2004年4月6日付けの日本経済新聞一面にこんな記事が載っている。
「三井住友銀行・創業期向け融資拡大・云々かんぬん」
要するに、優良な貸出先が徐々に開拓されつくし、多少リスクの伴う企業にもその分金利を高く して貸し付けようという銀行の常套手段を続けてきた結果、そろそろもっと多くのリスクを取ら なければ貸出先を発掘できない状況になり、「再び」ベンチャーへその矛先が向けられたというわけだ。
僕の著書である『社長失格』の読者であれば気がつくかもしれないが、この現象はおよそ10年前に僕が見た世界と おんなじだ。
JASDAQ上場銘柄の株価は、少なくともIT関連については「高騰」し、軒並みPER100 倍のIT企業もあれば、伝統的で安定的な古臭いビジネスの企業の時価総額をはるかに超えるIT企業の時価総額も受け入れられ、なお株価は上昇基調にある。
具体的なことをクドクド書くつもりは無いが、要するに「歴史は繰り返す」であろうと僕は 思うのだ。
確かに当時よりITの環境は社会に根付いている、しかしそれだけでは現在の高騰は説明できない水準になってきている。
とまれ、僕が再三訴えてきた「リスクに見合った資金の性格」という側面からは、ハイリスク・ハイリターンのベンチャーには、間違いなく融資による資金調達は向かないのだ。
10年前、僕の会社に積極的に融資を迫った銀行は、住友銀行とさくら銀行だった。
当時を知るプレーヤーが土俵にいないことが最も重大な問題なのだ。
これ以上は、何も言う必要も無いのだろうけど。
2004年4月6日 板倉雄一郎