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SMU 第164号「発明の対価における議論の不毛」

本日分のエッセイは、既に書いてアップしましたが追加です。

表題の件、書くと思ったでしょ。(青色発光ダイオード特許に関すること)

でも、何書くべきか、ちょっと迷っていたのですよ。

で、いろいろ思うところがあるのですが、例によって「ケチ」をつけようと思います。「ケチ」の対象は、いつものように日本経済新聞記事についてです。

2005年(平成17年)1月12日付けの日経朝刊三面に、この件に関する「識者?」のコメントがあります。この中で、「キャノンの知的財産戦略を担当した丸島儀一」さんという方のア○なコメントが載っていますのでご紹介と「ケチ」です。

記事によると「6億円の発明報酬は世界最高額だろう。(中略)国際競争力が23位といわれる日本が発明報酬で世界一というのは何かおかしいのではないか。(後略)」

あのですねぇ、、、アナタの考え方の方が、「何かおかしい」です。

この人、「日本のGDPが、世界第二位なのに、なんで僕は貧乏なのだろう?」とか、「世の中に女の子がたくさんいるのに、何で僕には彼女がいないのだろう?」とか、要するに、論理的な関係が全く無い話を300万人が読むメディアで言っているようなものですね。

まぁ、「キャノンに雇われている」という意味での「ポジション・トーク」なのでしょうけれど、いけませんよね、こういうの。

でも、最後はしっかり「企業は(中略)想像性豊かな発明者を処遇する制度を自ら確立すべき。」と、表現を丸めている点、まっ一応立派です。(笑)

僕個人としては、「個人の価値」がそれほど評価されない風土は嫌いですから、6億円+機会費用については、納得できませんが、これが日亜の株主だったりすれば、全く逆だったりするわけで、人は常にポジションによって、インセンティブによって、考え方そのものが変化するわけですね。

人間とは、恐ろしいと思うと同時に、頼もしいですよね。だって、その柔軟性が、その人を救っているわけですからね。

日亜の株主でもなければ、発明者でもない僕の本音としては、まあ勝手にしてくださいというわけです。なぜなら、事例として、今回のような事実があろうが無かろうが、自分が発明したモノが排他的で、特殊なもので、且つ経済価値のあるものであれば、自分で特許申請しますし、その特許を自分が納得する対価で売ろうとすればよいわけですし、それで買ってくれる人が居なければ自分で事業やればいいわけですからね。

但し、特許は特許であって、発明なわけですから、過去の事実や常識的な値段など、関係ないですよ。

そんな基準があるならば、そもそも発明じゃないですよね。日経に限らず、このニュースの議論は、そもそも本質的に意味無いです。

だって、「ザ・フライ」にあるような「物体転送装置」を発明したら、6億円どころの騒ぎじゃないでしょ。

発明とは、そういうものです。

2005年1月12日(分の追加) 板倉雄一郎





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