板倉雄一郎事務所 Yuichiro ITAKURA OFFICE

企業価値評価・経済・金融の仕組み・株式投資を分かりやすく解説。理解を促進するためのDVDや書籍も取り扱う板倉雄一郎事務所Webサイト

feed  RSS   feed  Atom
ホーム >  エッセイ >  スタートミーアップ  > SMU 第165号「デイトレードとバリュエーション」

SMU 第165号「デイトレードとバリュエーション」

「企業価値評価(Valuation=バリュエーション)なんてまじめに取り組むより、需給(チャート、株式分割や賃借倍率など)を頼りにデイトレードしたほうが、遥かに儲かるよ。」
こういう考えの方、結構居るんじゃないかと思います。
中には、「ヤフー掲示板が便りです!」なんて人も居ますよね。
間違っているとも、正しいとも、どちらともいえないわけです。
なぜなら、「需給による株価形成」とは、売り手と買い手が同じ株価で出会うということですから、それ自体「モノの値段」の一つの重要な事実です。
で、デイトレードで儲けようという方にとっては、「株価形成の成否だの、バリュエーションだのは、どうでもよくて、儲かればいいのよ」ということになろうかと思います。
正直なところ、僕も、もし「確実に儲かる」のなら、バリュエーションなんてどうでもいいわけです。
しかし、残念なことに、確実に儲かるなんて事は、仮にインサイダー情報を持っていたとしても、100%儲かるとはならないわけです。当たり前のコンコンチキですよね。

では、バリュエーションは、デイトレには、全く無関係なものなのでしょうか?
僕は、そうは思わないのです。
なぜなら、バリュエーションを実施すると、たとえばある企業の現実的な「株価の範囲」を把握することが出来ます。(もちろん、バリュエーションを詳細に行えば、当該企業の業績やオペレーションが、どのように企業価値に影響するかまでよく理解できるようになりますが、ここでは割愛します)
たとえば、ベストシナリオでは一株1200円、ダメダメシナリオでは一株700円だとか。
で、現在1300円の株価がついていたとします。
需給バランスを見るための一つの重要な指標として「賃借倍率」なるものがあります。
これが1倍を下回っている場合、バリュエーション上の株価より100円上回っていても、株価が一時的にそれ以上高騰することはよくあります。(空売り部隊の反対売買ですね。時には仕手筋の「踏み上げ」作戦にも使われますよね)
よって、この場合、デイトレ組みは、賃借倍率を頼りに、とりあえず買いを入れるわけです。
この時、もしバリュエーションを行っていれば、その時点の株価が「やばい株価」であることを、承知の上での売買が可能になり、予想をはずして株価が下回れば、デイトレ組みの損切り度合いを小さく(=たとえば、普段はマイナス3%で切るところを、マイナス1%で切るとか)準備することが出来るわけです。よって、デイトレの場合でも、損失を小さく抑えることが理論的には可能になります。
また、逆に、600円の株価(ダメダメシナリオよりさらに株価が低い場合)がついているときに買いを入れた場合、普段はマイナス5%で損切りするところを、10%下回って540円になってしまっても、損切りせずに我慢することも出来るわけですね。場合によっては「ナンピン」する決断も出来るというわけです。もちろん、株価が戻るまでには、デイトレードの時間枠では足りない場合も多々ありますが。

無理にデイトレとバリュエーションを結びつける必要はありませんが、今の株価は「危ない圏内」なのか、「大丈夫圏内」なのか、それを知った上でのデイトレのほうが、少なくとも損失を小さくは出来ますよね。
ただし、バリュエーション上のベストシナリオを通り越して株価が急騰しているときには、「危ない領域」に入っていることを「認識できてしまう」ので、早めに利益確定をしてしまう傾向もあります。
が、儲け損ねないようにすることより、損をしないことを積み上げる方が、基本的には利益を出せますからね。
ということで、バリュエーションは、デイトレにおいても、充分効能があるというわけです。

それにしても、SMU第78号で書いた「未来の証券取引」まではやらなくても、せめて株価の脇に、リアルタイムに更新される時価総額、および実質有利子負債総額ぐらい出して頂戴よ。
時価総額については、掛け算するだけですから、ヒジョーに簡単なんですけどね。
算数苦手な僕は、いちいち「ヤフーファイナンス」を見に行くわけです。トホホ。
う〜ん、やっぱ誰かに開発頼んで自分で作っちゃおうかなぁ。
株価から、リアルタイム時価総額。
B/Sから、実質有利子負債総額。
(少なくとも過去の)フリーキャッシュフロー推移。
それに自分で適当に推計した成長率の入力。
すると以上から、逆算される期待収益率(逆算したWACCと、さらに逆算した株主機会費用・・・この際CAPMなんてどうでもよいわけです、時価からの逆算でOK)が簡易にわかるわけです。
あくまで「簡易」ということを前提にすれば、出来ないことではないからね。
(セミナー卒業生の皆さんは、何を書いているか、よーくわかるでしょ?)

板倉雄一郎 2005年1月14日(分)





エッセイカテゴリ

スタートミーアップインデックス