板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  Keep it simple,stupid  > KISS 第43号「サンデープロジェクト」

KISS 第43号「サンデープロジェクト」

まずは、KISS第36号「夫婦物語」を読んでみてください。
右フレーム「ほぼ毎日エッセイ」を押せば、その下にKISSのバックナンバーリストが表示されます。

話変わります・・・

「ネットとテレビ」は、堀江君が居ても居なくても、こうして融合されているのです。
堀江君の暴走は、その一つの結果として、とっくの昔に始まっていた「ネットとテレビの融合」を加速させる効能がありました。
また、「日本人の経済に対する感心」を高める効能もありました。
そして、「その部分」は、本人の想定内であろうがなかろうが評価します。
しかし、「その部分」だけを取り出して、美化されすぎないように願いたいものです。

僕には、北尾さんが考えそうな「箱と箱」の処理の仕方ではなく、「新しいメディア」の構想が、明確にあります。
ネットとテレビの融合、そして広告の意味・・・すべて明瞭に具体的にあります。
はっきり見えています。
そのうち、「何らかの形」で表現しましょう。
(話を聞くことが出来る「誰か」に、僕の知恵を提供しても良いのですが・・・)

話し変わります・・・というか本題です・・・

今、サンデープロジェクト見ています。
先日、「朝まで生テレビ!」でご一緒させていただいた方が2名。
(田原総一朗氏、永沢徹弁護士)

「ライブドアに借金が無いのなら、問題ない」的な、話をしています。
800億円のMSCBは、当たり前ですが、株式に転換させるわけです。
しつこいようですが、
「有利子負債コスト」 < 「株主資本コスト」
なのです。
よって、借金が、株式に転換されることによって、ライブドアの資本コストは、上昇します。
問題が無いどころか、問題が大きくなるのです。

そこで、企業が価値を創造するためには、
「投下資本利益率」 > 「資本コスト」
のときに、初めて実現できるのです。
(KISSでしつこく書いていることですので、適当に参照してください。
また、KISS第36号「夫婦物語」をご一読いただければ、ライブドアの「投下資本利益率」は、ニッポン放送の買収では、到底上昇しないことがお分かりいただけることでしょう。)
有利子負債コストは、会計上の減益として現れます。
株主資本コストは、時価総額の減少(=株価の下落)として現れます。
企業の儲けとは、会計上の利益だけではなく、株主価値(=時価総額)の変動も含めてモウケなのです。
当たり前のコンコンチキです。

僕は、田原総一朗という人間を尊敬しています。
しかし、「経済オンチ」が、上場企業の「取締役」をしていることに、僕は疑問を感じます。
田原総一朗氏は、堀紘一氏が社長を務める「ドリームインキュベータ」の取締役です。
ドリームインキュベータは、東証マザーズ上場の企業です。

「朝まで生テレビ!」で、お二方に褒めていただき、正直うれしいのですが、それでも僕は、言うべきことを言わざるを得ません。
と言うか、そもそも情報公開が前提の「上場企業」の取締役ですから、「特ダネ」でも何でもありません。

「経済オンチなら、上場企業の取締役を退くか、勉強するか、どちらかにしてください。」

このように書くと、
「取締役にはそれぞれの役目があるから、専門分野を持っていれば良い」
などと、反論を頂きそうですが、僕はそう思いません。

サッカーに例えましょう。
サッカー選手にも、それぞれの専門分野があります。
ゴールキーパー、ミッドフィルダー、フォアードなどなど。
彼らは、彼らの専門職を持っています。
しかし、すべての選手は、
「サッカーとは何か?」
「サッカーのルールとはどのようなものか?」
「サッカーでの勝利とは何か?」
について、理解している必要があるわけです。
当たり前のコンコンチキです。

企業の取締役とは、「株主の代表」なのです。
株主の代表が、「株主資本コスト」について理解していないとすれば、それは「無免許運転」に他なりません。

サッカーでの勝利とは?
「相手のゴールをたくさん奪うことではないのです。」
サッカーでの勝利とは・・・・
「相手に奪われたゴールより多くのゴールを奪うこと」なのです。
よって、
「ゴールを奪われないようにすること」と、
「ゴールを奪うこと」のどちらがより重要なのかといえば、
「ゴールを奪われないようにすること」の方が、遥かに重要なのです。

企業に例えれば、企業の勝利とは、
「資本コスト以上の、投下資本利益率を得ること」なのです。
「資本コスト」は、有利子負債コストだけではないのです。
「株主資本コスト」の方が、遥かに大きいのです。
株主資本コストは、資本主義社会の中で、最も重要で、最も基本的な要素なのです。
資本コストが上昇してしまえば(=ゴールを奪われてばかりいれば)、企業の勝利は、まずありえないのです。

ちなみに、ライブドアの「投下資本利益率(=ゴールを奪う方)」については、しつこいようですが、
KISS第36号「夫婦物語」で書いたとおりです。
堀江君のMSCBによる800億円の調達は、まさに「オウンゴール」です。

2005年4月3日 板倉雄一郎 (Japanese by Nature) 

PS:
田原総一朗氏は、「テレビ番組の盛り上げ方」をよく知っています。
現場に居て、それを感じました。
流石「テレビマン」です。
すごいです。

と書いておいて・・・・
田原総一朗氏は、確かに、
経済オンチであり、
他人の話を聞かない(ように見える)人であり、
(実は、他人の話を、すごくよく聞いている人です。)
司会の割りに、自己主張が多いと思います。
しかし、これまで多くの社会に対する価値提供を行ってきたと思うのです。
様々な異論反論、誹謗中傷、中にはここでは書けない苦悩を経験されてきた方です。
ですから、「不得意分野(=司会ではなく、上場企業の取締役)」を無理してやら無くても良いと思うのです。
誤解を恐れ、書いておきますが・・・
僕は、田原総一朗という人間を尊敬しています。





エッセイカテゴリ

Keep it simple,stupidインデックス