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SMU 第151号「訴訟準備組織」

SMU第149号で、IBMパソコン事業売却に伴うThinkPadのメンテナンスについて、ちょこっとだけ僕の不安(?)について書いたところ、同日、IBMパソコン事業に携わる読者の方から、早速「ご心配ありませんよ」メールが届きました。
すばらしい!
プライベート(つまり、業務上規定されていない行為)で、このように自社の商品に対する意識をもっていらっしゃる社員がいる企業・・・いいですよね。ユーザとして安心できます。
ハイテク関連のM&Aは、その予定されているシナジーが効果を出したためしが無いとは、何度も書いていることですが、その理由の一つに、「ハイテクが故に、人材が命?企業を買収できても、人材を確保できるとは限らない」ということがあります。
この点、レノボがもっとも神経を使わなければならないポイントですね。

さて、本日の日本経済新聞一面に「西武株売買契約白紙に」という記事があります。
記事の中でも、ちょっとだけ触れていますが、これでコクドから直接株式譲渡を受けたおよそ70社の「企業」については、譲渡後の株価下落による損失を「無かったこと」にすることができますが、同時期に西武に投資した「個人投資家」の損害は一体どうなるのでしょうか?
ほとんど、泣き寝入りです。
事実、数百万円程度の投資でこうむった数十万円?数百万円の損失について、弁護士を雇い、時間をかけ、訴訟をする人など、ほとんど居ません。
なので、「個人投資家のための訴訟準備組織」なるものがあればよいのに・・・と思うのです。
たとえば、投資金額のある一定比率であるとかを会費として支払い、西武鉄道のように「投資先企業側の明らかな違法行為」が発生した場合、この積み立て金を利用し、株主代表訴訟を集団で起こせる仕組みです。
もちろん会員は、自分の損失を証明する書類(最近では電子交付)と共に、損害額を、その組織に届け出るだけでOK。(もちろん損失が帰ってくるかどうかは、訴訟の行方次第ということになりますが。)

「そんなのめんどくさいから投資信託に投資すればいいじゃないか」という意見もありそうですが、その投資信託であっても、それに投資する個人投資家に対して、「常に正しい情報を提供できる」という保証は無いわけです。

「そんなのお金戻ってくることなんて、ほとんど無いよ」という意見もありそうですが、失ってしまった金そのものを取り戻せるかどうか以前に、その組織があることによるコーポレートガバナンス自体に価値があるわけです。
企業が個人投資家を反故にできない圧力というわけで、結果、個人投資家の益につながるはずです。

政府にしても、変動利付き国債や、物価連動国債などによって、個人から金をかき集めようとしているわけですし、株式市場については、その40%ほどのシェアを個人投資家が占めているわけですから、これを「短期の博打」から、「投資」に切り替えさせるためにも、個人投資家が、
「いざというときには、騒ぎますよ!」
という姿勢を示せるシステムが必要だというわけです。

(予断ですが、変動利付国債などの発売で、「こりゃ、いい債券が出たものだ」と、思うのですかねぇ・・・僕の場合は、「国ともあろうものが、ここまでしないと借金が出来ない状況」と思うのですけどねぇ。しつこいようですが、インフレが加速した場合の金利上昇=国債費の増加分は、結局、国民負担ですからね。それでも国債は安全と宣伝して借金したいなら、政府の責任者がその個人保証をしてくださいよ。あれっ、そしたら誰も与党にならないですけどね(笑))

以上のシステムが無いと、個人はいつまで経っても「個人博打家」から抜け出せない(まあ証券会社にとっては、その方が手数料稼げてよいのでしょうけれど)ですし、コーポレートガバナンスなんて絵に描いた餅に過ぎません。
三菱自動車で、西武鉄道で、プライムシステムで、(これ以上は、キリが無いので止めますが)、損をした人、そう思いませんか?

以上のシステム(株主代表訴訟準備組織)って、あるのですか?
僕が知らないだけなのですかねぇ?
ええと、「総会屋」とは、全然違いますからね。
板倉雄一郎事務所は、個人投資家の味方です!

2004年12月15日 板倉雄一郎





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