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KISS 第52号「コーポレートガバナンス」

本日(2005年4月16日)の日本経済新聞朝刊トップ記事に、
「上場企業・社外取締役義務付け」というタイトルで、
金融庁が、東京証券取引所などに要請をしたという内容があります。

「なにを今更」というのが率直な感想です。
当たり前のコンコンチキのコーポレートガバナンスの基礎の基礎です。
そもそも、経営者と利害関係の無い社外取締役を採用するのは、金融庁に言われてやるようなことではなく、民間企業が、民間企業のために、自ら進んでやるべきことです。
しかし、実現には大きな問題があります。
仮に、上場企業が社外取締役を、一社辺り平均で3人据えるとすると・・・
上場企業はおよそ4000社ですから、12000人!もの人材が必要と言うことになります。

常勤であろうが、非常勤であろうが、それが取締役である以上、取締役会の議決権を持つことになるわけですから、「少なくとも」企業価値創造メカニズムや、コーポレートガバナンスについての「深い理解」のある者が就任すべき職種です。
さて、そのような人材が、この国に12000人も居るのでしょうか?
条件は、以上のような能力だけではありません。
少なくとも過去5年間、経営陣(=執行役)との利害関係の無い者というわけですから、こりゃかなり難しいです。

きっと、名目上、法務「だけ」知っている弁護士や、会計「だけ」知っている会計士などが、なんちゃって社外取締役となることでしょう。
残念なことに、彼らの多くは企業価値評価や、企業のオペレーションが企業価値に与える影響や、株主資本コスト(これを知らない者が、上場企業の取締役になるのであれば、無免許運転に他なりません。)についての深い理解など、持ち合わせていません。
また、その辺を理論的には知っていても、経営経験などさっぱり持っていない学者(=童貞君)などが有力候補になるのでしょう。
(もちろん、すべての弁護士や、会計士が、社外取締役に適さないというわけではありません。)
表面を繕ってお終い・・・というスタートでしょうけれど、このような試みによって、経験者が増え、結果的に5年?10年ほどの時間をかけて、成熟していくのでしょう。
無免許運転でも、まずは運転してみないと、経験者にはなれませんから、仕方ありません。
後は、投資家が、厳しい目で、彼らの仕事ぶりをチェックすることです。

どうしても人材が足りなくなったら、当事務所の「実践・企業価値評価セミナー」の卒業生を斡旋いたしましょうか?(笑)
彼ら卒業生は、そこらへんのインチキスペシャリストより、遥かに理解のある者ばかりです。

人間を、「学歴」や「資格」で図ってきたから、へんてこりんな世の中になっちゃったんですよ。
高校時代の学歴で人生が決まったり、4択マークシートの回答で取れる資格なんて、「それだけでは」ほとんど何の意味もありません。
なぜなら、どちらも、最初から「答え」が決まっている問題を解くだけだからです。
企業経営は、どれほど、そのメカニズムを知っていたとしても、常に、未来に対する挑戦であり、答えは、常に、やってみなければわからないのです。
ですから、わかっていること(=たとえば企業価値創造メカニズムなど)は、可能な限り知っておくべきなのです。

余談ですが、まともな社外取締役が居る企業ならば、時価総額3000億円の企業が、株主の犠牲の上に成り立つ800億円ものMSCBの発行を、取締役会で決議することなどありえなかったでしょう。

2005年4月16日 板倉雄一郎 (Japanese by Nature)

PS:
花粉症ひどいです。
もう、毎年、春はだめなんです。
文章を書く力も減衰します。
しばらくお許しくださいませ。
なお、中国の「反日デモ」に関しては、KISS第49号「もろもろ」の中で、既に書いています。





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