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SMU 第61号「日本の生きる道」

ご存知の方も多いとは思うが、「シャープ」と「イオン」は仲が悪い。液晶の特許をめぐるシャープと台湾の液晶メーカー東元との紛争に「結果として」イオングループが巻き込まれたというわけだ。

最初に僕の結論を書いておくと、イオンってえげつない会社だ。(別に民主党岡田党首が嫌いなわけではない)

富士通が韓国サムスン電子とプラズマディスプレーに関する知的所有権を訴え、その後に和解した先週の事件とシャープが今回取った処置は、ほぼ同じ理由から発生しているにもかかわらず、シャープの方は、イオンと仲が悪くなってしまった。

イオンの主張には「シャープの自分勝手」が書いてあるわけだが、僕には、自分勝手は明らかにイオンの方だと思う。なぜならしつこいようだが「結果的に」イオンに不利な原因をシャープが作った(いや根本的にはイオンの経営者が作った)ダケだからだ。もしこの事件でイオンの株価が大幅に下落するようなことになれば、イオンの株主によるイオンに対する株主代表訴訟にもなりかねない。

そうなればイオンの経営陣は、株主に対して責任を取らなければならない。(僕は幸い一株も持っていない)

なぜそんな大変なことになる可能性があるかといえば、仮に特許紛争になり、結果がシャープの勝ちとなれば、直接の損害がイオンに及ぶからである。ご存知の方は少ないと思うが、特許の権利というのは非常に強力なもので、その知的所有権侵害の経済的対価を一次利用だけでなく、二次利用にも三次利用にも請求できるからである。

(たとえば、トラックがある特許を侵害してて、それが裁判によって明らかになった場合、トラックを製造したり販売したりした企業はもちろん、そのトラックで運送業を営んでいる企業にまで特許権侵害に対する経済的対価の請求ができる。)

シャープは何もイオンを攻撃したいわけではない(と、僕が得られる情報の限りにおいて思う)シャープとしては、富士通同様「自社の財産を守ることを直接の目的としながら、結果として日本の価値創造の根源的な技術と知的所有権の保護につながる行為」にでたわけであって、非常に価値ある行為だといわざるを得ない。

日本には資源もなければ、食料自給率も米、仏、独のように高く無い。どういうわけか(政治家が馬鹿だからなのだが)技術以外の国力などもっていない国なのだ。だから技術、知的所有権を主張することは、すなわち日本国の繁栄のための必須事項なのである。以上のような観点から、イオンこそ、自分勝手であるといわざるを得ないというわけだ。

もし、技術や知的所有権が簡単に侵害され、それに対する経済的対価がないとなれば、少なくとも現在より技術開発にいそしむ人間の数は減ってしまう。そうなればこの国の生きていく道は無い。

僕は、特別右よりなわけではない。しかしよく考えてほしい・・・イオンは主に「内需」に売り上げを依存している企業だ。シャープのような企業が海外から金を持ってこなければ、日本の知的所有権が経済価値を持たなければ、我々はジャスコに行って食料品を買う金を持つことができないのだよ。

特許というのは確かに、その訴訟の結果によって始めてそのものの効力や経済的価値が決まる。しかしこの際、(シャープが特許侵害に当たらないのを承知で今回の処置をしたのでなければ)結果はどうでもいい。

僕は、近くのマックスバリューで食材を買うのを止める。(ものすごぉ~く安かったら行くけど)

2004年6月10日 板倉雄一郎
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