板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

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SMU 第124号「自分なりの判断基準

今年の秋は、なんだかすっきりしませんねぇ。
それどこか、台風による被害が平成に入って最悪だということです。
こんな状況が数年続くようなら、経済にも大きな影響がありますね。
経済活動も、環境の一部ですし、環境が変化すれば遅かれ早かれ経済に影響があるわけです。
まあ、当たり前ですが。

話し変わります。
このところ、ニュース番組やエンタメ番組からの出演依頼が多いです。
お分かりのとおり、球団買収に関する、いわゆるIT企業の話題によって、メディア・コンテンツ制作者が、「いやいや、そんなうまく行くことばかりじゃないだろう・・・失敗の話しでもそろそろ取り上げようぜ」ということになって、自然と僕(の過去)に、その矛先が向くというわけでしょう。
でもなんだか、気が乗らない・・・なので、紙メディア以外はすべてお断りしているというわけです。
どうも、あの限られた時間の中で、かつ専門知識の無い一般の人たちに向けて、何かを伝えるのは、非常に難しく、多くの場合、誤解の誤解に終わることが多いわけです。ですからお断りします。
要するに、僕は話が下手(?)ということなのでしょう。
1時間~2時間にわたる講演やセミナーの場合には、自然と話を組み立て、そして話し、聴衆の様子を観察し、さらに話を再構築するという、つまり聞き手の様子を伺いながら話を展開するのは、得意なんですよ。ですが、相手が見えないところでの話というのはどうも苦手です。
さらに、ビデオ録画~編集による取材というのは、極端な場合、編集者の意思によって如何様にでも内容をいじることができますからね・・・僕は嫌いです。

世の中、話題によって様々なことに変化が起きます。
しかし、それが中続きしたためしは、ほとんどありませんよね。
「話題に乗る」ということは、すなわち、誰か他人の価値判断に自分の判断を委ねるということに他ならないわけです。それで何か益を得られるならいいですよ。でも、損失になってしまったら、最悪ですね。
だから、僕は自分が積み上げた経験、知識、情報による自分の判断を常にしていきたいと思うわけです。その上での失敗なら、何か身に付くでしょ。

ところで、本題「自分なりの投資基準」です。

投資活動をしていると、様々な情報が寄せられます。
「XXXX(数字四桁)、あげるらしいよ。100万円超えぐらいまで。」
「XXXXは、来月1日に1:11のスプリット発表するらしいぜ」
「AAAA(アルファベット4文字)は、今期の上方修正確実だよ」
とまぁ、こんな感じです。
以上のXXXXやAAAAが、以前から自分が目をつけていた企業であれば、その話し(の真偽はともかく)に乗ることはあります。もちろんインサイダー取引に該当するような「発表前の確実な情報」というわけではありません。
しかしほとんどの場合、僕は以上のような情報を無視します。
だってババを引くのはいやですからね。

自分なりの投資基準が無い人というのは、かわいそうです。いや自業自得です。
自分なりの投資基準を持っていない人は、常に以上のような情報に翻弄されるわけです。
そして、株価が上昇して益が出ても、「いま売るべきかなぁ?いやもうちょっとまとう」などと不安にさいなまれるばかりで、その逆に株価が大幅に下落した場合でも、「やっばぁ?、損切りしようかなぁ、いやもう遅いな、しばらく待ってれば戻るだろう・・・いや、もう下がりっぱなしカも知れない・・・どうしよう・・・」と、常にはらはらドキドキですからね。
はらはらドキドキが好き! というなら勝手にすればいいですが、少なくとも僕は大切な資産の増やすことが目的ですから、そんなのいやです。
自分なりの投資基準を持っていれば、つまり支払う金額以上の価値を手に入れる方法を知っていれば、投資後、短期的に株価が大幅に下落しようが、また逆に短期的に異常に上昇しようが、ほとんどどうでもいいことです。
市場は常にヒステリックに動きます。この動きについて、それを利用して短期で儲けると考える人も居るでしょうし、ヒステリックに下げたときを投資機会と考える人も居るでしょう。いずれの考え方も否定できませんが、最悪なのは、短期で仕込値と現在地の乖離に右往左往することです。ヒステリックな市場心理によって形成された株価が、自分の所有する株式の値段を決定するという考え方が、どこかおかしいわけですね。だって、ヒステリックな株価なのですから。それに引きづられて、自分自身がヒステリックになってしまうようでは、損するばかりです。
市場に向かうときに限らず、車や家を買う場合も、お食事会でお目当ての異性と仲良くなる場合も、その成功のためには、常に「冷静さ」が求められます。
「冷静さ」を維持するために最も重要なのは、自分なりの判断基準を持つということになります。それ以外の方法で、冷静さを維持することは、ほとんど不可能でしょう。

2004年10月22日 板倉雄一郎





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