場から外に出ようと思ったとき、僕は、少々早歩きで、自動ドアに向かいました。
六本木は「泉ガーデン」のセミナールームから外へ出る自動ドアは、ドアそのものが「木目調」なのに対し、そのドアが開いたときに、ドアが移動する場所に当たる部分が、「透明ガラス」だったのです。
僕の目は、どういうわけか、その「ガラス」が目に入らず、ガラスの先の「外の世界」ばかりを見ていました。
次の瞬間、「ばぁ?ん!」と、音がしたと思ったら、なにやら自分が跳ね返されるではないですか!
「一体なにが起こったのか???」、ほんの一瞬ではありますが、自分に起こった事態を把握できない。
しばらくして(とはいっても、1秒程度だったと思いますが)、「鼻」と「膝」に激痛が走る。
その痛みで、僕の脳はやっと事態を把握しました。
「僕は、ガラスにぶつかったんだ!」
それから、それこそ「しばらくの間(今度は、数分間)」、自分の鼻と膝を抱えて、その場にうずくまってしまいました。
幸い、鼻血は免れましたが、一晩明けた今でも、鼻がジンジン痛い。
そして鏡を見ると、団子のように腫れている。
情けない。
他人に迷惑をかけることに至らなかったことが、不幸中の幸い。

企業経営においても、事業を急げば、自らが生み出すキャッシュフローでは足りなくなり、外部からの資金調達が必要になります。
外部からの資金調達は、それが有利子負債であれ、株式であれ、当然ながら、資本コストを上昇させます。
急いだことによって、得られる利益(=予想する投下資本利益率)が、資本コストを上回らなければ、急ぐ意味は、少なくとも経済的には、ありません。
しかし、人は、急いでしまうものです。
僕は、自分の過去の失敗が、「急いだ事」にあると、今では思っています。
ですから、余裕がなくなるほど忙しくなるのは、なんとしても回避したいものです。
なのに・・・気がつかぬうちに、僕は急いでしまうわけです。
その上、僕の場合、「未来」ばかり見ていて、足元を見落とすことが多いのです。
まさに、「ガラス衝突事件」が、それを改めて、気がつかせてくれました。
(なぁ?んて、僕は、何でもかんでも、「将来の肥やし」にしてしまうのです(笑))

パソコンとネットが普及し、少なくともそれ以前より、情報伝達の効率は良くなったはずです。
書類は、メールに添付できるし、
多人数に連絡取るにも、メーリング機能はあるし、
ケータイのおかげで、コミュニケーションの効率は上がるし・・・

なのに、都心の渋滞は、減りませんよ。
なのに、新幹線は「のぞみ」が増発しました。
なのに、一分、一秒を争い、事故が多発します。
そして、時には、その一分、一秒を急いだがために、100名近い命が奪われてしまいます。

結局、テクノロジーによって得られた効率は、それによって得られた時間を、さらに効率を上げるために消費されるばかりで、「生活の余裕」には、つながっていないのです。
いくら効率を追求しても、その結果、リスクが高まるのでは、本来何のために効率追求なのかさっぱりわかりません。
いくら稼いでも、稼いだお金の使い方をおろそかにすれば、何のために稼ぐのかさっぱりわかりません。
どれほど、投下資本利益率を上昇させても、資本コストがそれ以上であれば、何の経済価値も生まれません。
行動を起こす前に、何を得て、何を失うのか?
そして、そもそも、何のために、その何かを得ようとしているのか?
まずは、それを「考える時間」を作ることが、重要です。

「貧乏暇なし」ではなく、「暇が無いから貧乏」なのです。
ちょっと、ペースを落とすために、ブレーキを踏まないまでも、アクセルはアイドルにしようと思う次第です。
(最近、「スピード違反」で捕まることは、めっきりなくなりましたケレド・・・)

2005年4月27日 板倉雄一郎

PS:
5月開催「実践・企業価値評価・合宿セミナー」は、既に2,3席しか空いておりません。
おそらく明日には、締め切りいたします。
いつもながら、ありがとうございます。
スタッフ一同、参加いただく方々に支払っていただいた費用以上の価値を提供できるように、最大限の努力をいたします。





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