板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第102号「年金の損得」

そろそろ夏休み、終わりです。
アホな小学生のように「夏休み」を連発している僕ですが、よくよく予定を振り返ってみたら、全然夏休みじゃないんですよ(笑)。
先週は雑誌「SPA!」のちょとした取材を受けましたし、今週は月曜日から顧問先ベンチャー企業の定期ミーティング、それに「企業価値評価シリーズ」の東京第一グループ第一回目の開催、そしてWBSのインタビュー収録(26日木曜日放映予定・・・ただ僕の部分はおそらく30秒ぐらいと思います)のためにTV東京といった具合です。
あっと、それと「おりおば」の執筆ですね。50項目ぐらいで出版しようと目論んでおりますが、気の効いた「おりこうさん と おばかさん」のフレーズがなかなか浮かばなくて困っています。。。

ところで、「企業価値評価シリーズ」ですが、全6回を受講して完全に理解するには、受講者側にも(僕の側にも)相当な根性(?)と費用がかかるわけですが、このシリーズの第一回目(SMU64号のような内容)だけでも、お金に関する知識や理論が相当理解できるわけです。
なので、この部分だけを取り出した「お金の価値」という講演メニューは結構マーケットがあると思いますので、今後は当事務所主催でやらせていただこうかと思った次第です。
また、以上のDCF基本解説とエクセルシートの作成となる「お金の価値」とは別に、企業の各種オペレーション(配当、自社株買い、株式分割、子会社上場、シェア争い、などなど)による企業価値の相対的変動を解説した「個人投資家のための企業価値評価入門」なるものも、あわせて開催しようかと思っています。
企画が出来上がりましたら、このWEBにて告知いたしますので、是非ご参加ください。
「絶対にためになります!」

それでは、内容を引きずって「年金の損得」についてです。

このところメディアでは、年金の損得に関して様々な議論がされています。
FP(フィナンシャルプランナー)と呼ばれる(僕にはそのエタイがさっぱりわかりません)人がテレビに出演して、わかりやすそうで全然わからない「支払いと受け取りのグラフ」なるものを持ち出しながら説明していたり、また一方では、各政党の政治家が、これまたお金の理屈など全然理解していない司会者(以前、このWEBには実名で書きました(笑))に促されながら、テキトー(僕の文章では、「適当」は妥当とか適切の意味ですが、「テキトー」はイイカゲンという意味です。「良い加減」という意味ではありません)な理屈をこねているわけです。

先に僕の結論を書いてしまいますが、「年金の損得を論じること自体が不毛」ということです。
そもそも、年金に関する「過去の支払い額」と「将来の支払い額」、そして「将来の受け取り額」を、期間を無視してベタで足したり引いたりしり、運用者側が提供している予定利率で割り引いたところで、ある特定の個人にとっては意味がありません。
つまり、将来受け取る予定の金額は、現在価値に割り引いてみなければ本当の価値はわかりませんし、同様に過去に支払った分は、現在価値に割り増して見積もらなければなりません。

資産運用利回り実績の高い人にとっては、(その資金の機会損失を考えれば)過去の支払い(投資)に対する割増率は相当に高くなりますから、過去の支払い分の現在価値は相当に大きくなり、将来の受け取り分の現在価値は相当に小さいわけです。
実際には、個人の資産運用実績や期待収益率より、年金という「金融商品」の予定利回りで割り引くのが適当かと思いますが、年金は強制加入であって、投資者のオプションがないわけですから、投資者の資産運用実績や期待収益率で割り引くのが当然とも思います・・・この辺は話しが長くなるので、割愛します)

ではなぜそんなモノ(金融商品というべきか、制度というべきか悩むので「モノ」にしました)のがあるのかといえば、それはすなわち「名前を変えた税金」に過ぎないからです。
つまり、消費税やその他の「税」と名前が付くものを新しく設定したり、増額したりするのは、政治家の国会運営上とても大変ですよね。だけど、「老後のための保険です」とすれば、通りやすいわけです。
たとえば消費税をアップすると言い出せば、国家財政と経済理論を知らないアホな有権者に支えられたアホな党が猛烈に反対するわけです。結果、消費税など増税ができなくなり、プライマリーバランスは崩れ、そして国債の増発となります。
お分かりかと思いますが、税も国債も、どちらも国民負担であって、片方を抑制すれば、必然的にもう片方が増えるだけの話しです。よって、長期においてはどちらも同じです。
この国家財政の一部として、つまり広義での税金として「年金」という別会計を設けたに過ぎないわけです。と僕は理解しています。
(そもそも、増税か減税かなどという議論も、本質的には不毛であって、議論すべきはその使い道ですね。当たり前ですが)
ですから、こういうことです・・・・「そもそも、年金の損得を考えることの方がへんてこりん。」

僕は、年金保険料は20歳から納めています。97年の会社倒産までは、自身の運営する会社がありましたから、国民年金も厚生年金(一時期、年金は馬鹿馬鹿しいと厚生年金を支払って居なかった時期もあります)も納めていましたし。98年以降は(幸い)国民年金(基礎年金、毎月13300円)だけを収めています。
損得に関する疑問も持ちませんし、ホイホイ『納税』しています。
(予断ですが、自己破産しても、所得税や住民税など税金の支払いは免除されません・・・倒産後、支払えなかった期間分(住民税と合わせて数百万円)をせっせと払いましたよ)

年金の損得のような不毛な議論は無視して、個人でその損失を超えるぐらいの運用を実現できる知識を持った者の勝利ですよね。

2004年8月25日 板倉雄一郎




 


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