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KISS 第38号「所有と労働」

今日も日本経済新聞を読むのではなく「眺め」ながら、日本について考えさせられました。

資本主義経済の中で、価値を生み出すのは「企業」です。
企業を構成するのは、株主も、従業員も、経営者も含めて「人」なのです。
しかし、企業は、徐々に、外資の所有となり、その一方で、我々の資産は、価値創造など行うはずも無い国債に向かっています。
その先にあるのは、「所有は外資、労働は日本人」ではないでしょうか?

日本経済新聞(3月25日朝刊)

7面中央「個人向け国債 販売最高へ」
1面および11面「西武の不動産『宝の山』」?「ゴールドマン買収提案」

法規制や、企業の元経営陣の能力の問題など、直接的な問題は多々あります。
しかし、最も重要で、最も根底的な問題は、我々日本人の、
「お金の教養」が不足していることであり、
そのまた根底には、「教育」の問題があるのです。

「お金の教養」とは、株式の争奪戦の「技」を覚えることではないのです。
「お金とは何か?」
「お金はどのように流れているのか?」
という本質を捉えることなのです。

πを、3.14とするか、3とするか・・・そんな馬鹿馬鹿しい議論をしている間に、日本企業や、日本の土地が、外資に渡ってゆく「地ならし」が、進んでしまったのです。

「自分ひとりが動いたところで、何かが変わるわけではない」という考えは、この国を破壊します。
一人が動かないで、どうして全体が動くでしょうか?

以下、是非もう一度読んでみてください。
時間が無かったら、この週末に、読んでみてください。是非。

KISS第31号「お金とは・・・One for All , All for One」
KISS第27号「企業は誰のもの?」
KISS第19号「パートナーシップ」
KISS第25号「日本企業の価値」
KISS第33号「お金の仕組みを教える理由」

以下、KISS第29号の要点部分の再掲載です・・・

最近、「?のようになるようでは、日本は外資に見捨てられる」
といった意見を聞く機会が多いですよね。
たとえば、
「ニッポン放送による、フジテレビを割当先にした新株予約権の発行」に関する議論、
または、「商法など資本市場に影響のある法整備」に関する議論などで、
上記のような意見が出てきます。
もちろん、「外資に見捨てられるのは困る」というのは、僕も同感です。
同感ですが、では、
「なぜ、そんなに外資を頼りにしなければならないのか?」
この議論は、ほとんどされていないですよね。
「経済は、グローバルだから」というのは間違っていませんが、本質的な答えではありません。
国民の(見かけ上の)貯蓄は、1400兆円!もあることになっています(笑)
もし、これが本当なら、上場企業が、その理論企業価値より安く放置されている状態であるうちに、まずは国内の資金を投資に向けさせるべきですよね。
国民が企業に投資し、国民がその企業の商品を買い、企業は海外にもその商品を売る・・・
すると、国民皆が豊かになるはずです。
ところが、国民の貯蓄は、銀行などによって間接的に企業に提供されています。(間接金融)
ですが、銀行さんは、最もお金や経営についてわかっていない方々ですから、効率よく資金が企業に提供されているわけではありません。
銀行は、この国で、最も低い資本コスト(=銀行預金金利)の資金(=預金)を調達できるにも関わらず、儲かっていないどころか、融資先の評価と、その経営(=銀行からの出向や天下り経営者)の失敗で、大きな損失を出しているというわけです。
彼ら銀行に、日本企業への資金供給を任せておくわけには行かないわけです。
言うまでもありませんよね。
ということで、貯蓄から投資へ、その資金を移転させることが必要になるわけです。
(つまり、間接金融から、直接金融への転換が必要。)
が!
「投資は怖い」とだけ教わってきた国民は、なかなか貯蓄を投資に回すことが出来ません。
経済に関する教養が低いからです。
「お金は、それが増える場所に置いておかなければ、
絶対額が減少しなくても、価値は減少してしまう。」ということや、
「紙幣の価値は、それと何かを交換(=買う)出来るという価値であって、
紙幣それ自体に価値があるわけではない。」ということを、理解できていないのです。
だから、タンス預金とかするのです(笑)
タンス預金や銀行預金しているのでは、どんどん価値が減少するだけなのです。
(デフレーションの場合は、ちと話しが違いますけどね。)
経済に関する教養を向上させれば、自然と貯蓄は投資に振り向けられるはずです。
国民の貯蓄が、企業への投資に回れば、少なくとも今ほどの「外資頼み」から開放されることでしょう。
しかし!
我々の1400兆円あるといわれている貯蓄は、「本当に、そこにあるのか!?」
無いです。
価値創造など行うはずも無い、
「だれもコンサートなどやらない音楽ホール」や、
「役立たずの役人の給与や住宅」や、
(「役立たずの役人」って、フレーズは、面白いですよね(笑))
「日に数台しか車の通らない場所に作られた立派な道路や橋」や、
・・・きりが無いからこの辺で止めます・・・
などに、使われてしまって、ほとんど無くなってしまっているのです。
なのに、しっかり我々の貯蓄は、「数字」として存在しています。
この「お金のねじれと流れ」は、金融機関が国債を買うという行為によって、預金者には見えなくなっているだけなのです。
我々の預金は、実のところ、いつでも現金として引き出せるわけでも、
価値創造に投資されているわけでもないのです。
(家を買うとか、車を買うとか、生活費にするとか、その程度は現金として出てきますよ。)
公的資金の無駄使いを、一つ一つ突いたところで、本質的な解決にはなりません。
国民貯蓄が、経済価値創造を行う企業への投資に回っていれば、そもそも政治家や官僚に無駄遣いされずに済んだのです。
銀行預金やタンス預金に資金を置いているのも国民。
馬鹿な政治家を選んでいるのも国民。
国民のフィナンシャルリテラシーの低さが、あらゆることの原因です。
勤勉な国民が働くことによって生まれた経済価値は、その多くを外国に持っていかれるのです。
なぜなら、既に上場企業の株主の多くは、外国人だからです。
「働くのは国民、しかしその利益は外国人」なのです。
「お金の話をするのは、いやらしい」などと、一体誰が言い始めたのでしょうか?
そいつが、この国を駄目にしたのです。
お金に関わらない人など、居るはずないのです。
経済は、世の中の根底的な仕組みであって、我々の生きている環境そのものなのです。
我々は、「資本主義社会」に住んでいるのです。
小泉首相の、ホリエモン騒動に対するコメント・・・
「頭のいい人たちがやっていることで、僕には良くわからない」を聞いて、
どう思いますか?
経済や経営、そして株式投資を、「頭のいい人たちの世界」にしてしまったのは、一体誰なのでしょうか?

2005年3月25日 板倉雄一郎(Japanese by nature)

PS:
それにしても、テレビのコメンテーターって、やっぱりアホですね。
結局、政治も、メディアも、国民を超えられないのですね。
昨日の北尾さんのコメントで最も重要な内容は、
「良くもまぁ、やったことも無い人が・・・・」と
コメンテーターを批判していたことです。
「童貞君のアダルトビデオ評価」ですからね。





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