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KISS 第95号「人(ヒト)」

「人(ひと)」の尊さは、自分の行為が、社会に対してどのような影響を与えるかを、予め想定できてこそ、生まれると思うのです。
(渋滞を作っているのは、自分自身なのです)
この部分が、人とその他の動物の最も大きな違いではないかと思うのです。
たとえばライオンは、「他の動物を食いすぎて、繁殖しすぎれば、自らが存在できない」ということをライオンの頭の中で、論理的に考えて行動しているわけでは(おそらく)なく、種の保存のために遺伝子に忠実に行動した結果、強くはあるが、一方で数を増やすことが無い進化を遂げたのではないかと、思うわけです。
長期では、そんな彼らも、与えられた環境の中で、彼らの遺伝子から見た進化は続けるでしょうが、彼らの遺伝子から見た進化は、彼らの遺伝子自らを滅ぼさないとも限りません。
人は、自らの遺伝子にだけ忠実に行動するのではなく、自らの遺伝子の進化と同時に、その結果を常に想定し、自らの遺伝子と、その遺伝子が将来生存するであろう環境も同時に考えられる生き物だと思うのです。

が!
冒頭の、「自分の行為が、社会に対してどのような影響を与えるか」を考えるとき、当然ながら、その考えが及ぶのは、「自分の知識や経験、そして見えている世界」に限定されるという問題があるわけです。

だから、知っている人は、知らない人に教える義務があるのです。
義務というより、自らの存在を継続するために、知っていることを、知らない人に教える「必要」があるわけです。

たとえば、(いきなり話は、身近なことになりますが)
チューイングガムを、ポイっと吐き出して、道端に捨ててしまえば、本人の作業としては楽ですよね。
でも、その結果、犬がガムを踏んづけて、肉球に張り付いてしまって、飼い主はそれを取るために、犬の足の毛までハサミで切らなければならなくて、それは犬にとって迷惑であって、飼い主にとっても迷惑であって、ガムをハサミで取り除くだけでも、怪我するリスクがあったらりする・・・・ことが想定できる人は、絶対にガムを道端に捨てたりしないんですよ。
「ガムを道端に捨ててはならない」という法律があるとか無いとか、そういうことじゃないでしょ?

たとえば、(いきなり話は、狭義になりますが)
「有利子負債コストは、会計上の利益に影響を及ぼすが、株主資本コストは、株主価値≒時価総額に影響を及ぼす。株主資本コストが増加すれば、企業価値が破壊され、そのしわ寄せはすべて株主価値に現れる。株主資本コストとは、投資家から観た期待収益率であり、当該企業に対する投資家の感じるリスク認識である。」なんてことは、腹の底に落ちる理解を得られるまでには、結構時間がかかります。
(不特定多数から資本を調達する上場企業の経営者でさえ、以上の基礎を知らない人の方が多いと言うのが僕の感覚です。実際、株主資本コストは、有利子負債コストと違い、会計上には現れません。しかし株主も含め「企業」であり、経営者は、当然ながら、株主のことも考えなければならないのです。当たり前過ぎますが。)

でも、これがわからなければ、市場資本主義について、なんにも知らないのと同じなのです。
なぜなら、
資本主義に関する理解とは、すなわち、「価値と価格の違い」についての理解なのです。
つまるところ、価値算定が出来なければ、何も理解できていないことと同じなのです。
そして、投資家から観た企業価値を図る上で、株主資本コストは、極めて大きなインパクトがあるのです。

以上の理解を得た上で、デイトレするのも、裁定取引に勤しむのも、バリュー投資を実践するのも、それは、個人の自由裁量だと思います。
けれど、以上を知らずに、「価格変動」にばかり注目するのでは、「その結果、その影響」について思いをはせられないということです。

しつこいようですが、その影響について、十分な考察を行えるのが人間の人間たる所以です。
しつこいようですが、知っている範囲、経験した範囲でしか、「その影響」についての考察は出来ないものです。
しつこいようですが、だから、知っている人は、知らない人に、教える必要があるわけです。

でも、10年後の僕は、きっと、「あのときの僕は、知らないことが多すぎた」と思うのだと思います。
知らなかった理由が、少なくとも「脳みその怠慢」の結果ではないことを望みます。
だから、人と議論をし、本を読み、学習することは止められないというわけです。
人としての価値を高めて生きたいからです。
なんか、それが少なくとも僕にとって、気持ちがいいのです。

2005年7月5日 板倉雄一郎

PS:
最近、以上のような会話ばかりする「まるで自分の生き写し」のような女性と、「出会って、しまって、わんわんわわぁ?ん、わんわんわわん」って感じです。(←なんのこっちゃ!)
でも、女性と男性は、そもそも脳みそが違うんですよ。
だから、バランスが取れるんですよ。
「地図の読めない女、話を聞かない男」ではありませんが、きっと、犬と人間の違いのような種の間の違いより、それぞれの種における雄と雌の違いの方が、大きいような気がするのです。
女性が居なければ、種は継続できないですからね。
遺伝子工学を前にしても、種の継続のために、少なくとも現時点では、母体を必要としますからね。
世の中、女性が握っている・・・と、常々思います。
そうそう、犬のぺディグリー(血統)も、サラブレッドも、女系(母系)にその比重が高かったりしなかったけ??





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