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KISS 第22号「自由と自己責任」

以下のような見方(意見)を耳にすることがあります。

ライブドアによるニッポン放送買収騒動について・・・
「堀江が大株主なのだから、もし株主の不利になるようなことをすれば、堀江が最も損をする・・・そんな自分自身の首を絞めるようなことを彼がするわけない。」

日本国債が買いか否かについて・・・
「国が自分の首を絞めるようなことをするわけ無いから、日本国債は大丈夫、買いだよ。」

もちろん以上のような意見は、僕が何者であるか(=どの程度の知識と経験を持っているか)をほとんど知らない方の言葉です。
このような意見を聞いた時、僕は、「楽しめるぞ!」って思っちゃうのですよ(笑)
こんなとき僕は、楽しむために、(自分の知識や理論を押し付けるのではなく)相手を質問攻めにするのです。
たとえば国債の話を受けて・・・
「ああ、なるほど、国は、国自身の首を絞めるようなことはしないんだね・・・ってことは、史上最も多くの借金をしてしまった日本政府には、僕には見えない秘策があるってわけだね?」
と、ダイレクトにお伺いする場合もあるし、
「ああ、なるほど、確かに紙幣を増刷すれば、それで借金返せるからねぇ・・・ところで、あなたは、あなたが株式を持っている企業が、株式分割した場合、分割後に分割前と同じ株数しか受け取れなくても、満足なんだね・・・だって、紙幣の増刷って、企業の株式分割に似ているけど、増刷後に、あなたの持っている一万円札の数が増えることなんて無いよ。企業の株式分割は、1万円札1 枚が、千円札10枚になると言うことだけどね。」
などと、いじわるすることもあります(笑)
すると・・・
「違うよ、株式分割で、たとえば1:10分割の場合、分割される前に比べて10倍の株数をもらえなければ、イヤだよ。紙幣の増刷を企業に例えれば、分割じゃなくて、増資かな?」
という、これまた「いじめがい」のある反論を頂くので、楽しくてたまりません。
僕は・・・
「なるほど、紙幣の増刷は、企業にたとえれば増資ですか・・・増資の場合、新規に発行した分(株数*株価)のキャッシュが企業に入ってくるわけだけど、国の場合には、何が入ってくるの?」
延々と続く・・・

僕は、「いじわる」なところがあると、正直認めますが、その根底には、「この人に教えてあげよう」という意識が強く働いているのです。
上記のようなことを言う方との議論で、相手を打ち負かしたとしても、なぁ?んにも嬉しくありません。
僕との問答を通じて、何かその方に不足している何かに気がついてもらえるのではないかという淡い期待というわけです。
その引き換えに、僕は楽しみを得ていると言うわけです(いやらしいですね(笑))

「実践・企業価値評価シリーズ」セミナーを通じて、僕が最も勉強したこと、、、それは・・・
「教えるのは、理論や計算方法ではなく、目の前の事象について、自ら『考える習慣』を教える」
ということなのだなぁと思う次第です。
(断っておきますが、セミナー講義中に、いじわるしませんし、理論も計算方法も教えますからね。)

誰か他人の行動について、「自分で自分の首を絞めるはずがない」と、考えるということは、要するに、「自ら考え判断する」ということから逃れ、自分の将来や資産を、他人の判断に依存するという行為に他なりません。
このような方は、「あの会社有名だし、最近面白い商品をたくさん出しているから、買いだ!」などと、投資判断をしてしまうことにも似ています。
「あの会社有名」というのは、「世間の他人がその会社名をよく知っている」というだけであって、その会社が企業価値創造を行っているか否かには、直接関係無いことです。
(というか、有名な企業って、概ね、企業価値創造を効率よく行っていなかったりする現実があります。)
「自分で自分の首を絞めるようなことを、するわけが無い」という、前提を置くのは良いと思いますよ。
詳細に分析したときに出てくるのは、「数字」ですからね。
その数字を見て、改めて、「自分で自分の首を絞めているんだ」と認識できるわけです。
ところが、残念なことに、マクロ経済についても、一つの産業分野に関しても、個別企業についても、その分析手法を持たない人(=持つための勉強をしない人)が、今の日本では、多数派なのです。
そりゃ、外資にいろんなモノを持っていかれちゃっても仕方ないですよね。

「自由と自己責任」と、最近よく言われますが、それは、「最低限度の教育」をした上で、初めて言えることです。
お金に関する何の教育も受けていない日本人が、
いきなり「自由と自己責任です」なんて言われて、
「えっ? じっ、じこせきにん?」なぁ?んて驚いている最中に、
これまたいきなり、
「はい、ここはジャングルですから自己責任でがんばってください。
自由にやっていいのですよ。」と、
放り出されてしまったのでは、たまったものではありません。
気がついたら、すべては、マネーゲームの経験を持つ外国人のものになっちゃいますよ。

ライブドアによるM&Aの、その根底には、これから始まる外資による日本経済征服の「地ならし」を感じざるを得ません。

2005年3月7日 板倉雄一郎 

PS:
「自分で自分の首を絞める」人って、結構多いのですよ(笑)。
自ら勉強し、経験を積み、失敗したらその原因を探る・・・その繰り返しによって、自分価値創造を行うこと以外に、楽しく幸せになる方法なんて無いのです。
知識と経験を持つことによって、初めて自由になれるのです。
お金は、ついでに、くっついてくるものなのです。





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